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映画「エンブリヨ」レビュー「親の因果が子に報い」。

未熟児の成長を促進させるホルモンの研究開発に励む
ポール(ロック・ハドソン)は犬を実験台して成功を収めた。
気をよくした彼は一足飛びに人体実験を試みるため
友人の産婦人科医に根回しをする。
ある日,産婦人科医より連絡が入り自殺未遂の妊婦がいて
母親は助かる見込みはないが胎児には影響がないというのだ。
彼はその胎児を自ら開発した人工子宮に入れ
自ら開発した成長ホルモンを投与する。
胎児はみるみる成長し4週間後には美しい女性となった。
彼は彼女をビクトリア(バーバラ・カレラ)と名付けた。
彼女は急速な勢いで知能が発達するが何故か道徳心を一切持たない。
彼と愛を交わした彼女は自分が急速に老いつつあることを知る。
今や彼を凌駕する知能を持った彼女は老いの進行を抑える方法を研究する。
その結果,老いの進行を抑えるには
出産前の胎児の脳下垂体液が必要であることを知った。
道徳心を一切持たない彼女は妊婦に目を向けるのであった…。

本作品のラルフ・ネルソン監督はSF作家ダニエル・キイスの
「アルジャーノンに花束を」を69年に映画化している。
ちなみに邦題は「まごころを君に」といい
エヴァファンの僕としては苦笑いする他はない。
ともあれ本作品は「まごころを君に」を強く意識した内容であるが
「まごころを君に」には確かに存在した「詩情」が欠落しており、
その結果が道徳心を一切持たない
ビクトリアという「怪物」を生んでしまったように思える。
「心のない人間」は「怪物」となるという結論は
映画「フランケンシュタイン」(38年)が
本作品(77年)の39年前に既に証明済なのだ。

だがな。

本作品における「心のない人間」とはビクトリアではなくポールのことで
「娘」に「心がない」のは「父親」の因果の報いなのだ。

本作品の非常に後味の悪いオチは
僕の「黒い心」を持ってしても辟易せざるを得ない。
この話で一番悪いのは勿論「中身」は赤ん坊,「ガワ」だけ大人の
娘・ビクトリアに手を出した父・ポールなのだが
彼は一切「天罰」の類を受けないのが
最大の後味の悪さを生んでいる事は言うまでもない。
コイツはきっと「次は上手くやる」くらいにしか思ってないのだから。

つまり!この映画はサイテーだと言いたいのである。

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