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【活動レポート】ムラツムギVillageオンライン村民集会第3回「これまでの地域活性化を振り返る」を開催しました!

みなさんこんにちは。ムラツムギ事務局です。
いつもムラツムギの活動を見守り下さりありがとうございます。
9月30日の21時から、田中輝美さんをゲストにお招きしたオンライン村民集会を開催しました!

田中 輝美(たなか てるみ)
ローカルジャーナリスト。島根県浜田市出身。大阪大学文学部卒業後、山陰中央新報社に入社し、ふるさとで働く喜びに目覚める。報道記者として政治、医療、教育、地域づくり、定住、Uターンなど幅広い分野を担当した。琉球新報社との合同企画「環(めぐ)りの海」で2013年新聞協会賞受賞。2014年秋、同社を退職して独立、変わらず島根を拠点に、地域のニュースを記録、発信している。著書に『関係人口をつくる』(木楽舎)、共著に『みんなでつくる中国山地』(中国山地編集舎)など。2020年、大阪大学大学院人間科学研究科で関係人口をテーマに研究し、博士(人間科学)を取得。


ローカルジャーナリストとして活躍されるとともに、大阪大学院にて博士号を取得され、アカデミアとしても活動の幅を拡げられている田中さんをお招きし、「これまでの地域活性化を振り返る」というテーマで語り合いました。そのダイジェスト版をお届けします^^


※弊社代表理事も田中という名前なので(笑)、記事中では田中輝美さんを「輝美さん」、代表田中を「田中」と書かせて頂きます。

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ー田中
こんばんは。今日はよろしくお願い致します!
“地域活性化”自体、今ではありふれた言葉になってきていますが、これまでの地域活性化の取り組みはどんなものがあって、それを今一度振り返る機会を持とう、というのが今回の趣旨になります。

これまで当たり前のように考えてきた地域活性化を、時代の流れとともに振り返り、これからの地域活性化はどうあるべきか考えていきたいと思います!

ー輝美さん
今日はよろしくお願いします。ムラツムギさんの活動はずっと見させて頂いていて、今回お声掛け頂いた時は3秒で返事しました!笑

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地域再生をするのは誰なのか?

ー田中
輝美さん、今日は島根県からですか?

ー輝美さん
はい、この画面の背景も、島根の普段の散歩道です!とっても綺麗で、iPhoneに空の写真がたくさんたまっちゃって(笑)
最近は、関係人口をずっと研究していて、今年の春に母校で博士号をとりました。その時に出したこのめっちゃ分厚い博士論文なんですけど…


ー田中
わ、本当にめっちゃ分厚いっすね。笑

ー輝美さん
そうなんです〜。タイトルが「現代社会における地域再生主体の社会学的研究『関係人口』に着目して」というもの。1番言いたかったのは、地域再生をするのは誰なのか?ということなんです。

独立後ローカルを専門に8冊本を出してて。

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私自身島根県の出身なんですけど、島根って人口減少が1番進んでいて。大正時代より人口が減っている県って島根県だけなんです。
そんな地域で生まれ育ち、仕事もする中で、「地域再生」についてずっと考えてきたし、これらの8冊の本たちの内容も、全部「地域再生」について書いてます。最新作は「過疎は終わった」っていう大胆なコピーのものです。


ー田中
めちゃくちゃ読みたいです。


「過疎」は、三期に分けられる


ー輝美
さて、今日は、博士論文の時にまとめた表を持ってきました。
「過疎」っていうのは、三期に分けられるというのを、山下祐介先生という方が言われています。

一次過疎というのは、多くの人がイメージするような、都市部への人口流出が進む現象。

二次過疎は、人口流出だけでなく、自然減少が重なってくるもの。

三次過疎は、消滅とか限界集落とかを言われ始める。消滅も視野に入り始めているのが今、第三次過疎期ですね。


まず一次過疎期なんですが…
みなさん、「国土の均衡ある発展」って、聞いたことあります?

