「思考の整理術 問題解決のための忘却メゾット」(前野隆司著)

この前に「思考中毒になる!」(斉藤孝著)という本を読んだのでついでにこっちも読みました。買った本をあらためて振り返ると、自分は思考というワードに囚われすぎている節があります。

この本の著者は慶応の先生でシステムに詳しいそうです。

漠然としてますが、どうやらこの漠然としたものを追いかけてるみたいです。今はもっぱら幸福について考えてるらしいです。

朝日新聞出版だそうです。

この本は知識や情報を頭に叩き込むタイプの記憶力をとってもディスり、これからは問題発見・解決力や大局観を養うべき時代だ、という主張一本で頑張って書かれた本です。

著作のタイトルについても、この著者はむにゃむにゃと言い訳をしており、「誤解されなければいいなあ」なんてナメたことを本の前の方で書いてましたが、内容を読むと結構誤解を恐れずに色んなことを言ってました。

知識や情報といった類の記憶を「意味記憶」、自転車の乗り方や野球のバッティング技術といった類の記憶を「非宣言的記憶」というらしく、「意味記憶」は忘れてしまうそうですが、「非宣言的記憶」は身体能力の低下以外では年をとっても忘れにくいそうです。

そして、「非宣言的記憶をたくさん記憶することで、潜在意識下の脳の働きで大局観や創造性が得られる」という主張をしてました。

少しお年寄りに媚を売っているのかなぁと思いました。

「忘れることを恐れる必要はない」とか「年を取り様々な非宣言的記憶を記憶したため必要でない記憶が忘れられただけだ」とか「年を取ってから備わる大局観が重要だ」とか、もし年寄りの自分が聞いたら嬉しいだろうな、と思いました。

「記憶力至上主義は西洋的で、古き良き東洋が気づいていた大局的に考える力が注目される時代が来てる」とか、

自分が年寄りでも引く主張でした。愛想よく聞こえのいい言葉を並べてきた人が、いきなり地面に這ってこちらの靴を舐めてきたような、緩急をつけたヨイショに心臓が止まるかと思いました。さすがに媚びすぎたと思ったのか、または媚びはもう十分だと判断したのかこの主張は一瞬だけ登場し、そのあと話が切り替わってました。

より具体的な内容について触れると、この本の主張は「これからの時代『記憶力がいい=頭がいい』ではない」「記憶は記録して忘れてスキル(非宣言的記憶)を覚えろ」「スキルは記録を分析して覚えろ」「あきらめずスキルを蓄積しろ」となります。残りは幸せがどうとかそんな話になります。

自分は、この本に沿って言うと「どうすればあきらめずスキルを蓄積できるか」が知りたくてこの本を買いました。一応この本では「意識改革」に少し触れていましたが、自分の読解力では「意識改革をするには、意識改革をする」という結論しか読み取れず、そこでこの本に興味は失せました。

読み続けると何回も「これからの時代ただ覚えるだけの記憶力はいらなくなる」という主張をしています。著者は書いたことを忘却メゾットで忘れてるんでしょうか?

「学生教育は記憶力の良さのみを頭がいいと扱っている」ことが「記憶を失うことが悪とされている社会」の原因になっていると著者は言ってました。「一流大学に入学する学生は記憶力は良いが創造性に欠ける」「創造性がある人ほど記憶力が悪いので記憶力がある人は努力して忘れる必要がある」だとか。

反論する価値もないような主張ですが、「もしや著者が学生時代の勉強にコンプレックスがあったのでは」と少し気になりました。

本の後半で「著者が暗記できなかったものをすぐにほとんど暗記してしまった学生がいた」というエピソードが語られ、「こういった記憶力の優劣が大学を決め人生を決めてしまうことになる」なんて言ってました。あらららら。

まぁ著者は嫌な記憶を忘れる能力があるのでこのエピソードは嫌ではないんでしょうけど、ねぇ?

ちなみに著者は東工大卒です。すごい。たしかに暗記嫌いそう。ハーバード大学もいって工学博士も持ってる超インテリですが、本を書く能力に乏しいところに親しみやすさを覚えます。

そもそもこの本は行間と余白が多かったです。これはおそらく書くべきことを忘れてしまったんでしょう。

目次を見るとビッシリ書かれておりそれが購入の決め手にもなってしまったんですが、一杯食わされました。一つ一つの内容が薄いか、前にも言ったことの繰り返しでした。

こういうハウツー本では、魅力的なタイトルと目次の密度だけでなく一節の長さや1ページあたりの文字量といったにも気を配る必要があります。それを学びました。

それだけを心に刻み付け、この本の内容は嫌な記憶とともに忘れることにします。

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