【詩】はくしのこえ
ことばに規定されているような気がして、目を覚ました。しろい平野にはもう誰もいらない、「私」すらも。何もつむぐことはできなくて、唯一なし得たことは、つぐまれた口のなかでつややかな乳歯をあたためること。そしてただ、目の当たりにしている今を。永遠を流れてゆける時が、薄ら笑いを浮かべながら行っては来てを繰り返している。何も知らない代わりに、全てを視ている。爪のフチから透明になっていくのをお終いだなんて錯覚して、からだだけが次へと始まろうとしている。ただの音楽、とも捉えてしまいそうなこえが、はるか丘のむこうからなびいて、それをつかむだけの器官を未だ持ち合わせていることに、どよめきを隠しきれない。笑うのは雨だろうか風だろうか? こんにちはとこんばんはの隙間、ありとあらゆるもののとなりにいて、ちゃんとぬくもりを感じている。
・詩誌『ココア共和国 11月号』落選作です。
・お気に入りポイント
①「何もつむぐことはできなくて、唯一なし得たことは、つぐまれた口のなかでつややかな乳歯をあたためること」、「それをつかむだけの器官を未だ持ち合わせていることに、どよめきを隠しきれない」。
→こういった言い回しは今までになかったため、新しい表現を掴めたかなと思う。お気に入りの詩句。
②散文形式に挑戦したこと! 今まで詩らしい形式ばかりを使ってきたので、ひとまず挑戦はできたこと。
・反省点
①散文形式を採用したものの、その形式だからこそ立ち現れ得る言葉の良さ、肌感を生かせていないこと。寧ろ詩らしい形式を用いて余白を生み出した方が、詩句を効果的に見せることができたかもしれない。
②さらさらしすぎている。通り抜けて後読感が薄い、インパクトがない。
③詩論の発想がありきたり過ぎる。
④「ちゃんとぬくもりを感じている」でいつもの方向性に逃げてしまっている。→せっかくの挑戦なのだから新しい発想を! 恐らくいつも同じこと言っているなと見抜かれている。
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