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福島甲状腺調査の一時休止を

本日(2023年7月20日),福島県「県民健康調査」検討委員会がおこなわれました.そのなかで過剰診断によって福島の子どもたちに重大な健康被害が発生している可能性がある甲状腺調査について,数年間の一時休止をおこなうことを提案しました.理由は以下のとおりです.

薬には副作用が,手術には合併症がおこることがあるように,検査そのものにも不利益があります.福島県の甲状腺調査でも,がんが進行しなかったり進行がゆっくりのため,本来ならば一生治療が不要ながんがみつかってくる「過剰診断」というデメリットが生じています.みつかった甲状腺がんは手術をせざるをえません.

福島甲状腺調査で多くのがんが見つかる理由として,スクリーニングによる先行発見と,過剰診断のふたつの理由が想定されます.どちらも超音波検診によって甲状腺がんは増加しますが,検診をやめたあとのがんの頻度の変化があきらかにことなるため,先行発見と過剰診断のどちらか区別できるのです.

祖父江先生のわかりやすいシェーマを引用させていただきます.左は先行発見がんだったとしたとき,右は過剰診断だったときのがんの頻度で,いずれも検診によりベースラインより増加します.そして前者では先行してみつけた分だけ検診中止後にがんの頻度が急減しますが,後者では検診中止しても頻度は変化しません.

実際に甲状腺調査でみつかったがんは先行発見と過剰診断の両者が含まれていることを,評価部会もはっきり認めました.問題は過剰診断の占める割合であり,それが多ければデメリットが高いため甲状腺調査は続けてはいけません.いま甲状腺調査を休止し何年か経過をみればそれをあきらかにできるのです.

仮に過剰診断がなされていれば,よかれとしてはじめた甲状腺調査によって福島の多くの子どもを無意味に傷つけていることになります.本日の県民健康調査検討委員会で甲状腺調査の一時的休止をわたしが提案したのは,過剰診断の割合をあきらかにするためです.病気でないものを病気としてはいけません.

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