映画「吸血ゾンビ」レビュー「後の「サンゲリア」の影響を感じさせます!」
ロンドン大学医学部のフォーブス教授宛に
コーンウォールの寂れた村で医師となった一番弟子のピーターからの便りが届く。
その便りによると,村で奇病が蔓延し,そに奇病に罹患すると疲労困憊してみるみるやつれ,死に至ると言う。
遺体を解剖して詳細に原因を調査しようとしても村民は因習に囚われ頑として,これに応じない。
今でも村民は村一番の大地主であるハミルトンの言葉のみに従い,彼こそが唯一の法であり掟なのだ。
教授は娘のシルヴィアを同行させ件の村に向かう。
ピーターの妻アリスとシルヴァアは友人関係にあるのだ。
アリスの顔を一目見た教授とシルヴィアは愕然とする。
彼女の顔はやつれ眼の下に隈が出来ていたのだ。
彼女も奇病に罹患したのでは…教授は原因究明の為に,ピーターに墓を暴き,解剖を強行する事を提案する。
だが教授達が,この村に着いたとき埋葬されていた墓を暴くと棺の中は空だった。
早過ぎた埋葬?いや確かに死んでいた。
その死んだ筈の男が立って歩いているのを見たと,
その男の弟であり,その手で兄を埋葬した男が証言するのであった…。
本作は1966年製作でロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の登場は2年後の1968年。
食人鬼としての属性がロメロによって付与される直前のゾンビとはブードゥーの呪いの力で動き,
人間の代わりに単純な重労働に従事する奴隷だった。
だが本作中,墓場で次々と立ち上がり襲って来るゾンビの姿は心底ゾッとして,
ロメロの「ナイト~」よりフルチの「サンゲリア」の大航海時代のスペインの侵略者達の墓場で,
サング(ゾンビ)が次々と立ち上がる場面を連想させる素晴らしいカットで,
ブードゥーの呪いとの関連も見落とせない。
この場面を観た「サンゲリア」のルチオ・フルチ監督…と言うよりも,
共同脚本のダルダーノ・サケッティに何らかの霊感を与えたのではないだろうか。
一方,僕は本作と同時発売された,テレンス・フィッシャー監督の「フランケンシュタイン 死美人の復讐」のブルーレイを先に視聴したのだが,
後者の方が圧倒的に話が頭に入り易く本作の話が中々頭に入らないのが気になった。
黒幕が何をしたいのかが一向に伝わって来ないのだ。
テレンス・フィッシャーと本作の監督のジョン・ギリングの作家性の違いと言ってしまえばそれまでだが
話が頭に入り易い方が感情移入し易いのは確かだ。
音声解説は脚本家でプロデューサーのスティーヴ・ヘイバーマン,
自称映画関係の何でも屋のテッド・ニューサム,
多くのゾンビ映画の脚本や演出を担当したコンスタンティン・ナッサーの3氏によるものだが,
全員自分の言いたい事を好き勝手に言い,オタク特有の早口で,
3人の内のひとりは手紙や参考文献を延々音読して自分で考える事を拒否し,
たまに全員の意見が合うと「皆でAの物真似しようぜ」と盛り上がるも,こっちはAなんて人全然知らず,
また本作の事に殆ど触れてくれず,常に視聴者は置いてきぼり。
たまに本作の話題となると「『吸血ゾンビ』ってロメロの『ナイト~』に影響与えてるよね」だって。
違うだろ!本作はロメロの「ナイト~」よりフルチの「サンゲリア」の方に影響与えてるだろ!…と言った調子で,
1人で音声解説出来る人が3人も居ると皆勝手して,
船頭と同じ様に「船が山に上る」と分かった事が本音声解説を聴いた収穫でしたとさ。
特典映像
1.メイキング・オブ・"吸血ゾンビ"(35分26秒)
出演俳優,スタッフ,評論家等のコメントを編集して,本作が如何にして作られたかを描き出して行く。
所謂「作ってる最中」という意味でのメイキングではないので注意。
2.ワールド・オブ・ハマー「甦る死者たちの章」(24分55秒)
恐らくだが「ワールド・オブ・ハマー」って特典集を章分けして,
本商品には「甦る死者たち」の章のみ収録してるのではないか。
他の章とOP/EDが同じだし,ナレーターも同じオリヴァー・リードなのが,その証拠である。(1990年製作特典)
内容はハマー映画のゾンビ,幽霊,ミイラ,狼男映画の名場面集といった所。
3.本編レストア前後の比較映像(3分36秒)
本編の幾つかのカットでレストア前とレストア後を比較する映像集である(無音)。
4.劇場予告編集(3分36秒)
本作と「凶人ドラキュラ」の予告編集である。
5.フォトギャラリー(7分10秒)
本商品の評価だが
墓場でゾンビが次々と立ち上がる場面は「サンゲリア」を連想させる本当に素晴らしい場面で花丸を進呈する一方で
話は同時発売の「フランケンシュタイン 死美人の復讐」のブルーレイ方が圧倒的に頭に入り易いので星1つ減点。
音声解説が視聴者の方を全く向いておらず本作の解説を殆どしてないので更に星1つ減点し相殺して星4つ評価とする。
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