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一同「うーん・・・聞いたことはあるような・・・?」

ー輝美さん
これは、都市と地方は一緒に発展しよう、という考え方。格差の是正。
方法としては、モノをつくるというやり方でしたね。「施設や漁港とかのモノが足りなくて不便だから人が出ていくんだろう」という仮説のもと、モノの整備をすることで発展の格差を埋めようとしていました。

1970年には過疎地域対策緊急措置法というものも出ました。少ないお金で道路が作れます、というような。
この頃、「貧しさの中の過疎」というキーワードが生まれます。貧しさから抜け出せば豊かになれるという考え方がありますね。

ー田中
過疎=貧しさという考え方があったんですかね?やはり格差是正がテーマになっているというか。

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ー輝美さん
そうですね。でも、その後「豊かさの中の過疎」という新たな言葉が生まれます。道路なんかの整備も進み、生活水準が都市部と地方で大差なくなってくる。同じ頃、バブルも始まって、「ふるさと創生 1億円バラマキ」と言われる動きもあり、リゾート開発なんかも盛んになりました。でも結局、モノづくりなんですね。

1986年、やっと出てくる「活性化」

ー輝美さん
その後やっと出てくるのが「活性化」です。明治大学の小田切先生が調べてらっしゃるんですけど、活性化っていう言葉って1986年頃までは出てこないんですって。

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ー田中
そうなんですね!ちなみに、この時期にはじめて「活性化」という言葉が出てきたのは、「豊かさの中の過疎」という考え方になって、地方も良いよね!というビジョンを国も描き始めたということなんでしょうか?


ー輝美さん
うーん、わたしも明確には分からないのですが、生活水準がある程度整備されたことで、精神的な活性化にアプローチがシフトしてきたのかもしれないと、お話し聞きながら思いました。

「補助金から補助人へ」

ー輝美さん
さて、最後に第三次過疎期。この頃はバブル崩壊もあり、財政的に厳しくなる。
とにかくお金が少ない中で、地方交付税が少なくなってくる。
そこでとられた方法が、「補助金から補助人へ」というものです。農林水産省が「田舎で働き隊」を始めたことがきっかけで、総務省が「地域おこし協力隊」を制度化しました。
2011年頃からはいよいよ縮小社会が始まった、と言われていますね。


ー田中
第一次過疎期の目標だった物理的な格差の是正というのは、もちろん個別具体的に見ていけば足りない部分はまだまだあるかもしれませんが、ある程度は達成出来ているのではないかと感じました。しかし、その後の精神的な活性化という言葉が出てきてからは、何をもって達成出来たのかというのが疑問ですね。

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ー輝美さん
特に2014年以降は「人口の維持」が強く主張され始めました。

ー田中
やはり、人々の中の共通の危機感として人口減少というものがあるんですか?


ー輝美さん
そうですね・・・これだけ「人口、人口…」ということを言われだしたのは増田レポートが出てからかなぁという印象はあります。あの時一斉に、人口に対する対策本部みたいなものが立ち上がったんですよね。


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ー田中
これまでハード整備、経済、人口とクローズアップされてきて、これからは、何をゴールに地域づくりをしていけば良いのか?という点について、輝美さんのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

ー輝美さん
そうですね。これまでの地域活性化って、どちらかというと「うまくいかなかった」というような総括が多いと思っていて、なんでかと言うと、結局モノを作るだけ・経済を盛り上げるだけじゃダメで、人の主体性がないといけないという指摘は色々な先生がされています。

1番の今の地域の課題は「あきらめ」とか、「心の過疎化」なんですよね。ずっとずっと活性化を頑張ってきた地域住民さんが「こんな何もない地域」と言ってしまうような、傷ついた精神状態でいることに対して、アプローチしていく必要があると思っています。

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ー田中
輝美さんがお話ししている「あきらめ」とは、どういった意味合いなのでしょうか。必ず人口増を目指さなければいけないという意味ではないような気がしていますが…

ー輝美さん
地域社会において、これが正解!というものはないと思うんです。だから、たとえば「人口減少」自体は課題ではなくて、現象でしかないと思っています。それによって困ることがあるなら解決していけば良いのですが。


ー田中
国からモノ作り・経済発展・人口増を目指す取り組みを提示されてきたことで、地域住民は受動的になっていて考える機会の喪失をしてきている気がしています。


ー輝美さん
そうですね。人口増が唯一絶対の地域活性化の成功基準ではないと思うし、ムラツムギさんの言っている「終わりを見据えた活動」もあっていいと思うんです。
出来る限り住民さん自身が主体的になることに意義があると思っていて。

結論だけに意味があるのではなく、自分ごととして「この地域どうなっていったら良いんだろう」と語り合えるプロセスが重要なんだと思います。

地域活性化の中身って多様だと思うんです。ただ、モノ作り・経済発展・人口増を目指す取り組みを提示されてきてしまって思考の停止になっていたところに「主体性を持って!」といきなり言われても難しいよな、とも思っています。


「地域のため」に生きる?


