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ルッジェロ・デオダート監督の映画「食人族」レビュー「白人によって無知蒙昧な蛮族扱いされ徹底的に誇りを踏みにじられた土人の猛反撃を刮目して見よ!」

人類が月に行く時代となっても地球にはまだまだ未知の領域がある。
例えばそのひとつがアマゾンのジャングルの奥地に住むと言う
食人族の生態である…。
…といったTVリポーターの解説から本作品は始まる。
その「緑の地獄」は文明を拒み
過去2回に渡ってフランスの探検隊を行方不明にしており,
この度ベトナムやアフリカの記録写真で知られたアラン・イェーツ,
アランの恋人のフェイ・ダニエルズ,カメラマンのジャック・アンダース,
マーク・トマソの4人の米国のジャーナリストが
「緑の地獄」に挑もうと言うのである。

だが「緑の地獄」へと向かった4人の消息が途絶えてから数か月が経過し
業を煮やしたスポンサーのパンアメリカ放送は
ニューヨーク大学の人類学者ハロルド・モンロー教授に依頼し,
彼を団長とする捜索隊を編成し「緑の地獄」へと向かうのであった…。

本作はアラン達が「緑の地獄」へと旅立ってから
消息を絶つまでを描く序章,
「緑の地獄」へとモンロー教授を団長とする捜索隊が
食人族の様々な奇異な風習に戸惑いながら
彼等とコミュニケーションを取ることに成功し
先に「緑の地獄」へと旅立った4人の白骨死体と遺留品と
彼等が残したフィルムを発見する第1部,
そして問題のフィルムの内容が開示される第2部によって構成される。

フィルムの内容はテレビ放映される予定となっていたが
先にフィルムの内容を確認したモンロー教授はテレビ放映に難色を示す。
TV局重役「教授。大衆は真実を知りたがっているのです。開示を。」
モンロー教授「貴方が安易にフィルムの内容の開示を求めるのは」
「貴方がこのフイルムの内容を御覧になってないからです」
「どうしてもと仰られるのなら事前に重役を集めて上映会を開きましょう」

そしてモンロー教授とTV局の重役連中を集めての上映会が開催される。
そこにはアラン達4人の所業が「食人族」と蔑まれた土人達の怒りを買い
4人が土人達に討ち果たされて行く模様が克明に記録されていた。

4人は「ヤラセ」を得意技とし
「悲嘆に暮れる土人の表情」と撮る為に
彼等を家に押し込めた状態で家に火を放ち彼等を焼いていた。
土人の生娘を面白半分に輪姦していた。

彼等は白人に純潔を奪われた少女を自らの手で殺め
口から木の棒を突っ込み体内を貫通させ
百舌の早贄の如く少女の亡骸を晒し物にする。

「早贄」を目撃したアランはこう呟く。

未開の土人には…純潔を重んじる心も…誇りを踏み付けにされたら
激昂する心も無いと思ったかいアラン…。
相手がオマエと同じ人間だったとは思いもしなかったかい…?

ソレにオマエ等は未だ気付いていない様だが
「早贄」を目立つ位置に晒したってコトは
「次はオマエ達を裁いてやる」って言ってるんだよアラン…。

フィルムの後半はアラン達が絶望的な抗戦をする模様が描かれている。

つい忘れがちになるけど僕達は「名誉白人」なんかではなく,
魚の生肉を食う土人の端くれであり
自宅に土足で入ってきた挙句乱暴狼藉を繰り返す白人を
「殺して償わせる」本作に僕は終始土人側に立って快哉を挙げてたよ。

モンロー教授主催の上映会を終えたTV局の重役のひとりが
「フィルムを焼き捨てろ」
と吐き捨てて退室する。
それこそがモンロー教授が「聞きたかった言葉」なんだ。
TV局を後にしたモンロー教授はパイプ草に火を付けながら
「一体野蛮人はどっちだよ」
と吐き捨てて映画は閉じる。

本作を観た白人は
「本作は作中可愛そうな亀を殺す残酷な映画」
とレッテルを貼った。

「白人の所業に土人が猛反撃して撃滅する」
って本質から目を逸らし「亀が可哀想」と
問題を矮小化し作品の値打ちをも矮小化しようと目論んだのだ。

「亀を殺して捌く」のは食う為であり
「魚を捌く」のと何ら変わりはない。
「料理してる」だけである。
残酷だと言うのなら霞を食って生きればいいのである。

「本作が描こうとした事」がどれ程白人に衝撃を与えたか
ソレは白人が「亀が可哀想」キャンペーンを展開して
本作の存在を抹消しようとしているコトからも明らかなのである。

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