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ヴァーツラフ・マルホウル監督の映画「異端の鳥」レビュー「本作は少しも難解じゃありません…『子供も共同体で労働に従事させよ』『やられたらやり返せ』『人の苦悩に寄り添う思い遣りを持て』って当たり前を実地で学んで行く話なんです…」

戦災孤児の少年が行く先々で迫害され辛いと思う向きもあるかも知れないが,彼が行く先々の共同体に当初属さず排斥される問題は,
共同体内部で労働に従事し,共同体の一員となれば自ずと解決する。

僕が子供の頃観ていた名作アニメは
「子供も労働力の1人」と描いていて本作の理解の助けとなった。

だが彼が養父に日常的に犯され,
(少年に親切な)司祭にバラしたら殺すと逆さ吊りにされ恫喝され,
彼が布団の中でメソメソ泣いたままで終わらず,
養父を明確な殺意を以て命を奪って
意趣返しするくだりで本作は名作アニメの限界を超えた。

彼は路傍で自分よりも力の弱い老人を襲い
衣服と所持品を強奪する事を覚える。
こんなコト名作アニメでは絶対教えてくれない。

ロシア軍の兵士が憎い相手を銃殺し
「目には目をだ小僧」と彼を諭す場面がある。
だが大人から教わる迄も無く
彼は生き延びる為の鉄則を…
「狡(ズル)さ」を既に学び取っていたのだ。

長い旅を経て彼は探していた父と再会する。
だが最早彼は父が知っている純真無垢な幼子ではない。
苦い苦い再会。

しかし彼は父の腕に刻印された「管理番号」を見て
自分を捨てた父を赦し寄り添います。
「可愛い子に旅をさせた」結果…
彼は「目には目を」…「やられたらやり返せ」を学ぶと同時に
自分を捨てた父を赦し…父に寄り添う気持ちを学んだのだ。
コレが「成長」なんですよ…「大人になる」ってコトですよ…。
「世知」が彼を大人にしたんです…

「ウチの子一等賞」と…何もしてない子供に花丸与える親には…
この…「子供の成長」って概念を…未来永劫理解出来ないでしょうね…。

本作は…ウルトラ過酷な「父をたずねて三千里」であり…
「母をたずねて三千里」の母と子の感動的な再会とは
「感動」の種類が大分異なるが
名作アニメを観て感動して
「次」を求める青少年にこそ観て欲しい一作だ。

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