インド物語-アグラ⑥-
コーラの瓶を揺らしながら話しかけてきた男は雑貨屋の店主で各国の観光客から様々なワードを教えてもらっているらしく、日本語のレパートリーも豊富だった。きっと賢いのだろうと思う。彼が記憶から言葉を引き上げる仕草をどこかで見たことのある気がした。面長の筋張った頬はこけていて、よく見たら日本で勤めていたときの先輩によく似ていた。というか瓜二つだった。先程の眼鏡に手を置きながら考える仕草もほとんど同じ。世界にはそっくりな人が3人いると聞いたことがある。その先輩も賢い人だった。人相と性質っ