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DX人材不足の実態と対策！これからの企業が対策していくべきこと

村岡 新之佑｜Chumtech代表

デジタルトランスフォーメーション（DX）が企業の成長戦略として不可欠となる中、その推進を担うDX人材の不足が深刻な課題となっています。

本記事では、DX人材不足の現状を詳細に分析するとともに、企業が今すぐに取り組むべき対策を具体的に解説します。


DX人材は最大79万人も不足する？

デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まる中、DXを推進する人材の不足が深刻な課題となっています。経済産業省の調査によると、2030年には最大で79万人ものDX人材が不足する可能性があるとされています。

この人材不足の要因として、以下の点が挙げられます:

  1. 少子高齢化による労働人口の減少

  2. DXに対する需要の急速な拡大

  3. 従来型IT人材からDX人材へのスキル転換の遅れ

特に、AIやIoTなどの先端技術を活用できる人材の不足が顕著です。このままでは2030年時点で、DX人材の需要の半分程度しか満たせない可能性があります。

また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、日本企業の約半数がDX人材の「大幅な不足」を感じており、この割合は前年から大きく増加しています。

一方で米国企業では、DX人材の不足を感じる企業の割合が減少傾向にあり、日米間で大きな開きが生じています。

不足する「DX人材」とは？

そもそも「DX人材」とは何を指すのでしょうか。経済産業省の定義によると、DX人材には主に2つのタイプがあります:

  1. DX推進部門で働く、デジタル技術やデータ活用に精通した人材

  2. 各事業部門で、業務知識とデジタルスキルを併せ持ち、DXの取り組みをリードする人材

つまり、純粋な技術者だけでなく、ビジネスとITの両方を理解し、組織全体のDXを推進できる人材が求められているのです。

DX人材に必要とされる主なスキルセットは以下の通りです:

  • IT・デジタル技術の基礎知識

  • AI、IoTなど先端技術への理解と応用力

  • データ分析・活用能力

  • ビジネス課題の理解と解決力

  • プロジェクトマネジメント能力

  • 変革をリードするリーダーシップ

これらのスキルを兼ね備えた人材の育成・確保が、企業のDX推進には不可欠です。

不足するDX人材への対応策5選

DX人材不足に対処するため、企業が取るべき対応策を5つ紹介します。

1. 「人材像の設定・周知」

まず重要なのは、自社が求めるDX人材の具体的な人材像を明確にすることです。

IPAの調査によると、日本企業の40%がDX人材の人材像を「設定していない」と回答しており、米国企業の2.7%と比べて大きな開きがあります。

具体的な施策:

  • 経営層を交えたDX戦略の策定

  • 必要なスキルセットの明確化

  • 全社的な理解促進のための説明会やワークショップの実施

2. 「人材の獲得・確保」

次に、設定した人材像に合致する人材の獲得・確保に取り組みます。日本企業は米国企業と比べ、外部からの人材獲得に消極的な傾向があります。

具体的な施策:

  • 専門性の高い外部人材の積極的な採用

  • 業界を超えた人材スカウティング

  • 社員紹介制度(リファラル採用)の導入

  • DX人材に特化した転職サービスの活用

3. 「キャリア形成・学び」

獲得した人材や既存社員のスキルアップも重要です。
特に「リスキリング」(既存社員の新しいスキル習得)に注力する必要があります。

具体的な施策:

  • 社内外の研修プログラムの充実

  • OJTを通じたスキル習得の機会提供

  • オンライン学習プラットフォームの導入

  • 資格取得支援制度の整備

リスキリング

リスキリングとは、既存の従業員に新しいスキルを習得させることで、変化する業務ニーズに対応させる取り組みです。DX時代において特に重要視されています。

リスキリングのメリット:

  • 新規採用コストの抑制

  • 既存社員の業務知識を活かしたDX推進

  • 社員のモチベーション向上とキャリア支援

一方で、以下のような課題もあります:

  • 学習環境の整備コスト

  • 業務と学習の両立による負担

  • 新しいスキル習得へのモチベーション維持

これらの課題を克服するためには、経営層の強いコミットメントと、段階的なアプローチが必要です。

4. 「評価・定着化」

DX人材の評価基準を明確にし、適切な評価とフィードバックを行うことで、人材の定着を図ります。

具体的な施策:

  • DX推進に特化した評価指標の設定

  • 定期的な評価面談の実施

  • キャリアパスの明確化

  • 報酬制度の見直し(成果に応じた柔軟な報酬体系など)

