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マリオ・バーヴァ監督の「モデル連続殺人!」レビュー「画質も発色も音声解説も特典も勿論本編も大満足の出来!超幸せ!」

ファッション業界の名門で,ある夜モデルのイザベラが
黒づくめで覆面をした何者かに惨殺される。
彼女は性根が相当悪く,人の弱みを握っては,
ユスリタカリを繰り返す札付きで,複数の人間から恨みを買っていた。
彼女の死後,モデル仲間のニコルは偶然彼女の日記を発見し,
皆の前ではしゃいで一部読んでしまう。
顔色が変わるモデル仲間達。
イザベラの日記には彼女達にとっても真犯人にとっても都合が悪い
ユスリタカリのネタが赤裸々に綴られている可能性があるのだ。
ニコルは,その夜何者かに惨殺されるものの,
日記は既に他の誰かに盗まれていた。
日記の行方を巡り争奪戦が発生し,
モデルが次々と惨殺され始めるのであった…。

初見。画像がピッカピカの新品同様で発色も最高!
アルジェント監督に多大な影響を与えた作品と聞き及び,
廉価版が出るのを待ち侘びていた作品である。
アルジェントと違い,超常現象やオカルトに頼らない
本格ジャッロを堪能した。
それでもね。
原色の照明や時折真犯人目線となるカメラワーク,
恐怖に震える,うら若き女性に対する激しい暴力性に
確かにアルジェントの源流のひとつを感じ大満足である。
容疑者達が警察に拘留中で鉄壁のアリバイがあり,
警察が匙を投げる場面にビックリ。
本当に警察が手を引き,その後全く登場しなくなるのである。
勿論このアリバイにはトリックがあるのだが
非現実的ではなく,納得出来るもの。
警察が手を引くとアルジェント作品の様に素人探偵も登場せず,
謎は真犯人が解いてくれる親切な(?)構成。
結末は勿論秘密だが完全犯罪を目指した真犯人の意図が,
どう破綻するかが見物。

音声解説は映画史研究家のティム・ルーカスによるもので,
俳優&女優のフィルモグラフィ,監督の撮影意図,
登場人物の行動の意図を事細かに解説してくれ,
音声解説を聴く前は本作の知識がゼロでも
本作を観終わる頃は誰でも本作の卒論が書ける事を保証する。
それに彼は低音が腹に響く美声の持ち主で一瞬も眠たくならなかった。
これですよ。博覧強記で微塵も退屈させない,これが音声解説ですよ!

特典映像
1.心理分析:「モデル連続殺人!」とマリオ・バーヴァとジャッロ(55分08秒)
2014年12月本作の復刻版がクールマイヨールノワール映画祭で上映され,
作家や映画製作者がジャッロを語る機会を作った。
本特典映像では映画史家ロベルト・クルティ,
脚本家エルネスト・ガスタルディ,作家カルロ・ルカレッリ,
脚本家スティーブ・カーサ,映画監督ダリオ・アルジェント(!)等が
本作を観て自由自在にジャッロについて意見を述べて行く。
2.エレーヌ・カッテでブルーノ・フォルツァ―二の解説(10分36秒)
両氏は映画「煽情(2009)」「内なる迷宮(2013)」の監督&脚本家である。
現在第一線で映画制作を行う立場からジャッロについて意見を述べている。
3.性別とジャッロ(38分01秒)
性別=ジェンダーの立場からジャッロを主人公が男のM(male)ジャッロ,
主人公が女のF(female)ジャッロに大別し,それぞれの特徴を論じている。
下敷きにする映画に
アルジェントの「歓びの毒牙」が多用されていて嬉しいが,
思いっ切りネタバレなので本作,「歓びの毒牙」「サスペリアPART2」
「知りすぎた少女」「フルチの幻想殺人」等々が未見の方は要注意!
4.殺人事件とバーヴァ(11分22秒)
アルジェントの「インフェルノ」撮影時のこぼれ話を、
アルジェント自身,映画監督のランベルト・バーヴァ,
脚本家のスティーブ・カーサが順に語って行く構成。
「インフェルノ」には
晩年のマリオ・バーヴァが特殊効果で参加しているのだ。
5.予告編(3分25秒)
イタリア語の予告編が収録されている。

映画内容も音声解説も特典映像も力の入った納得の出来。
自信を持って5つ星評価する次第である。

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