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映画『ジョン・カーペンターの「要塞警察」』レビュー「作家から矜持だの「欲得ずく」だのが消失する瞬間。」

ストリートギャングが大量検挙の報復に移転寸前の警察署を包囲し
動くもの皆サイレンサーで無音射殺する。
留守居の警部補は獄中の凶悪犯を釈放し生き残る為,協力を依頼する。
アイスを買いに来た少女がギャングに射殺される場面で魂鷲掴み。

漫画家のあさりよしとお氏は「宇宙家族カールビンソン」の中で
ズバリ「要塞警察」なるエピソードでアイスを買いに来たコロナが
近所の悪ガキに銀玉鉄砲で「射殺」される模様を描いて
本作に最大の敬意を払った。

作家の菊地秀行氏は本作をTV吹替(本邦初公開)で観て感激し,
同監督の「ハロウィン」を京成線の青砥まで観に行き,
キネマ旬報の読者投稿欄に本作の感想を送る入れ込み様で,
本作を
「人間から言葉,弾丸から閃光と銃声という本源性を喪失させただけで,
とてつもない恐怖を盛り上げた実験作だった」
と大絶賛。
キネマ旬報は菊地氏のこの原稿を没にしたが
「本当に言いたい事」がある場合,
自分が作家である矜持だの原稿料だのが全て消し飛んで
「俺はどうしてもこれが書きたいんだッ」
って創作者の本能だけが残るのだ。

少女がギャングに撃たれて死ぬ場面を全米映画協会(MPAA)が問題視し
カットする様要請されたカーペンター監督は配給先に相談すると
「問題の場面をカットしてMPAAに見せて映画公開の際に繋げ」
と言われ,その通りにしたという。
この場面は『絶対に』必要なのだッ!

「要塞警察」のファンの集いで
カーペンター監督は2つの映画の影響を受けたと語る。
ひとつは「リオ・ブラボー」。
(ビショップ警部補が凶悪犯ナポレオン・ウィルソンにライフルを投げ渡し
ナポレオンが振り向き様に撃つ場面ですね。)
もうひとつはロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」。
「ナイト~」は低予算で映画を作る監督なら全員影響受けてるよと語る。「ナイト~」は低予算で映画を作る教科書なのだ。

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