「知の編集術」(松岡正剛著)

「編集」という単語に惹かれて読みました。

自分はnoteで読書感想文を書きがちなのですが、ほぼ書き殴り、手直しをせず、叩きつけるように投稿しています。

こんな調子で書いていては、上手く文章をまとめたり面白い視点や読む価値のある情報を載せたりすることが上達しないんじゃないかと思ってました。

「編集」という概念が自分の執筆過程にあれば、自分の生み出したアイデアの要点をつまんで面白くなる場所に適切に配置し、もっともっと読み応えのある作文を書くことができるのでは、とブックオフで考えた末にこの本を購入しました。

この本は「編集工学」という情報を面白く加工するメソッドの紹介本のようなものでした。

文章に限らず、色んなもの(人とかモノとか音とか)を情報として捉えて、それらをまとめたり、連想して別の情報と関連付けたりすることを「編集」と呼んでいました。

例えば、ドロドロの人間ドラマの相関図を作成することも、見せる映像の順番を入れ替えることも、分かりやすいニュースにまとめることも編集なんだそうです。情報を意図をもって並べることが編集なんでしょうか。昼ドラやワイドショーはたくさん「編集」してるんでしょうねぇ。

こういう意外と言葉にしてない情報の操作や整理術を磨いていくのが編集力を高めることなんだそうな。多分。

この本は個人的には難解でした。

先ほど例に挙げた通り、「何でもかんでも編集じゃよ」と書いてあるんです。概念が大きすぎて逆に、「あぁ、編集ってこんな感じなんだな」と納得することができませんでした。

情報を列挙したり、図解したり、例示したりといった手法の数々を体系化させたいらしく、六十四編集技法なるものが紹介されてました。プロレス技か何かか?(編集技法その二十一:比喩)

本を開けると要領を得ない説明文と怒涛のワードが眼前に漂い、本を閉じるとそれらが霧となって消え去る感覚を味わいました。飛び出す絵本か?(編集技法その二十一:比喩)

ともあれ、「人間のやることなすことを編集ベースで解釈して名前つけまくってみる」という試みは自分には新鮮に感じられて、そこは面白かったです。

身の回りの出来事をリストアップして、そこから生まれるストーリー性やアレンジなどを想像すると編集力が高まるらしいです。リストアップもストーリー仕立てもアレンジも全部編集だもんね!

しかし、この本を読めば編集力が身につくとか、斬新な発想がぽんぽん湧いてくるとか、ハウツーを軸とした恩恵は得られませんでした。ラクしたかったな~。

やっぱりアイデアは頭を捻らなきゃ出ないってことなのでしょう。アイデアは知識より経験で出せ、という「この世あるある」を再認識する形になりました。

編集工学もそういった人向けの本になってくるかと思います。「アイデア絞り出しまくって、ちょっと行き詰まったな~」という人なら、この本中の大量の編集工学用語や主張のひとつひとつに「あぁ、アレのことね」と経験から合点がいって編集工学の用語がスルスルと身につくことでしょう。

そういう人は別に読まなくていいんじゃないでしょうか。(編集技法その三十七:不調)

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