管理職に管理者権限は与えるなかれ


ハードオフの架空買取疑惑

いまニュースで取り上げられており、疑惑の段階なのでなんとも言えない部分はありますが、このニュースをきっかけにテーマを考えてみました。
ハードオフの架空買取疑惑、手口としては以下のような感じらしいです。
 ①存在しない顧客登録を行い、買取品を登録
 ②登録した買取品の買取実績を成立させる
 ③存在しない顧客に買取金額を支払う
 ④そのお金をポッケにしまう
他にも、買い取った在庫をなかったことにして自宅に持ち帰ったのか、別のリサイクルショップに転売したのか。
そういった手口で3000万円以上を着服したのではないかという疑惑で調査がされています。

これが真実だった場合と想定して、ぼくなりに考えていることを書いていきます。

タイトルの意味するもの

今回の不正疑惑が真実だったとした場合、行為者は店舗の店長です。
ぼくもショップの店員・店長を経験しているのでわかるのですが、思い切りぶっちゃけてしまうと、店長ならば何でもできます。

閉店後に一人で残ることもできるので完全犯罪は可能です。レジの金を取って、クレームがあったとして返金伝票を書いて誤魔化すこともできるでしょう。

ただ、店長はこれをやりません。当たり前の話ですが、店長はその店の売上のためにがんばってるので、着服して店の売上を減らす意味がないからです。

でも、直営店の店長は「経営者」ではなく「係長か課長」レベルの人です。経営者であれば不正を働くことは損なのでしませんが、バレない不正しても給料が変わらないのであれば不正したほうが得になってしまう役職です。

世の中の管理職のほとんどはこんな不正はしないことはわかっています。が、実態としてそういう環境であることは事実です。

そこで、「果たして管理職だから管理者権限を付与して良いものだろうか?」という点を色んな視点で見つめなおすべきと思っています。

管理職に権限を渡す意味

システムは基本的に大きく「ユーザー権限」と「管理者権限」があります。ユーザー権限は登録、閲覧しかできず、管理者権限は削除もできたり、ユーザー登録をして使える人をコントロールしたりします。
その中でも細かく設定でき、「この情報は一般社員には見えない」といった設定も可能なシステムは多分にありますね。

で、多くの企業ではこの管理者権限をマネージャークラスの管理職が保持することになります。管理者なので当然といえば当然です。
しかし、「システムの根幹を担う設定」もあったりするので、そこはシステム管理者を立て、システム管理者しかいじれないようにする、ということをして、組織としての安全性を保っていきます。

ハードオフの疑惑では店長が「単独ですべての取引ができる状態」があったようです。買取という一連のプロセスを例えば2人以上のログインがなければできないようになっていれば、店長はバイトの子をたらしこんで不正をする必要があるわけで、ハードルが上がりますね。「ねぇねぇ、俺と悪いことしない?」と、誘わないといけないので、声かけた相手が正義感カンストのバイト君だったら即死です。

とはいえ、お店を運営する上での実態上の課題もあります。時間帯によっては一人しかいない場合、二人ログイン機能を設けたら運用できません。セキュリティとは高めればそれでいいものではなく、運用効率と合わせて折衷案を見出すことが大事です。

という様々な経緯があり、現在の運用に落ち着いてるのでしょう。それを責めるつもりはありません。

管理者に対する管理の押し付け

そこそこ大きい会社の会社員を経験してきて、思うこととしては、「管理職に管理を押し付けすぎではないか」という点です。ぼくも管理職を経験していますが、ぼくが管理職のときはぶっちゃけあまり管理してなかったので、ぼくの話ではありません。部下に「私は労務管理は一切しない。立派な大人なんだから自分で考えて好きに働き、好きに休めばいい」と宣言してましたからねw

業務の状況、部下の行動、精神、勤務時間、システムの登録、削除、さまざまな管理機能を管理職は担わされます。ことシステム管理者権限というのは、「餅は餅屋」にするべきのところ、「管理者だから管理者権限」のように権限を渡してしまい、理解もしてない、活用できない人に付与してしまうことで、余計なインシデントが発生することもしばしばです。

システムによっては「管理者権限のコスト」というのもあったりします。「一般ユーザーは月額1000円、管理者ユーザーは月額2000円」といった要領のものですね。ここで「うちの会社は管理者が50人いるから2000円×50人で・・・」みたいな計算をするのはちょっとやめて欲しいと思います。

管理職だからって管理者権限を持つ必要ないんです。大して理解できてない人に高い権限与えてどうするんですか。むしろ重大なヒューマンエラーの温床になってしまいます。

大きい会社ではとくに「管理職には付与するのが当たり前だから、新たに管理職になった〇〇さんにも平等に付与しないと」みたいな理屈で思考停止でばらまく傾向が強いですが、その平等になんの意味があるのかと。

真の管理者とは

組織上の管理者も、システム上の管理者も同じことが言えるのですが、肩書きや所属で平等に付与する必要はありません。真の管理者とは「管理できる能力を有する者」のことを言います。
組織上の管理者のほとんどは「管理者にさせられた者」もしくは「これから管理者たる能力を有する者」です。そんな未熟な人に高い権限を付与する必要はありません。

過去に店舗経営をしていた経験上、店長が不正を働くというのは結構ショックが大きい話題です。店長がそれをしちゃ運用の根底がくつがえってしまうので、これから大変だな・・・というのが感想です。

むすべるようならむすびます

管理者たる能力を有さない人を店長として任せてしまった。ということに他なりませんし、そんな不正をしたくなるような待遇だったのだろうか?という印象もあります。

ビックモーター不正問題と似てると思ったのが「顧客に迷惑をかけないように不正を働く」という点です。ビックモーターでは修繕するとはいえ顧客の車に傷をつけてるので被害はあると言えばありますけどね。
これってもしかしたら国民性なのかも知れませんね。顧客は大事だけど自分の所属している会社はどうなっても構わない。昔使われてた言葉で言えば「愛社精神がない」今なら「エンゲージメント低下」といったところでしょうか。

会社の利益と自分の利益に相関関係がなさすぎると、会社が不利益を被っても自分には影響はないと思うのかも知れません。ほとんどの会社はその傾向にあると思います。忙しくても給料は変わらない。会社の利益が上がって社長は「みなさんのおかげで」とかメッセージを出しているが、給料も賞与も1円も上がってない。そんな状況が続けば、会社の利益と自分の利益は影響する関係にないと思っても仕方ないかも知れません。

この不正問題で言えることは、「決して他人事ではない」ということです。管理職が管理職としての矜持を失ったら、なんでもできてしまいます。「管理職でも何しでかすかわからん」という、性悪説MAXで経営していくのってキツイですよね。。。

昨今叫ばれている「エンゲージメント」ですが、一般社員にしか目を向けてない企業さん、多いのではないですか?
管理職にも目を向けていますか?
管理職は辞めないとでも思っていませんか?
あなたが管理職だったとき、どう思って仕事してましたか?
みんな言いたいこと言いやがってと思っていませんでしたか?

同じことを今の管理職も思っているんじゃないでしょうか。

タイトルの「管理職に管理者権限を与えるなかれ」は、期待できる管理職がいないという話ではなく、管理職に与える「責任の量」もコントロールしなければならないのではないか?という想いで付けた次第です。

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