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スティングレイ社の「ゾンビ 製作45周年コレクターズ・エディション」レビュー

最初に断っておくが本レビューは2023/1/27にリリースされた「ゾンビ 製作45周年コレクターズ・エディション」に対するものである。
本商品の特徴を挙げると,
1.本編ディスク1枚にアルジェント版とディレクターズカット版が英語音声/日本語吹替音声で収録されている。
2.特典ディスクにはアルジェント版が1994年リバイバル上映プリント・テレシネの形式で4:3フルフレーム字幕焼き付けで収録されている。

の2点だが,たちまち幾つかの疑問が湧いてくるだろう。
1.米国劇場公開版が収録されてないのは何故か。
2.アルジェント版とディレクターズカット版は2013年と同じ内容。再発する意味はあるのか。
3.1ディスクに2バージョン収録すると2013年のブルーレイBOXの時より画質が落ちるのではないか。
4.ブルーレイ2枚で9,900円は高過ぎるのではないか。
5.幾ら何でも特典が少な過ぎるのではないか。
6.本商品を購入する価値はあるのか。

これから,これらの疑問の幾つかに答える形でレビューを書きたいと思う。
先ず本編ディスクには隠し特典としてアルジェント版とディレクターズカット版を組み合わせた
夢の超・長尺版(149分)が日本語吹替で収録されている。(英語音声・字幕非対応)
超・長尺版を出すコマンドはブックレットの最後に記載されている。
本編ディスクのメニュー画面でリモコンの上矢印キーを押下すると
ゾンビの絵の「目」のところが反転するので,そこで「決定」ボタンを押下すればいい。

2010年の時点でスティングレイ社には
・アルジェント版(木曜洋画劇場音源(1980年収録)+補完新録音源(2010年収録))
・ディレクターズカット版(新録音源(2010年収録))
が揃っていて,ゾンビファンだったら誰もが夢見る
アルジェント版とディレクターズカット版を繋げて超・長尺版を作る機会を伺っていたと思われる。
2010年の新世紀完全版の時も,2013年のブルーレイBOXの時も,実現には至らなかったが,同社は諦めていなかった。
この度,アルジェント版とディレクターズカット版を1ディスクに収録した訳をスティングレイ社はメルマガで明かしている。
曰く「2つのバージョンが同一ディスクに収録されていれば『チャプター・プレイ』による連続再生が可能」
とのこと。
実は今回も編集権は獲得出来なかった。ではどうやって超・長尺版を構築するのか。
例え編集権が無くとも両バージョンをチャプター分割して再生するチャプターを指定し
両バージョンから引っ張って来て連続再生した内容を超・長尺版と呼べばいい。
これはあくまでも「チャプター分割」と「再生」であって「編集」ではないと
権利元を説得・了承を得たのである。

いやしかし…こんな屁理屈を良く通したなあ。

但し斯様な契約の盲点を突く,やり方が権利元としては相当不服だったらしく
権利許諾期間が僅か5ヵ月となったのだ。
スティングレイ社からのメルマガを抜粋すると
『私どもは、『ゾンビ』の日本国内向けライセンスの契約延長を進めています。
その状況下で、権利元が個々の著作権者の確認に時間を要する関係で、本商品の販売を6月末で一旦終了することになりました。本商品の再販の予定は今のところありません。
契約延長の確認が終了した暁には、50周年を目指して新しい展開を検討して参ります。』
この文言から僕は権利元が契約内容を見直して「契約の穴」を塞ぎにかかったと見る。
そりゃそうだ。「穴」を塞がなくては皆が皆スティングレイ社のやり方に倣うに決まってるからね。
もうこんな異常な仕様の商品は二度と出せないって事。
僕達はスティングレイ社からの「目配せ」を受け取らねばならないのだ。

ディレクターズカット版は米国劇場公開版の叩き台であって,
米国劇場公開版にあってディレクターズカット版にない場面は存在しない。
故に夢の超・長尺版を構築するに当たって米国劇場公開版は不要と判断したのである。

アルジェント版とディレクターズカット版を1ディスクに収録した結果,画質は落ちていて,
例えばアルジェント版のエンディングでエンドロールが高速でスクロールする場面で文字にジャギー現象が発生してるし,
ディレクターズカット版でピーターが暴走族のリーダーの肩を狙撃して落車させ,
リーダーがゾンビに取り囲まれる場面で実は雨が降っているのだが,
2013年のブルーレイでは雨が目視確認出来るが,今回(2023年)の本編ディスクでは雨が目視確認出来なくなっている。
両バージョンを1ディスクに詰め込んだ画質低下の弊害である事は明らかである。

でもね。スティングレイ社は両バージョンを繋げて超・長尺版を構築する事しか考えてないの。
その為だったら,画質が多少アレだろうとどうでもいいの。
超・長尺版を構築するには1ディスクに両バージョンが収録されてる絶対の必要があるのである。

この「どうあっても両バージョンを繋げたい」ってスティングレイ社の志に同調できるかどうか
「僕も超・長尺版を観てみたい」と思えるかどうかで,9,900円が安いか高いかが決まるのである。
だってさあ,この新バージョン,世界でひとつしか無くて,ここでしか買えないんだよ?
本商品が廃盤にでもなろうもんなら,こんな珍品中の珍品,たちまち大変なプレミアが付くに決まってる!
ヤフオクやメルカリで人様のお下がりを定価の5倍払って購入するより,
1万円払って100円お釣りが返って来て,しかも新品で入手出来る今!今購入すべきだと僕は思うのである。

隠し特典の超・長尺版の仕様をざっくり説明すると,
スティングレイ社…と言うよりも岩本代表は
1980年収録の木曜洋画劇場音源(元となったバージョンはアルジェント版)に大変に思い入れがあるので,
ベースとなってるのはアルジェント版で,そこにディレクターズカット版から足りん部分を接ぎ木した感じ。
両バージョンが重複する場面ではアルジェント版優先だが前後の辻褄が合わない場合,泣く泣くディレクターズカット版に譲ってます。
なのでOPはアルジェント版。
EDはディレクターズカット版のエンディングを流しながらアルジェント版のサラトズムをかける超・折衷案を採用。
途中でサラトズムが終わっちゃうので,
後はゴーンとディレクターズカット版のエンディングの鐘を鳴らす力技!
どうです?観たくなって来たでしょう?超・長尺版!

まあ新世紀完全版の時の様に,1年も経たない内にハピネットがお手頃価格で出すのではって疑念が湧くのは確かです。
でもこんな特典が引き継がれるのかなあって僕は思ってます。
ま,考え方は人それぞれですしね。
高い商品買った後に安く売られたら業腹ですよね。

本編ディスク収録の両バージョンには字幕が付いてるんですが
1994年に両バージョンのVHSが出た時に字幕翻訳された岡田壮平氏の字幕が使われてます。
当時を知る方には堪らんのでは?

特典ディスクの内容ですが94年公開時のアルジェント版がフルフレームで収録されてます。
字幕は焼き付け。勿論岡田壮平訳。
VHS版とも比較しましたが上下の見える範囲がVHS版より遥かに広く感動しました。
きっとディレクターズカット版もフルフレームで収録されたかったんだろうなあ。

本商品の評価ですが,困ったなあ。
超・長尺版に何の思い入れも無い人には高い・画質が2013年のブルーレイより悪い・特典少ないの3重苦で星2つ評価なんですが,
超・長尺版こそ最大の特典であって,画質がアレなのは構築方法上,必要悪なのである。
故に超・長尺版に思い入れがあるなら星5つ評価となります。

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