5. 「企業文化・風土」

DXを推進しやすい企業文化・風土の醸成も重要です。多くの日本企業では、まだDXに適した組織文化が形成されていません。

具体的な施策:

  • トップダウンでのDX推進メッセージの発信

  • 部門横断的なDXプロジェクトの推進

  • 失敗を許容する文化の醸成

  • デジタルツールの積極的な導入と活用促進

自動化・効率化による対応人員の削減

DX人材不足に対応するもう一つの方法として、業務の自動化・効率化があります。これにより、限られたDX人材リソースをより戦略的な業務に集中させることができます。

ノーコード・ローコードツールの活用

プログラミングスキルがなくてもアプリケーションの開発ができる「ノーコード・ローコード」ツールの活用が注目されています。これにより、非エンジニアでもデジタル化を推進できる環境が整います。

具体的な施策:

  • ノーコード開発プラットフォームの導入

  • 業務プロセスの可視化と再設計

  • 部門横断的なデータ連携の実現

  • 社内デジタル人材の育成プログラム実施

アウトソーシングの活用

すべてを自社で対応するのではなく、外部リソースを効果的に活用することも重要な戦略です。

具体的な施策:

  • DX専門のコンサルティング企業との提携

  • クラウドサービスの積極的な活用

  • 特定業務のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)

  • オフショア開発の検討

ただし、アウトソーシングに頼りすぎると、社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットもあります。適切なバランスを取ることが重要です。

DX人材に適した職種

DX推進には様々な役割が必要です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、DXに適した6つの職種を定義しています。

IPAが定めた6つの職種

  1. プロデューサー

    • DX戦略の立案と全体統括

    • 経営層とのコミュニケーション

  2. ビジネスデザイナー

    • ビジネスモデルの設計

    • 顧客ニーズの分析とサービス企画

  3. データサイエンティスト／AIエンジニア

    • データ分析と活用

    • AI技術の適用

  4. アーキテクト

    • システム全体の設計

    • 技術選定とアーキテクチャ設計

  5. エンジニア／プログラマ

    • システムの実装と運用

    • 新技術の検証と導入

  6. UXデザイナー

    • ユーザー体験の設計

    • インターフェースデザイン

これらの職種を適切に配置し、チームとして機能させることがDX成功の鍵となります。

DX人材の不足を解消できる3つの手段

最後に、DX人材不足を解消するための3つの主要な手段をまとめます。

1. 外部パートナーを活用する

外部の専門家や企業と連携することで、短期的なDX人材不足を補うことができます。

メリット:

  • 専門性の高いスキルをすぐに活用可能

  • 最新のトレンドや技術情報の獲得

  • 客観的な視点での課題分析

デメリット:

  • コストが高くなる可能性

  • 社内へのノウハウ蓄積が難しい

実際、多くの企業がこの方法を採用しており、ある調査では53%の企業が外部パートナーを活用していると回答しています。

2. DX人材を育成する

長期的な視点では、社内でDX人材を育成することが重要です。

具体的なアプローチ:

  • 体系的な研修プログラムの実施

  • OJTを通じた実践的なスキル習得

  • 外部セミナーや勉強会への参加支援

  • 社内デジタル人材認定制度の導入

ダイキン工業の例では、「ダイキン情報技術大学(DICT)」を設立し、2023年度末までに1,500人のDX人材育成を目指しています。

3. DX人材を採用する

即戦力となるDX人材の採用も有効な手段です。

ポイント:

  • 明確な求人要件の設定

  • 競争力のある待遇の提示

  • 柔軟な働き方の提供(リモートワークなど)

  • DX推進に適した職場環境のアピール

ただし、DX人材の獲得競争は激しいため、自社の魅力を最大限にアピールする必要があります。

まとめ

DX人材不足は日本企業にとって喫緊の課題です。しかし、適切な戦略と具体的なアクションプランを実行することで、この課題を乗り越えることは可能です。

重要なポイント:

  1. 明確なDX戦略と必要な人材像の設定

  2. 多角的なアプローチ(育成・採用・外部活用)

  3. 継続的な学習と評価の仕組み作り

  4. DXを推進しやすい組織文化の醸成

DX推進は一朝一夕には実現できません。

しかし、今すぐにアクションを起こすことで、2030年に向けて競争力のある組織づくりが可能となります。経営層のコミットメントのもと、全社一丸となってDX人材の確保と育成に取り組むことが、今後の企業成長の鍵となるでしょう。


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