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映画「真夜中の処刑ゲーム」レビュー「大理不尽に対しては何が何でも反撃しなければならないのだ。」

警察のストで無法地帯と化したカナダの町でNewOrderなる貧困層の白人男性の集団がゲイバーを襲撃しゲイはこの世に不必要な存在と捲し立てて乱暴狼藉を働く過程で死人を出し爬虫類の様な頭目(吹替では中田浩二氏が演じてます…怖過ぎるのです。)が店員と客の皆殺しを開始する。隙をついて,ひとり生き残ったゲイが盲学校のアパートに逃げ込み助けを求め籠城しながら武装集団と聴覚を頼りに身の回りの日用品を改造して戦う。

筒に釘と銃弾と火薬をありったけ詰めて作る「釘爆弾」はナポレオンがヴァンデミエールの反乱で大砲に釘と銃弾をありったけ詰めて暴徒に浴びせかけて鎮圧した砲弾が勿体ない時に使う「由緒正しい」武器なのだ。アーチェリーの弓の先にも爆薬を仕掛けて射ります。ランボーの先取りですね。床には水を撒いて電撃で攻撃。

でもね。本作が本当に素晴らしいのはそういう知略の限りを尽くした戦いじゃないんです。たったひとり生き残った頭目をたったひとり生き残ったゲイが猛反撃して戦う場面が素晴らしいんです。何の意味もなく虫けらの様に殺されていったゲイ達の「落とし前」は彼が付けなきゃいかんのです。

映画評論家の淀川長治さんが本作の大ファンなのはこの件(くだり)で「これ僕の話!」と思わず拳を握りしめられたからじゃないかしらと愚考します。映画の「中の世界」に入り込むには,この「これ僕の話!」と思う瞬間が絶対に必要なんです。本作の原題は「反撃」。大理不尽に対しては何が何でも反撃して死んで行った仲間達の無念を晴らさなければならんのです。

淀川さんが仕切る「日曜洋画劇場」で放映しましたからDVDには吹替も搭載されてます。
津嘉山正種・幸田直子・鈴置洋孝・中田浩二・古川登志夫…超豪華声優陣が本作のグレードを2段階上げて大輪の花を添えてます。


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