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VIDEO VIOLENCE RELEASINGブランドのフィル・スティーヴンス監督作品「LUNG(ラング)」レビュー「「古き自分」を殺し続ける男。」

未だ求道者だった頃の,未だ痩せてた頃の,
未だ正気だった頃の麻原彰晃を思わせる芸術家が
モノクロのゴアの森を抜けてモノクロのゴアの街で佇み
「自分だけの表現」を求めて彷徨い続ける。
時折衝動的に白いカンバスに何かしら描き殴るものの到底納得出来ない。
男の敵は,ある時は「叩き壊すべき古き自分」であり「日常」である。
僕は「古い人間」なので古き自分との戦いに
父一徹と倅飛雄馬の対決を重ねたし
男が自分の血でカンバスに描き殴り始めたとき
「男の条件」の創作の奥義のひとつ「おのれの血すべてをインクにせよ」を
連想する程,梶原一騎に傾倒している。
古き自分を殺し続け,日常を壊し続けた男の行末が壮年を超え,
老境の域に到達しても「自分だけの表現」が未だ見つからず苦悩する
芸術の深奥さにゾッとさせられたし,
老境に達しても「古き自分」を殺し続ける男に希望を感じもした。
確かに難解かも知れないが共感は可能であると
お洒落とは無縁の朴念仁は思う。

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