見出し画像

祝!Amazonでの本円盤単品の取り扱い開始!映画「真夜中の処刑ゲーム」2Kリマスター版ブルーレイレビュー「大理不尽に対しては何が何でも反撃しなければならないのだ。」

警察のストで無法地帯と化したカナダの町でNewOrderなる
貧困層の白人男性の集団がゲイバーを襲撃し
ゲイはこの世に不必要な存在と捲し立てて乱暴狼藉を働く過程で死人を出し
爬虫類の様な頭目(吹替では中田浩二氏が演じてます…怖過ぎるのです)が
店員と客の皆殺しを開始する。
隙をついて,ひとり生き残ったゲイが盲学校のアパートに逃げ込み助けを求め
籠城しながら武装集団と聴覚を頼りに身の回りの日用品を改造して戦う。

筒に釘と銃弾と火薬をありったけ詰めて作る「釘爆弾」は
ナポレオンがヴァンデミエールの反乱で大砲に釘と銃弾を
ありったけ詰めて暴徒に浴びせかけて鎮圧した砲弾が勿体ない時に使う
「由緒正しい」武器なのだ。
アーチェリーの矢の先にも爆薬を仕掛けて射ります。
ランボーの先取りですね。
カーペットには水を含ませ電流を流して踏んだらビリビリ。

でもね。
本作が本当に素晴らしいのは
そういう知略の限りを尽くした戦いじゃないんです。
最後に残った頭目を
たったひとり生き残ったゲイが猛反撃して戦う場面が素晴らしいんです。
何の意味もなくムシケラの様に殺されていった
ゲイ達の「落とし前」は「彼」が付けなきゃいかんのです。

映画評論家の淀川長治さんが本作の大ファンなのは
この件(くだり)で
「これ僕の話!」
と思わず拳を握りしめられたからじゃないかしらと愚考します。
映画の「中の世界」に入り込むには,
この「これ僕の話!」と思う瞬間が絶対に必要なんです。
本作の原題は「反撃」。
大理不尽に対しては何が何でも反撃して
死んで行った仲間達の無念を晴らさなければならんのです。

本作品は淀川さんが仕切る「日曜洋画劇場」で放映しましたから
本商品には吹替も搭載されてます。
津嘉山正種・幸田直子・鈴置洋孝・中田浩二・古川登志夫…超豪華声優陣が
本作のグレードを2段階上げて大輪の花を添えてます。

…仮に貴方が日本語吹替の搭載された
何かの米国映画の円盤を購入されたとしよう。
パッケージを開封して円盤再生装置に円盤をセットすると…。
…恐らくデフォルト(初期設定)は英語音声+字幕であって,
吹替に切り替えたければメニュー画面等で音声設定を
第2候補の日本語(吹替)音声に切り替える必要があるだろう。
だって米国映画なのだから第1候補の音声は英語なのが当たり前。
日本語(吹替)は特典とか付録扱い。
それが普通。
だがな。
ちっとも「当たり前」じゃねえんだよ。

本作品は日本では劇場未公開でTV放映が本邦初公開であり…
つまり多くの日本人にとってTV放映が「初見」なのだ。

勿論そんな映画星の数ほどある。

だがフィールドワークス社はその点を重視した。
つまり多くの日本人にとってTV放映が「初見」であるなら
日本語吹替で初めて本作品に触れられた方が多いと言う事だ。
従って第1音声には最も馴染みの深い
日本語(吹替)音声が据えられるべきであって
円盤再生装置に円盤をセットしたなら
登場人物は日本語で会話しなければならないと
同社は考えたのだ。

つまり!
フィールドワークス社の『思想』がッ!
下らねえ「母国語優先」と言う『仕様』の慣例を引っ繰り返したのだッ!

勿論日本にも映画を母国語+字幕で観たい方はいる。
吹替なんぞに何の思い入れのない方もいる。

だが母国語が常に絶対的に優先されるべきと言う考えに異を唱え
自らの「思想」を優先し「仕様」を覆したフィールドワークス社の所業を
僕は「快挙」と称えたい。
「思想」こそが最も重要であり
「思想」こそが「仕様」の主人であるべきと考えるが故である。

長年大昔の映画の吹替音源を集め…
「吹替」に並々ならぬ思い入れがある
フィールドワークス社でなければ…
決して生まれ得なかった「思想」なのだ。

今回の「真夜中の処刑ゲーム」ブルーレイに付属する
リーフレットの執筆者のおひとりがペンネ一撃氏。
ペンネ一撃氏は「真夜中の処刑ゲーム(DVD)+要塞警察(BD)」の
セット売りに付属するブックレットの執筆者のおひとりでもあり…
ブックレットの執筆内容の「濃さ」も大概だったけど
今回はそのブックレットの内容を一部訂正されてます。

