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映画「ラストコンサート」レビュー「SF映画監督が作った純愛映画。」

自分の才能を信じられず,職に就かず,独り放浪の旅に出た中年ピアニストリチャードと,
自分が白血病に侵されている事を知らず,
遠方に住む父親に会いに行く20歳の女子ステラがひょんなことから同行する内に懇意となり,
パリで同棲する様になり,彼女は彼を励まし続ける。
やがて彼に才能が甦り,彼女に捧げた曲がコンサートで上演される事となった。
だが彼女の肉体を病魔が蝕むのであった…。

1970年代には白血病やガン,骨肉腫に侵された登場人物が残された日々を懸命に生きる
「闘病もの」というジャンルがあった。
本邦でも山口百恵と三浦友和の「赤いシリーズ」の幾つかは,そうした話だった。

本作の監督はルイジ・コッツィといい,「スターウォーズ」のバッタモン映画「スタークラッシュ」や
「エイリアン」のパチモン映画「エイリアンドローム」を製作しSF/ホラー映画マニア受けする,
したがって一般受けしない映画を作る人,と思っていたが,
本作は最初から最後まで退屈せず満足の内に鑑賞を終えた。
やはり「闘病もの」の定石に沿った作りが功を奏したと思う。
ややキツい言い方をすれば定石通りに作れば誰が作っても一定の水準に達し易いのだ。
本商品のレビューを幾つか拝読したが,監督や主演俳優の演技に言及したレビューは無かった。

でもね。ステラを失って独り海岸を歩くリチャードの姿からは
「寂寞」が滲み出していてね,何とも言い様のない結末になってます。

失意の中年ピアニストリチャード役を演じるのは
後にルチオ・フルチ監督のゾンビ映画「サンゲリア」で
メナード医師役を好演する事となるリチャード・ジョンソン。
俳優がリチャードだから役名もリチャードなのは安易に思えるが,
誰が演じても一定の水準が保証される映画においては「個性」など二の次な証拠だろう。
またステラ(ラテン語で星)という役名にはコッツィ監督の特別な思い入れがある様で,
映画「スタークラッシュ」の主演女優キャロライン・マンローの役名もステラ,
映画「エイリアンドローム」の主演女優ルイーズ・マーローの役名もステラになっている。

本商品には吹替が搭載され,リチャード役を「宇宙戦艦ヤマト」のナレーションで有名な木村幌氏が,
ステラ役は横沢啓子氏が,それぞれ声の出演を務められている。
画質はキレイではないが許容範囲。
特典に予告編が収録されている。

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