『わかる』で人生はやっていける。

わかるって最強。わかる?本当!?私もわかる~!
同意と肯定を兼ね備えた魔法の言葉『わかる』。なぜこんなにも利便性に長けているのか。

1.共感される事への喜び。
基本的にマックでお茶程度の時にこの『わかる』は最も効力を発揮する。何気ない会話、普段通りの日常、進む秒針。今日も退屈だね~、なんてマックシェイクSサイズを吸引しながら時間を潰す、そんな日常に添えられる『わかる』の素晴らしさ。ああ、この人は私と同じ世界を、同じ感覚で歩んでる───。エモ。

2.相づちとは似て非なる存在、故に受け止められてる感。
『うんうん』『なるほど』『ああね』……いや話ちゃんと聞いてる?!ってなるの、割とあるある。こっちは結構本気の気持ちで語ってる時だと余計にしょぼん、歌い手のコメ欄感。そんな時にもおすすめの言葉がやっぱり『わかる』。分かってなくてもいい、分かったつもりで居てくれ。否定されると辛いでしょ、だから肯定して欲しいの。そこ話しはそこまで深い話ではないけど、だからこそ肯定して。Pretenderくらいの否定は心に来るから…………ね。 A.『わかる』

3.同意よりも認められている事の安心感。
人に何かを伝える事、それすなわち勇気が必要。信頼関係があれば、大体の事は受け入れてもらえると思ってはいても、少し不安になっちゃう時もある。そんな時には、これ。『わかる』。これまでは言われる側の心境だったけれど、今回は発信する側の気持ちで書いていく。


 『わかる』。これが貴方の口癖だった。
いつも私に寄り添ってくれて、励ましてくれて、何かある度に『うん、わかる』って支えてくれた。そんな彼が病床からこの世を離れ、1年の月日が流れていた。
『ごめんね、1年分の土産話しか出来なくて。』
今日で私は彼の元へ行く。そう決断していた。片手には薄暗い中でも視認出来るほどの鋭利な刃物、あとは切っ先を添えて貫けば──。
『そう言えば、もし寂しくなったら読んでねって言われてたっけ…』
彼の生前、付き合っていた頃、それも交際当初に手渡された手紙。入院中はろくに会話も出来なかった、一体なにが綴られているのだろうか。私はそっと無気力な手で封筒を破り、中の便箋を開いた。

──あれから10年の月日が流れた。相変わらず私は彼以外の男性に関心が持てずに、独身を貫いている。
『ああ、今日は残業疲れたなあ』
一杯の背伸びと缶ビールを片手に、帰宅早々晩酌を嗜む私。仏壇に供えたもうひとつのビールにそっと乾杯をし
『懐かしいなあ。初めて言われちゃったもんね。』
と、お供えに添えた『それは分かってあげられない。』の綴られた、あの時の手紙を見て、私は彼の写真へそっと微笑んだ。


なにこれ。

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