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映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」レビュー「ふたつの相容れない世界」。

殺人事件を目撃した母子とその事件を捜査する刑事の交流を描いた本作品。
僕は本作品を視聴する度に怒りが込み上げてくる。
それは何故か。
その理由を以下に記す。

母子は「アーミッシュ」と呼ばれる集団に属し文明の恩恵を一切合財拒絶し
前近代的な社会で厳しい規律を守って生きている。
曰く怒ってはいけない,ケンカなどもっての外,
聖書と関連書以外の本を読んではいけない,讃美歌以外の音楽を聴いてはいけない,化粧をしてはいけない,義務教育以上の高等教育を受けてはいけない…。ギギギ…書いていてむかっ腹が立ってきたぞう!

アーミッシュが怒ったりケンカしたり出来ない事をいいことに
「外界」の人間がアーミッシュに罵詈雑言を投げつけてくる。
沈黙を守るアーミッシュ。
ニヤニヤしながら,
かさにかかってアーミッシュを愚弄する「外界」の人間…。
ハリソン・フォードがブチ切れて「外界」の人間を殴り倒す!
途端に涙目になった「外界」の人間が
「アーミッシュに殴られたあ!俺は何もしてないのいいいい!」
と必要以上に大袈裟に泣き喚く。
ギギギ…!
何で怒らねえんだよ!アーミッシュ!
この場面が僕の怒りの大爆発ポイントである。
まんまとピーター・ウィアー監督の意図通り,また怒ってしまった。
よくよく観ればハリソン・フォードも「外界」の住人で
「外界」でアーミッシュを切欠とした暴力沙汰が起こっただけの話。
アーミッシュは唯うつむくのみだ。

本作品はふたつの相容れない世界を描いた物語であり,たまたま殺人事件を目撃したのがアーミッシュの母子だったため一時的にハリソン・フォードが
「外界」からアーミッシュの世界に立ち入り「接点」が出来た訳であり
アーミッシュから見ればハリソン・フォードはどこまで行っても
「住む世界が違う人」に過ぎないのだ。

とはいえアーミッシュだって熱い血が流れた人間に違いはなく
寡婦であるケリー・マクギリスが
ハリソン・フォード…亡夫以外の男の前で
規律に反して髪を下ろす場面は胸が熱くなる。

だかしかしハリソン・フォードとケリー・マクギリスは
決して一緒に暮らせないのだ。

ふたつの相容れない世界を描いた切ない話。

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