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クローネンバーグ監督の映画「シーバース」の廉価版ブルーレイレビュー「画質は最高!クローネンバーグ監督とクリス・アレクサンダーの音声解説は輪をかけて最高!」

初めに書いておくが,
本レビューは「シーバース」の廉価版ブルーレイに関するものである。
高層マンション,テニス場,ゴルフ場,診療所,スーパーマーケット,ランドリー等々から構成される,
近未来施設スターライナー島でホブス医師が
娘アナベルを昏倒させ生きたまま腹をメスで切開し死に至らしめ,
自身もメスで頸動脈を切って自殺する事件が発生する。
ホブスは内臓の機能を寄生虫に代行させる研究を行っていると
思われていたが調査の結果,人間が脳で考え過ぎ,
野生の感覚を失っている事を憂いた彼は,
人の暴力性や性衝動といった本能を高める寄生虫の研究を行っていて
娘を寄生虫の宿主にしていたと言うのである。
寄生虫はキスや性交渉で感染し,アナベルは寄生虫の作用で好色となり
スターライナーに住む複数の男性と関係を持っていて,
収拾がつかなくなったホブスは
娘から寄生虫を取り除こうとして死に至らしめたのだ。
彼女は死んだが,時既に遅く,彼女と関係のあった男達のひとりが
新たな宿主となり次々と女を襲い,
今やスターライナー全体に
未曾有のバイオハザードが広まろうとしていた…。

ドイツのファンのコンベンションで
人間の体内に寄生する寄生虫という設定を知ったファンのひとりが
「『エイリアン』の(チェストバスターの)パクリではないか」
と監督に詰め寄ったと言う。
冷静に考えれば分かるが「シーバース」(1975)の方が
「エイリアン」(1979)より4年も早く製作されている。
監督の説明を聞いたドイツのファンは
「どっちがどっちをパクったかハッキリした様ですね」
と悪びれもせず笑ったと言う。
音声解説の中で
「状況証拠しか無いがダン・オバノンは僕のアイディアを盗んだんだ」
と監督は語る。

また音声解説の中で本作がロメロ監督の
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の「性欲版」と
揶揄される点については
「僕は(寄生虫による)人間の解放を描いてるんだ『ナイト~』とは違う」
と言っておきながら終盤ルーク医師が感染者に囲まれる場面では
「まあね,ココの『絵』の構成は『ナイト~』の影響があるかもね」
とお茶目な一面を披露している。

音声解説のひとつは商品説明では
「デヴィッド・クローネンバーグ監督の音声解説」
と書いてあって,
確かに間違いではないのだけれど,
聞き手がクローネンバーグ監督と同じカナダ出身で
「シーバース」の大ファンで
「ファンゴリア」誌の編集長を務めた経験のある
「『エイリアンドローム』が好き過ぎて1万5千回観た男」
クリス・アレクサンダーとは何処にも書かれてない。
この人は好きな映画の音声解説が博覧強記・立て板に水の
素晴らしい内容となる名物男なのだ。
この事実を知ってたら廉価版の発売を待たずに最終盤を発売日に買ってたよ!
本当にキングレコードは商売が下手!
「僕達のクリス」の
博覧強記に物を言わせた流れる様な司会進行が実に素晴らしく

「『エイリアン』は『シーバース』のパクリですよねえ?」とか
「『シーバース』が性欲版『ナイト~』と
呼ばれている事をどう思いますか?」とか
クローネンバーグファンが
「是非とも聴きたい事」
を細大漏らさず聴いてくれるので嬉しくなる。

映画監督とかの「その道のプロ」は
インタビュアーが付け焼き刃の知識で聴いているのか,
それとも自分の監督作品を熟知してるか一瞬で見抜いて,
前者だと「ああそうですね」としか言わなくなる特徴があって,
僕達のクリスが

「『シーバース』でジョー・シルヴァーが
研究資金集めの大変さを語る場面は
『ザ・フライ』でジェフ・ゴールドブラムが
研究資金集めの大変さを語る場面に影響を与えてますよね?」

って聴くと監督の声質がガラッと変わって
「オヌシ(=僕達のクリス)中々出来るな?」
って声質になって,態度が大幅に軟化して

「『シーバース』の脚本上の名前は
君の言う通り『吸血寄生虫の乱交』だけど,この名前ダサいよね」とか
「『シーバース』で寄生虫はピアノ線で引っ張ってるけど
僕はジョージ・ルーカスみたいに後年の技術で消す様なズルはしない」とか

もうね専門家の「心の扉」を開いて態度を軟化させて話を引き出す天才なの!
兎に角,廉価版も出た事だし音声解説というか
インタビューの鑑と言える内容なので皆も是非聴いてみて欲しい!

画質は最高で音声解説は100点満点で200点の出来なので
星が5つしか付けられないのが残念なくらい!
イチオシです!

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