「誰がために鐘は鳴る」(ヘミングウェイ作 高見浩訳)

「たがためにかねはなる」、と読むらしいですが、「だれがために~」でも良くないですか?

ダメなの?

まぁいいですけど。ヘミングウェイさんはハードボイルドな作風でノーベル文学賞までとった文豪だそうで、「老人と海」の映画版とかは自分も見たことがあります。

そもそも自分は北方謙三というハードボイルドな作家が大好きでして、一時期ドハマりしてまして、その一時期が現在進行中で続いております。

「読書が好きなんじゃない。ただ北方謙三が書いた本を読みたいだけさ」

これは自分の言葉です。ハードボイルドでしょ?

つまり自分はハードボイルドという作風に大変興味があり、好みの延長線上にヘミングウェイがいたという話でした。

「誰がために(たがために)鐘はなる」の舞台は1930年代のスペインで、ファシストと共和国で国内紛争が起きていたそうです。主人公のロバートジョーダンが共和国側としてスペインに入り、現地のゲリラと協力して任務を全うする話です。

作品の特徴はなんといっても戦場のリアリズムです。作者は記者として紛争中のスペインに赴き取材したそうで、スペインの地理や戦場、武器が大変細かく描写されてました。

敵に撃たれて死ぬことになった自分の馬を盾にして機関銃で応戦してたら、連射した機関銃の銃身が熱くなって焼けた馬の燃えた毛の臭いが鼻につく、とか普通思いつかなくないですか?

とてもよく勉強して様々な体験記や資料を読んで思いつけたとしても、もっと思いつけないのは色んなものの比喩表現です。

動物を狩猟で殺めるのと違って人間を射撃して殺してしまうのは、大人になってから血を分けた兄弟を殴り倒したような感じがするんですって。平和ライフを送っている自分でもなんとなく分かる気がするような良い例えをしてるんです。

こういった巧みな戦争の描写とハードボイルドな文章が作品全体に凄みを与えてました。なぜか先に作品の輪郭だけなぞったような紹介をしてしまいましたが、ストーリーやキャラクターもハードボイルド満点です。

ストーリーはシンプルで主人公が現地に赴いて、作戦立案して準備して実行する3日間を描いた作品です。主人公に色んな困難が降りかかってきます。基本的に色んなことが上手くいかず、命を賭けた特殊任務に飛び込んでいきます。

ここハードボイルドポイントですね。困難な状況に身を投じる姿に+5点の加点です。

現地のゲリラも魅力的で、とくにアンセルモというキャラクターが自分は好きになりました。共和国の理念に心酔しファシストに立ち向かう老人なのですが、派遣されてきた主人公を頭から信頼しており、主人公もその姿勢から彼に重要な任務の一部を任せます。主人公のことを信じると決めているため、どんな命令も忠実に実行する人物でその忠誠が共和国のためになることを信じて疑いません。

もうハードボイルドですね。自分で決めたものを信じるというか、信じると決めたから信じるっていうのがポイントの加点対象です。+5点。

先ほど例として挙げた人間を殺すことに関する比喩表現もアンセルモのモノローグから抜粋されたものです。100点あげます。ハードボイルドすぎる。

ところでハードボイルドって何でしょうか?淡々としてる感じ?渋けりゃ何でもいいのかい?

分かっているのは、分からないってことだけですね。

はい+5点。

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