ー田中
あ!視聴者さんから、「地域」って、都市部や農村部など色々とありますが、どのくくりで言っているのかというようなご質問が。

ー輝美さん
どこにでも「地域」はあると思います。都市部であれ、地方であれ。その枠組みを考えるところにも意義はあると思います。地域のために人が存在しているわけではないと思うんです。人がいるから地域があるのであって。


ー佐藤
私からも。
これは言葉にするのがなかなか難しいと思うんですけど、「心の過疎化」って、どうしたらなくなったと言えるんでしょうか。

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ー輝美さん
「過疎が終わった」という話をしましたね。

新しい人が入ってくることで、新しい動きが生まれる。「人口を増やそうか」という内容だけではない考え方です。うまくいってる地域って、前向きなんですよね。人が数の変化には関係なく。

「過疎はダメだ」というメカニズムではなくなってきていると。要は、小田切先生の言っている「にぎやかな過疎」ですよね。
究極、「この地域好きだよねぇ」「いい人生だったなぁ」と言いながら幸せに死んでいけたらいいと思うんです。


島根で、80代のおばあちゃんが関係人口として関わっている人にお誕生日祝われて「こんな嬉しい誕生日は初めてだ」と言っている光景なんかを見ちゃって・・・今思い出して泣きそうなんですが(笑)

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人口が減っている中でも幸せに生きていける、死んでいける社会がいいよね。
それにね、人口が増えている時だって課題はないはずないんですよ。

主体的にならなくたって生きていける時代の方がもちろん気楽


ー前田
続いて自分からもお聞きしていいでしょうか。
活性化を画一的なものさしで計らなくても良いんじゃないか、という話だったのですが、これって第三者だから話せることじゃないかなと思ったんですが…実際にこの話を現場でした時、どうなんでしょうか。

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ー輝美さん
現場を見ると、いま、面白い地域、盛り上がっている地域ってすごく多いんです。移住者や関係人口として関わっている人や、もともと住んでいる人たちが、みんなで一緒に、それぞれの地域の活性化をはかって動いているな、と思いますよ。

とは言え、主体的にならなくたって生きていける時代の方が楽と言えば楽ですよね。でも、そうは言っていられない時代になってしまった。厳しい時代だと思いますよ。
だからせめて、うーん。「主体的になれ!」と言いすぎると辛いから「思考停止はやめよう」ぐらいかな。


ー田中
実は、関係人口とムラツムギの発想って、対極に見られがちなんですよね。でも今日話を伺っていて、そうじゃないんだなと。地域再生の選択肢のひとつひとつなんだと思いました。


ー輝美さん
正直、わかるんですよね。地域を残したいという気持ち。でもそれが絶対視されて苦しいことになってるのはなんとかしたいなと。

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ー田中
なるほど。輝美さん、今日はありがとうございました!


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輝美さんのお話をお伺いしていて、活性化の目的そのものも少しずつ変化していて、今ではその大きな目標の一つが「人口の維持」になっていることを痛切に感じました。

一方で輝美さんの仰った『「この地域好きだよねぇ」「いい人生だったなぁ」と言いながら幸せに死んでいけたらいいと思う』というのはムラツムギメンバーにとってもパワーワードでした。「人口減少」自体は課題ではなくて現象でしかなく、その中でも地域の方々が主体性を持って何かに取り組んでいくことができれば、地域の再生は達成できたと言えるんじゃないか…長らく島根県を中心に地域と真摯に向き合ってこられた輝美さんだからこそ言えるそのセリフは、我々の活動の原点を思い出させてくれたように思います。

次回の企画も固まり次第ご連絡させていただきます。引き続きご覧いただけますと幸いです!


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