ブックレットでは監督が映画の興行成績が不振だった場合の
「保険」として9分追加撮影して尺を90分以上に
「下駄を履かせて」TV放映に対応したと書かれてたけど…
実際に本作の監督に聴くと…日本の権利を購入した会社からの要請で
「追加撮影の資金は日本側で全額出すから本編を100分程度にしてくれ」
と言われ…
映画の製作後にキャストを再結集させて追加撮影したと言うのである。

勿論日本の2時間枠のTVの洋画劇場で放映するのに尺が必要だからで,
洋画に対して日本でTV放映する為に追加撮影に金を出すとは…
バブル期の日本が…
漫画家の猿渡哲也先生に言わせると
「金満ジャパン」
だった頃のジャパンマネーの力が
こんな所でも発揮されていたのかとペンネ一撃氏は驚かれている。

リーフレットのもうひとりの執筆者はシリンゴ氏。
本作の舞台となるアパートの間取り図を制作されている。
一体…何遍本作を視聴すれば間取りが頭に入るのか…。
ともあれ大変な労作である事は間違いない。

氏は事件の舞台となったカナダのハリフォックスが
過去100年間に3つもの異常な事件を起こしている事を調べ上げられ
ハリフォックスが「呪われた都市」なのではないかと結論されている。
氏の念頭にスティーヴン・キングの
「呪われた町」があったのかは定かではない。

ブルーレイの2Kリマスター画質は美麗であって
コレを観てしまったらDVD画質には戻れない…と言いたいところだが
DVD版は4:3フルフレームであると言う
ブルーレイ版にはない長所がある。
でも心配御無用。
本円盤の特典映像には4:3フルフレーム本編が収録されている。

フィールドワークス社の仕事に抜かりはない。

あのさ。

映画の円盤に付けるべき特典って突き詰めると
「別バージョンの本編丸ごと収録」
に尽きるんじゃないかな。

確かにスタッフ・キャストへのインタビューとか
評論家の論説も悪くないけど
僕は!
「映画を観る」のがスキなのであって
「特典映像を観る」のがスキなワケじゃないんだよね。

このジレンマを解決する唯一無二の方法が
「映画本編そのものが特典であること」
に尽きるんだよね。

ブルーレイ版の第1音声は日本語吹替。
コレは多くの日本人が本作を初めて認識したのは
1988年の日曜洋画劇場に於てであって
「初見」が日本語吹替であるとの配慮の為だ。
この「配慮」はDVD版から引き継がれているのだ。

ひとつ「ビックリした事」を皆さんにお伝えしたい。
DVD版の吹替音源では1か所だけ字幕に変わる箇所があった。
00:58:10-00:58:13のホレーショがチェスターに
「チェスター,奴等は向こう側だ」
と英語音声+字幕で話しかける場面がソレで…
BDでは該当の箇所に
「チェスター」「おおいチェスター」
とホレーショ(津嘉山正種氏)の声が収録されているのだ。

つまり!
BD版には字幕に変わる箇所が一ヵ所も無いのだ。

しかし…当然ながら
「従来(DVD版)の吹替音源は不完全版だったのか?」
との疑問が湧くだろう。

ところが不完全版では無いのだ。

コレは恐らく…
00:48:49頃のホレーショ(津嘉山正種氏)の
「チェスター」「おおいチェスター」
って台詞から引っ張って来て
貼っているのだと思う。

発音のイントネーションが一致してるし
台本には00:58:10-13に台詞はない。
言い換えるなら
作中ホレーショ(津嘉山正種氏)の
同じ台詞が二度登場してるのだ。

コレは…フィールドワークス社の「工夫」だと僕は思ってる。

勿論吹替音源にホンの僅かでも「加工」が加わればソレは別バージョンと
喚くうるさ型の為に特典の4:3フルフレーム版本編ではDVD版と同様に
00:58:10-13のホレーショの台詞は字幕のままとなっている。

つまり!日曜洋画劇場音源が4:3フルフレーム版本編に収録され
字幕に変わる箇所がない完全音源がブルーレイ版に収録されているのだ。

吹替音源に複数のバージョンがあるなら全て余す所無く収録する。
まことフィールドワークス社の仕事に抜かりは無いのだ。

本来この円盤はフィールドワークス社オフィシャルサイトの
専売だったのだけど…
この度晴れてAmazonでも取り扱うコトとなりました!
フィールドワークス社もAmazonも
「定価売り」は変わらないのだけど
Amazonには
1.Amazonの方が超有名!
2.Amazonで頼むと早く届く!
という…フィールドワークス社オフィシャルサイトに勝る
ふたつ大きなアドバンテージがあるワケですよ。

ま…ソレを記念して過去のレビューに加筆して
はっちゃけレビューを書いたってワケ!

たかが映画の円盤1枚が税込6,930円と…値段はちょっとアレだけど…
好き者のハートを揺さぶる仕様になってると思いますっ!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?