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犬みたいな蚊

車を運転して近所の薬局へ行く。車だと5分くらいの所にある薬局。大変便利である。
私は歩くのが好きなので歩いて行こうかと思ったが、あいにく雨がポツポツと降りだしている。傘を使うと腕がパンプしてくるのと、雨の中歩くのは流石に嫌である。というか、誰もが徒歩で30分~40分往復でかかると考えると嫌であろう。
車で運転中 交差点に差し掛かった時、社内に乗車しているのは私一人では無かったことに気が付く。
蚊だ。
「おいおい、一緒に薬局へ行こうなんて誘ってないだろう、せめてガソリン代を払ってくれ」とブツブツと愚痴を言いながら蚊を手で振り払うと、思いが通じたのか視界からどいてくれた。正確には助手席側へ優雅に飛んでいった。
助手席側の窓を開けたい。ここでむやみやたらに蚊を潰そうもんなら、後始末が面倒だ。あいにくウェットティッシュなんて便利なもの持ち合わせていないし、もし潰したタイミングで信号が青になったら、後続の車にクラクションを鳴らされる可能性もある。それに私の車はMT車なので片手運転を強いられるのも酷だ。
私の車はパワーウィンドウ(運転席側からボタンで開ける奴)なんていう便利な機能は搭載されていない為、手回しで窓を開けなくてはいけない。丁度交差点の赤信号で停車していたので、よいしょと手を伸ばし、手回しで助手席側の窓を開けると、蚊が「ありがとうな」と言わんばかりに、ゆっくり外へ優雅に飛んで出ていってくれた。
なんだか人懐っこいというか、俺がこうして欲しいのを全部笑顔でやってくれる犬みたいな蚊だった。

青信号になり車を走らせると、ふと何故だかもう一度同じ蚊と会ってみたくなった。


いや、ごめんやっぱ頼むから近寄らないでくれ。もし今度会った時、俺はお前を潰してしまう気がする。このまま離れ離れにお互い生きていこう。昔算数だかの授業で「ねじれの位置」ってあったよな。そんな感じにさ。



雨の降り始めのアスファルトの匂い、ちょっとだけ好き。


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