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ダリオ・アルジェント監督の映画「サスペリアPART2」レビュー「アルジェントが残した…『小さな小さな手掛かり』に…是非皆さんにも『やられた!』と地団太踏んでいただきたいのです…。」

イタリア・ローマで開催された超心理学会の講演で
比類なきテレパシストの能力を発揮して見せた
ヘルガ・ウルマン(マーシャ・メリル)女史は
会場に潜む「恐るべき殺人鬼の思念」を探知し
その「誰か」に向かって警告を発する。

「ワタシはオマエの所業も魂胆も知ってるぞ」と。

その夜彼女は自室に押し入って来た何者かに惨殺され,
英国人のピアニスト・マーク(デヴィッド・ヘミングス)が
事件の目撃者となる。

マークの心中に「引っ掛かる事」がある。
ヘルガの悲鳴を聞いて彼女の部屋に駆け付けたときには
確かにあった筈の絵が,警察の捜査の段階では無くなっている。
「消えた絵」が今回の事件の鍵を握ってるのかも知れないが
ヘルガの部屋に至る回廊には数多くの不気味な絵が飾られており
ソレが「どんな絵」だったかがどうしても思い出せない…。

マークは美貌聡明の新聞記者・ジャンナ(ダリア・ニコロディ)と組んで
事件の真相を追うが常に真犯人に先手を打たれてしまう。

「ソレ」は一体何故なのか…。

マークが今後の行動指針を明かしているのはジャンナだけなのだ…。

「サスペリアPART2」の作品について語る前に
課税の如く「答えなければならない問い」に答えておこう。
「サスペリアPART2」は「サスペリア」の続編でも何でもありません。
コレは…「サスペリア」の大ヒットに気を良くした日本の東宝東和が
「PROFONDO ROSSO(深紅)」という「サスペリア(SUSPIRIA)」より
前に作られたジャッロ映画に勝手につけた勝手な邦題のせいです。
従って「サスペリア」を観てなくても
「サスペリアPART2」を観るのに何ら支障はありません。
何故なら「サスペリア」と「サスペリアPART2」との関連は…
「監督が同じダリオ・アルジェントである」コトだけだからです。

さあて。
やっと納税が終わったので「サスペリアPART2」の話をしましょうか。

本作を視聴していて気にかかるのは恐らく…
1.ジャンナが犯人なのか?
2.それとも「別の誰か」が犯人なのか?
と言う問いかけだろうと思います。

ジャンナが犯人ならマークの行く先々に先回り出来てもおかしくない…。
逆にジャンナが犯人でないなら…
何故犯人はマークの行く先々に先回り出来るのか…。
やっぱりジャンナが怪しい…。

本作品冒頭の超心理学会でジョルダーニ教授は次の様に講演します。

生き物には自分の身に迫った危機を察知する能力があり…
人間にも本来その能力はあるのだが…
大抵「言葉」と引き換えにその能力を失ってしまう…
だが稀にその能力を失わずに成人する人間がいる…
それが比類なきテレパシストのヘルガ・ウルマン女史なのです…。

もしかして真犯人にも…ヘルガと同じ様に自分の身に迫る危機を
察知する能力が失われずに残っているのかも知れない…。
マークの行動が…自分の身に危機的状況を引き起こすコトを察知した
犯人は…その危機的状況を潰す為に殺人を繰り返してるのかも知れない…。

有体に言って…仮に犯人がエスパー魔美だとしたら…
どうやって凶行を防げばいいのか…。

「何もしない」のは悪手です…。
何故なら犯人は1度マークの家に侵入し…
彼を殺そうとしてるからで…
この脅威は…犯人を捕らえるか…マークが死ぬまで続くのです…。

犯人はコレからヒトを殺しに行くとき…
化粧して気合いゲージを満タンにする癖があり…
血走った眼の大写しとアイシャドウを塗る模様が描かれてます…。

ですが…本作品にはアイシャドウを塗っている人物が
ジャンナを含めて複数いて…その中には男も含まれるので
犯人が「女」とは限らない…。

マーク「どうして犯人は…僕の先回りが出来る!?」
「ともかくコレから僕は…今後何をするのか誰にも話さないぞ…」
ジャンナ「こーんなコトってあるぅ?」
「アナタ…ワ・タ・シを疑ってるんだ?」

僕は…アルジェントに心を読まれ…掌の上で転がされている…ッ!

ジャンナがあくまでも魅力的な女性として…
マークの素晴らしいバディとして描かれ…
マークが彼女に心を許し…
ふたりは同衾する程懇意となるのですが…
ソレは…「同床異夢」の典型であって…
マークの隣に寝ているオンナは…
「キチガイの人殺し」なのかも知れない…。

マークとジャンナの蜜月を壊さないでくれッ!
真相は追究したいが…コレ以上追究したくないッ!

このッ…狂おしいまでのジレンマ…ッ!

この「ジャンナに対する疑念」こそが本作のキモであって…
後半彼女が腹部を短剣で刺された状態で発見されても…
「ジャンナは死んでない…」
「犯人は必ず殺そうとした相手を仕留めて来たのに…」
「『仕掛けて仕損じ無し』だったのに…」
「コレは…ミエミエの偽装工作なのでは…」
と「ジャンナに対する疑念」がますます強まるのだ…

本作品にはヘルガの部屋に至る回廊にあった筈の
「絵」が消えていると言う…
重大な伏線があり…この「消えた絵の謎」が…
「真犯人へと至る道」として設定されているのだ。

最後に「消えた絵の謎」が解かれ…
真犯人の正体も明らかとなるのだが…
この謎は…初見では非常に解くのが難しい…。
従って初見の際は…映画を観終わると
必ずもう一度見直す羽目となるだろう…。

アルジェントが残した…「小さな小さな手掛かり」に…
是非皆さんにも「やられた!」と地団太踏んでいただきたいのです…。

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