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クローネンバーグ監督の映画「デッドゾーン」レビュー「女の誘いを断るな」。

高校教師のジョニー(クリストファー・ウォーケン)は同僚のサラ(ブルック・アダムス)と将来を誓い合った仲で,デートの帰りに彼女を家まで送った際に「今日は…泊って行かない…?」
と誘われる。
ジョニーだっていい大人なんだから彼女の言葉の「含むところ」を理解出来ない筈は無いのだが,その申し出を断って帰路を急ぐ。

バカバカバカッ!

皆さんは映画「スターシップ・トゥルーパーズ」のラズチャック先生って御存知ですか?
先生は「女の誘いを断るな」って大名言を残されていてコレは昆虫型宇宙人との戦いで何時命を落とすか分からないから悔いのない選択をしろって教えなのですよ。

ラズチャック先生の教えを無視したジョニーには過酷な運命が待っていた。

彼が運転する車がタンクローリーと接触事故を起こし5年間の昏睡状態が続く。
女にさあ
「目覚める当ての無い恋人が目覚めるのを無限に待ち続けろ」
ってのは土台無理な話でサラは他の男と結婚。
5年後に奇跡的に意識を回復したジョニーだが重い後遺症を抱え,辛く苦しいリハビリに耐えたものの杖の補助無しには歩く事もままならない。

神様がそんな彼を気の毒に思ったのかちょっとした「贈り物」を授けてくれた。
それは手を握った相手の「未来」が予知出来る能力。
だがその能力故に彼は「サトリの化物」と恐れられ,人里離れた山奥での暮らしを余儀なくされる。

おお…「女の誘いを断った」罪とは斯くもも重く辛く厳しいのか…。
とんでもねえ未だ未だ序の口だよ?

遊説中の極右議員スティルソン(マーティン・シーン)に無理矢理握手された彼はスティルソンが将来大統領になって核ミサイルの発射ボタンを押す幻視(ヴィジョン)を観るのであった…。

スティーヴン・キングの同名小説をクローネンバーグ監督が映画化。
キングは
「俺の「デッドゾーン」を陳腐なメロドラマにしやがった」
と例によって散々だが僕は本作を支持する。
クローネンバーグ監督の「他者と繋がりたい」願望がジョニーの「他者と繋がりたい」願望として結実し,クリストファー・ウォーケンの孤高の佇まいと相まって唯一無二の奇跡みたいな作品となって昇華したのだ。
原作のエピソードを丁寧に拾っていってビーズの首飾りの様に繋いでいって最終目標である「スティルソンの暗殺」が成功するのか否かを丁寧に描写する事によって「未来予知は・運命は変えられるのか」って主題に導かれて行く。
例えキングが何をほざこうと本作は傑作なのだ。

だってキングが「1週間待ってくれ!俺が本当の原作映画化を見せてやる!」
って山岡士郎みたいな大言壮語吐いて作った映画が「地獄のデビルトラック」だよ?京極さんじゃなくたって「キングはん,アンタの映画はカスや」って言うよ!

リベラル派として知られるマーティン・シーンが極右政治家役を嬉々として演じてます。

吹替ではジョニーが野沢那智,サラが土井美加,スティルソンが富山敬って言うね,信じられん程豪華な面子なのですよ。

吹替搭載の上でブルーレイ化を何時までも待ってます。


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