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皐月臨さんの一次創作同人誌「HerBody」第1レビュー「皐月臨王道を征く」

今年(2024年)の6月に同人作家の皐月臨さんは「her body i」という一次創作同人誌をSNS上で公開され…僕は下記の如きレビューを書いた…

要約すると…
・女(her)はその肉体(body)で男を惑わし破滅させる魔女である。
・魔女が聖女の仮面を被ってる所がイヤラシイ。

本日(2024年11月17日)に有明・東京ビッグサイトで
一次創作同人誌専門の即売会「コミティア」に
皐月さんが個人でサークル参加され…
全世界待望の「her body i」をを包含した「完全版」が出ると聞き…
大御心畏れ多し…皐月さんにおかれましては…

「コミティアに来られない方には」
「後ほど通信販売しますから安心して下さい」

とのお言葉を下賜されたが…
今日…東京ビッグサイトに行けば買って読めるものを…
通販されるのを1週間とか2週間ステイしろとか…
そんな真似オタクに出来るワケないじゃん…

僕は…い・ま・読みたいのである…。
地球上で「HerBody」が売ってるのが
ビッグサイトしかないと言うのなら…
例えビッグサイトが
地の果てにあろうと天竺にあろうとイスカンダルにあろうと
行くのがオタクでしょ…?

僅か60頁程度の所謂「薄い本」1冊買うのが…
オタクにとっては命を賭けるに値する行為なのだ。

オタクの…たったひとりの主は「欲求」であり…
「欲求」以外の…「分別」等を主にいただくコトなど断じてないのだ。

…この辺の「東京ビッグサイト遠征記」は別途投稿し…
本稿では「HerBody」に新作部分についてレビューを書きたいのだ…。

帰りのバスで「HerBody」の新作部分を拝読すると…
例によって例の如く梶原一騎先生の「男の条件」の…
「漫画家5大条件」のひとつがアタマの中に思い浮かぶ…

「かりそめにも花の人気を追うなかれ」
「花と嵐なら必ず嵐を選ぶべし」

「男の条件」を読んで漫画家を志したと言う…
荒木飛呂彦先生は…岸辺露伴先生にこう言わせている…

「漫画家がカネやチヤホヤされる為に漫画を描いてると思ってるのかーッ」

露伴先生は「読んで貰う為に」漫画を描いていると仰られてるが…
「読んで貰う為」なら何でもする訳ではない…
「読んで貰う為なら何でもする」と言うのが…
『何でもする』コトによって目的が
『読んで貰う』から『チヤホヤされる』に堕すると解釈したのが
荒木先生が「花の人気を追うなかれ」を翻訳・咀嚼した結果なのだ。

あのね。

皐月さんは「HerBody」の新作部分で…
「エロ」を禁じ手にしたんです…
「エロ」を禁じ手にして…
少年漫画誌に載せても遜色ない内容を目指された…

皐月さん…アナタは…
「エロ」を禁じ手にして…
少年漫画の文法で…「魔を以て魔を制す」…
王道の妖怪退治漫画に大きく舵を切られましたね…?

「エロ」という…
「花の人気を追う」のを止めて…
列強ひしめく「王道の大嵐」の中に
飛び込もうとされてますね…?

「うしおととら」や「ヘルシング」に…
挑戦状を叩きつける気概十分ですね…?

「食いしんぼシスターさん」から「妖艶」が無くなり…
その代わりに「毅然」が設定され…

海綿体の充血の代わりに
体内の血液が沸騰する「熱血」が設定されている…

「食いしんぼシスターさん」は名探偵でもあり…
「謎は!全て!解けたッ!」
って見切りを披露されている…

「彼女の体」(her body)がッ!
魑魅魍魎と戦う為の武器となっているッ!

物語の屋台骨が根本的に見直され…
「『エロ』に頼らない家造り」が…
皐月建設の社是になっているッ!

本作を読んでて感じるのは
読み切りの「うしおととら」的な…
コレで連載獲ってやる!
って気概である…。

つまり…本作品は新連載を賭けた
パイロット版の体裁で描かれているのだ。

もうね…
「やってみなはれ」
としか言うべき言葉は無い。

僕はコミティア会場で
皐月臨さん御本人と初めて対面したよ。

こざっぱりして清潔感があって
髪をうしろで縛って…

あのね。

僕にとって皐月さんは…「因果」の様に思える…。
皐月さんの…「何か」を一途に信ずる…
若しくは一途に信ずる「何か」を探し求める求道者的佇まいは…
「僕の母親」に似ていて…
僕の母親は一途過ぎて非常にしばしばカルト宗教にハマる危うさがあり…
皐月さんの一途さが若しも素直に伸びなかった場合…
「僕の母親」と同じ道を辿るかも知れん…
僕が母親から逃げても…「因果」は執拗に追って来て…
あの日あの時と同じ「地獄」を僕に見せようと目論んでいるのである。

皐月さんの「何か」をひたむきに信ずる心の強さが…
そのまま「食いしんぼシスター」さんの…
「何か」をひたむきに信ずる心の強さに投影されているのだ…。

閑話休題

本書にひとつ苦言を呈するなら…
「サイコ」でヒッチコックが…
「ノーマン・ベイツには同居している母親がいる」
と観客を欺き続けた様に…
「マルクには双子の女のきょうだいがいる」
と読者を欺き続けて欲しい…。

皐月さんは…ヒッチコックに比べて…
「ウソを吐き通せない」
という…「善性」を持つが故の作劇の甘さがある…。

その「甘さ」故に…
「サイコ」にオマージュを捧げた
あのクライマックスが…
読者への訴求力に欠けるのです…。

作家が…
「平気でウソが吐けない」のは…
創作の妨げでしょう…?

皐月さんが「王道を征く」意気や良しですが…
「正々堂々」と「バカ正直」は違いますよね…
前者が「勝ちに行ってる」のに対し
後者は「勝つよりも大切なコトがある」と言っていて
「王道を征く」のは正直者のママでは難しいと思うのです…。

群雄割拠する「王道の大嵐」の中に飛び込んで行くんでしょう…?
勝ちに行かなきゃ足元掬われますよね…。





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