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ルチオ・フルチの映画「恐怖!黒猫」ブルーレイレビュー「猫ちゃんも人間も目力を発揮します!」

英国の小村で連続する謎の事故死。
だが本当に「事故」なのだろうか…。
警察に依頼されて検視を手伝う女性カメラマンのジル(ミムジー・ファーマー)は,
遺体の手の甲に引っ掻き傷を発見し,
以前この村で知り合った霊媒師マイルズ(パトリック・マギー)の黒い飼猫を思い出す。
彼は死後の世界を信じ死者の声の録音を試み,
村民から偏屈な変わり者の老人として忌み嫌われているのだ。
彼が猫を使って事故死に見せかけて殺人を実行しているのでは…。
彼女は彼の屋敷に侵入し真相究明に乗り出すのであった…。

初見だが原作小説がエドガー・アラン・ポー(僕は赤死病の仮面が好き!)の黒猫で,
予告の可愛い猫ちゃんの動画と,
ポール・モーリアのバッタモンみたいなピノ・ドナッジオの音楽に惹かれて購入。
フルチ監督はポーの原作小説に大胆な脚色を加えつつも,原作にある
「空洞を煉瓦で塗り固めた壁の向こうから猫の鳴き声がする」
描写を巧みに生かしている。
また全盛期の監督の演出が冴え,老若男女&猫ちゃんの目力を,これでもか!と堪能出来る。
本作は怪奇&ミステリの中間を行く作りでサスペリアとエクソシストの影響を感じる。
サンゲリアのアル・クライヴァーが純朴な巡査部長役を好演しているが,
何と言っても事件の鍵を握る最高の役者は猫ちゃん。
チャトランの如く5匹体制で難しい役柄を演じ切っている。
猫ちゃん好きも満足の1作ではないだろうか。

エイリアンドロームのブルーレイの音声解説で
「エイリアンドロームを1万5千回観た」
と豪語するファンゴリア誌の元編集長のクリス・アレクサンダーが本作の音声解説を務めるとあっては,
いやでも期待せざるを得ないが,本作に対して熱心さを欠き,
「本来のフルチならこんな演出をしない」とか
「僕はもっとゴア描写が多い映画が好き」とか
「音楽担当がピノ・ドナッジオでなくファビオ・フリッツィだったら良かったのに」とか
「パトリック・マギーが活躍してた頃を知らない」とか
「ミムジー・ファーマーは役者としての輝きが小さい」とか
兎に角評価が辛い上に,しょっちゅう脱線したり黙り込む事が多く,
挙句言い訳が
「今僕が黙ってたのは視聴者の君達と一緒に映画を観てたから」
である。
どうもこの人は自分の好きな映画は延々喋り続けるが,そうでない映画の場合,まるで精彩を欠く様だ。
オタクちゃんとしては本当に自分に正直な鑑的存在と言えるだろうが,もう少し締まって欲しい。

その他の特典について軽く触れると
1.書籍「ルチオ・フルチの映画」の著者ステファン・スロワーが,
ポーの原作小説とフルチの映画について論じた
「ポーからフルチへ:天邪鬼(あまのじゃく)精神」(25分38秒)
こちらの方が音声解説より大分本作について好意的だ。
2.引き続きステファン・スロワーが本作のロケ地を探訪する
「恐怖!黒猫の足跡」(8分26秒)
3.本作でグレイソン夫人役を演じたダグマー・ラッサンダーへのインタビュー
「怯えるダグマー」(20分13秒)
4.劇場予告編(英語版/イタリア語版共に2分57秒)
となっている。

本商品の評価だが作品としては個人的に星4つだが,
音声解説のやる気の無さに大いに失望したので星1つ減じて星3つ評価となる。

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