プリキュアに学ぶ標準化


真面目に読まないでください

今回はネタの要素も含みますので、あまり真面目に読まないでください。「いやいや、ビジネス舐めんじゃねーよ」と思われるかもしれませんが、「こういう遊び心も大事だよねー」という、見守るスタイルでお願いしますね。

また、40過ぎのおっさんがプリキュアについて語るので、アレルギーをお持ちの方はここで読むのをおやめになることをお勧めします。

まず、なぜプリキュアと標準化を紐づけるのか?

プリキュアシリーズはテレ朝系列でテレビ放送されている一般的には女児向けアニメと定義されるものです。主人公には比較的中学生の女の子が多く、あるとき突然、街に悪者が現れ、何とかしたいと想う気持ちから、変身グッズを手にしてプリキュアに変身して敵を改心という物語。

このプリキュアシリーズを観てると、そこかしこに標準化のヒントがあるので、いくつか紹介してみたいと思います。

コンセプトが一貫して承継されている

お話の中身の前に制作観点で標準化徹底してそうな部分を紹介します。当然ながらぼくは制作に携わってないので、ほぼ「推察」ですが、きっとそうなんだろうなと思いながら語ります。

プリキュアシリーズで一番特徴的なのは、「かならず1年で完結する」という点です。どんなに人気があっても1年きっちりで完結し、1年後には全く新しいキャラクターと世界観で新しい「プリキュア」シリーズが始まります。

そのプリキュアシリーズを制作するには、絶対に同じメンバじゃ無理じゃないですか。となるとシリーズ毎のチームがあり、並行して制作が行われているはずです。昨年度は「ひろがるスカイ!プリキュア」でしたが、これを放送しているとき、すでに今年度の「わんだふるぷりきゅあ!」の制作が行われ、すでに2~3年後のプリキュアの企画が進んでいるでしょうし、現在21年目で、昨年は20周年のイベントがたくさんありましたが、4年後の25周年の記念イベントの企画も既に練り始めているんだと思います。

複数のチームで別々のプリキュアを作ることになるのですが、根底にあるコンセプトがしっかりしてないと、「今年のプリキュア、なんか思ってたんと違うな・・・」みたいなことが起きてしまう。小さな子供は大人よりもそういうのを敏感に感じとってしまうでしょう。そんなことにならないようにするためには、「一貫したコンセプト」が大事なんですが、ここで特筆したいのは、「毎年違うプリキュアである」という点です。

全く同じプリキュアであれば「徹底したマニュアルで標準化」ということは容易にできますが、プリキュアは毎年違うんですよ。昨年は「空の住人」が主人公でしたが、今年の主人公は「犬」なんです。ハマーを運転する成人のプリキュアもいれば、宇宙人のプリキュアもいたりします。

設定はぶっとんでるけど、ちゃんとプリキュアしている。このような「コンセプトだけを標準化する」って結構難しいことだと思うんですが、そこがしっかりできているからすごいですよね。

取説不要の変身システム

次にお話の中身に触れていきます。前述のとおり、プリキュアシリーズは毎年違うんですが、決まって第一話で主人公が初めて変身します。このとき、主人公は急に渡された変身アイテムを手に、あたかも「最初からわかってました」のごとく変身するための合言葉を言い放ち、変身が始まります。わかりやすく言うと、APIトークンです。

歌を歌いながら変身するプリキュアもいれば、化粧しながら変身するプリキュアもいますが、初めてなのに取説を読むことなく、変身をするんです。

もちろんこれはネタで言ってるんですが、「取説不要のインターフェース」って、まさに標準化であり、めちゃめちゃすぐれたUIですよね。高齢者が余裕でマイナンバーアプリを使いこなすみたいなもんです。

圧倒的な安心感

ストーリーにも触れてみます。1年間放送するので、話数としてはおおむね50話です。その中で様々なドラマが繰り広げられるんですが、やはり仲間とはいえプリキュア同士で喧嘩するようなエピソードもあったりしますが、小さな子供向けのアニメということもあり、割とすぐに仲直りします。

最近では翌週まで引っ張る展開もありますが、あまりモヤモヤさせない作りになってると思います。親が子供に安心して見せることができるコンテンツになっていますね。敵が現れて変身して、いつもの必殺技で懲らしめるが、残虐な要素は一切なく、血も流さず、「倒す」ではなく「浄化させる」ような表現でほぼ一貫しています。水戸黄門のような安心感で常に視聴できるようになっています。

