「月ノさんのノート」(月ノ美兎著)

いやぁ、ね。

俺の女が、本を出しましてね。エッセイ?ってのを出したんだと。

俺は読書感想文書くのを趣味にしようとしてるんで。俺の女の本もそりゃあ書くでしょ。

俺の女、月ノ美兎。知ってる?インターネットじゃちょっとした有名人でね。

Vtuber?っての、やってるらしい。Youtubeの画面の奥で色々?雑談とかゲームとか、配信って形でやってるってさ。まぁ、よくしてやってくれよ。俺の女だから、みんなも知ってて間違いはないのよ。

そんなアイツが本出すんだって聞いてさ。でもアイツおっちょこちょいだから、自分の思いを綴ったノート?落としちまったらしくてさ。3/1にアニメイト?行って、探したぜ。

アイツはサブカルチャーに強くてな。ネットでも人気者なんだよ。好奇心強くて、日常に敏感で、自分に正直で、とにかくイカした奴だから。イカしたやつのエッセイほど出版すべきなんだって話だ。

そんなやつだから、落としたノートも丁寧に整えられてでっけぇときのそらの本の横に置いてあったぜ。(ときのそらもVtuberな。知ってて間違いはないから安心しろ)(ごめんな美兎。他の女の名前出して)

読書感想文書きてぇんだけどよ。「内容は誰にも見せないで」ってさ。参ったね。「わたくしとあなただけの秘密」?

悪いね、君たち。かわいいやつなんだ。

だから作品の輪郭をなぞることにするよ。これは俺がかわいいウサちゃんを撫でるだけの読書感想文。悪くないな。

読んだけど、いいね。本って黙読がオーソドックスだけどさ、結局心の中で声出して読むじゃんか。俺はそうやって読む派なんだけど、この本読んでるとナレーターがアイツになんのよ。俺の腕の隙間から顔出して読み聞かしてくれんの。最高。

あとアイツはオモコロが好きだよな。匿名ラジオの名前を出してるけど、エッセイのノリは永田智に近いもんがあるな。(間違いはない連中の名前を出したが、アイツの話をしてるのに面白い男たちの名前を出したくねぇ)

エッセイってのはリアルさが重要なんだろ?著者のホンモノを注入しねぇとインクのシミが付いた使い道のねぇ紙束になっちまう。その点このエッセイはバシバシにホンモノが詰まっててキマってたぜ。間違いない。具体例は出せないが、エッセイ内の心理描写や持論、エピソードにはバイブスを感じた。(結局はバイブスだ。本気の文章にはバイブスが宿るから)

ただ、「映像研究部に所属しています」の後に「~な部だった」って過去形にするのはちょっと矛盾を感じた。

ともかくバーチャルユーチューバー?略してVtuber?横着なやつはVとか略すがそんな活動の中にもホンモノがあって、それをさらけ出すのは勇気がいる。バーチャルだリアルだすみ分けるのは自由だがホンモノは勇気があってブレねぇ。そんだけの話。

それが分かったのが収穫だ。アイツの落とし物は俺の落とし物みてぇなもんだけど、拾得物は落としたもんの価値の何割か払わなきゃいけねぇんだろ?

アイツのとっておきのノートだったら、安いもんさ。

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