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映画「チェンジリング」レビュー「おじいちゃん素人探偵が霊魂の力を借りて『取り替え子』の陰謀に挑む!」

作曲家のジョン(ジョージ・C・スコット)は
4ヵ月前に自動車事故で妻と娘を失い
傷心の日々を過ごしていたが
妻子の思い出ある家で暮らす事が辛くなり
思い切って家を出て古い屋敷に転居することにした。

屋敷に転居してしばらくすると
壁を叩く様な奇妙な音が聞こえ
「ヤメテ…オトウサン…ヤメテ」
との子供の声を聴く様になり
浴槽に子供の亡骸の幻覚を見るようになった。

「これは…とんだ問題物件を掴まされたな…」

この屋敷を斡旋した歴史保存協会に抗議すると
19世紀の昔からこの屋敷で問題は起こっていないという。

ジョンは屋敷で交霊会を開き
子供の霊を呼び出すと
自分の名前はジョセフだと言う。
「ジョセフ」は70年前に
この屋敷に住んでいた一家の長男で生まれつき足が悪く,
この屋敷に住んだ後にスイスで療養し足を治して成人し
遺言通り祖父の莫大な遺産を継いで
今は上院議員も務めている…。

つまり「ジョセフ」は今も生きているのだ。
斡旋業者が「19世紀の昔から何も起こってない」と主張するのは
「ジョセフ」が変死したどころか,そもそも死んでないからなのだ。
だったらこの「死んだジョセフ」だと主張する子供の霊とは
一体「何」なのか
一体「誰」なのか…。

ジョンの灰色の脳細胞が活発に働き
「ふたりのジョセフ」の謎を解くべく
新聞社の過去の死亡記事の調査を開始するのであった。

初見。チェンジリング(CHANGELING)とは
「取り替え子」…「子供のすり替え」という意味である。
この…莫大な遺産相続を巡る何者かの陰謀をジョンが
「死んだジョセフ」の助けを借りながら
解明して行く事になる。

「死んだジョセフ」にしたところで
そりゃ本当は自分の力で真相を解明したい。
しかし「死んだ」身の上では何も出来ない上に自分は未だ子供だから
転居してきたジョンにラップ音とか霊媒の口寄せを通じて働きかけ,
彼を使役して真相を究明させようと言うのである。

この凸凹霊界探偵の最大の見せ場は「死んだジョセフ」の導きで
床下を掘り,白骨化した「自分の亡骸」を発見させる件(くだり)だろう。

この話の流れから当然導き出される帰結として
本作には
1.作品冒頭で死んだジョンの奥さんと娘さんは話に全然噛まない。
2.前半はオカルト映画,後半はミステリ映画。
3.前半の話を牽引するのはジョン,後半は「死んだジョセフ」。
等々の特徴がある。
特に項番1は「欠点」と言っても差し支えないと思う。

ジョンはオカルト現象を全く怖がらずラップ音を
「うるっせえなあ」「斡旋業者に抗議してやる」
としか考えておらず
「死んだジョセフ」の事も別に恐れておらず
「話せば分かる」と考えていて
本作の本質がオカルト映画ではなく
ミステリ映画である事の証明となっている。

まあ後半はミステリ映画に完全に舵を切るのでこれでいいのだ。
後半は「黒幕」から捜査を中止するよう圧力がかかる描写があるが
「何となく昨今流行の圧力かけてみました」
って感じでジョンに「身の危険」の切迫感が無いのが残念。

ジョージ・C・スコットは有体に言って「おじいちゃん」であり
アクションもラブシーンも難しい「おじいちゃん」にだって
「推理する」事は出来ると証明しているのだ。

本商品には吹替が搭載されていて映画全体をカバーしていて
字幕に変わる箇所は無い。
特典はゼロなのが流石のキングレコードクオリティである。

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