そして語るべきは主題歌

主題歌はもっとも語りたい点です。プリキュアシリーズの主題歌は、今は少なくなっていますが、いわゆる「ザ・アニソン」が100%徹底されています。

ぼくが定義する「ザ・アニソン」は、
 ①歌詞にキャラクターやタイトルが入っている
 ②歌詞の中にストーリーや、主人公の想いが含まれている
 ③曲のイメージとして、アニメのイメージを最優先に取り入れている
こんなところでしょうか。

鬼滅の刃の紅蓮華も「まさに鬼滅の刃!」と言えるんですが、その違いは何となく伝わるんじゃないかと思います。

プリキュアシリーズは令和の現在でも、この「ザ・アニソン!」のスタイルは変わらず進行中で、これがぼくにとってはたまらなく嬉しい点です。歌も抜群にいい曲で、「何年かけて作ったんだ、この名曲は?」と思えるくらい、どのシリーズも良くて、好きな曲ランキングが作れないです。

ちょっとまとめます

ということで、プリキュアにはどんな標準化が含まれているかをざっくりまとめると、
 ①コンセプトだけがしっかりと承継されている
 ②取説不要の変身システム
 ③安心できるストーリー構成
 ④ザ・アニソンで徹底された主題歌
こういった点について、チームが変わっても必ず遵守する「標準」がそこにはあるのだろうと妄想しながらアニメを拝聴しています。

徹底ってどうやるんだろう?

アニメの制作はたくさんの人たちが携わり、一回も会ったことがないけど、綿密に関係している人もいるんじゃないかと思います。そんなチームが、毎年異なる作品であっても「一貫したプリキュアらしさ」は据え置きで制作できるってすごいことだと思うんですが、それほどの「標準の徹底」ってどうやったらできるんだろう?という点が学びのポイントかなと思っています。

「標準の徹底」で必要なのは、教育とインセンティブだと思うんですが、企業内でこれをやろうとした場合、相当のトップダウンや研修を繰り返し行う必要がありそうです。これをプリキュアチームがちゃんと成し遂げているのは、もう一つのエッセンスとして「すごい好きだから」というのがありそうな気がしています。スタッフ全員がプリキュア好きだったら、研修もトップダウンも最低限で、あとは自動的に「プリキュアはこうだから」と「ブランドとしてのプリキュア」をインプットしてくれそうです。

プリキュアに限らずですが、日本のアニメって「ここまで原作にこだわってくれるの本当に感動!」みたいなシーンがあると思うんですが、そこにはトップダウンの「こうせよ」みたいなのがあるのかないのか?
ぼくは無いんじゃないかと思っています。実際はわかりませんけど。

むすんでみますよ

前述のとおり、「標準の徹底」には、「教育」と「インセンティブ」が必要ですが、もう一つあります。敢えて悪い言葉で言うと、「洗脳」ですね。この「すごい好き」という気持ちは、教育やインセンティブに対してコストや所要時間が圧倒的に少ないというメリットがあります。

企業内の「標準の徹底」に落とし込んだとき、「すごい好き」が使えればどんなにいいことか。それは「自社のこの商品が大好きだ」「社長のこの考えが大好きだ」といった部分にあたります。

「すごい好き」を作りあげるには、「すごい好き」であり続けることですよね。社長が惰性で経営に取り組んでたら当然「すごい好き」になる社員はいません。「すごい好き」は、作り上げるのには時間はかかるけど醸成されると圧倒的なパワーがあります。

たぶんプリキュアの制作スタッフは、常に会議の中で、「その言葉、プリキュアは使うかなー?」という感じで、「プリキュアならこうするはずだ!」みたいな想像を当たり前のように常に真剣に働かせてるような気がします。

企業に落とし込むと、それは「プリキュア」ではなく「事業戦略」だと思います。事業戦略のない企業はないと思いますが、末端の社員までその事業戦略を知り、当たり前のように事業戦略に当てはめて想像して会話ができているか、それが「すごい好き」の正体であり、「標準の徹底」に必要な要素の一つなのではないかと思います。


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