見出し画像

NEMURENU42th「まがいもの」解題

更新履歴:次回テーマ投票の選択数が5つになりました。既に投稿された方はあと2つ選べます。

(推敲中です。遅れても申し訳ないので仮投稿。お気づきの点はこっそりご指摘下さい。闇夜のカラスさん、ご指摘ありがとうございます。)--------

皆さん、お元気ですか?え?本当に?
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーNEMURENU第42集のテーマは「まがいもの」でした。
皆さん、まがってマスか!

そんな紛った作品の集まること、全18作品。すべて紛っておりますよ!

いつもよりもひねくれております!進行は「ストレス食いで体重増量中!」ムラサキ1号です!
よろしくお願い致します!

今回も、モグモグー!

目次

01 詩「まがいもの」理柚
02 コラム「エバーテイル広告まとめ~嘘から出た偽物の傑作ストーリーを解説する」広告を見るやきそば
03 小説「勘違いの仕組み」常世田美穂
04 小説「脳響」ムラサキ
05 漫画「贋作」トザキ
06 小説「ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった」くにん
07 漫画「どれが本物?」仲本直輝 しあわせジョン日記
08 小説「如月、おばさん」武川蔓緒
09 小説「二の坂」海亀湾館長
10 コラム「まちがいさがしの力「吉良式発想法&視点」」吉良俊彦
11 小説「夜、祈る」闇夜のカラス
12 小説「男の美尻」千本松由季
13 詩「ミルフィーユ」千葉貴史
14 学術文献「地球革命の予備知識レプティリアン/ドラコニアン/人間創造主:アナンヌキ~」⛩巫Note:5次元量子世界(RV/GCR/GESARA/QFS)⛩
15 小説「真珠/黒玉」虎馬鹿子
16 小説「透明の穢れ」りりかる
17 小説「ドロシー・イン・フラノ」朝見水葉
18 小説「悪魔城ITABASHI」民話ブログ


解題

01 詩「まがいもの」理柚

あらためまして、皆さんこんにちは。
今回のテーマ「まがいもの」。紛っていることに胡散臭さを感じますが、それって本当に悪いことなんでしょうか?
最初の作品は理柚さんの詩。
古めかしい骨董品店には異国情緒漂う古物たちが並んでおります。それを眺めているといつの間にか、そこは異国の古い町並みで、私は旅人です。
路地裏には娼婦たち、殺人鬼、時計塔を走る怪盗と、それを追いかける名探偵の、助手。冒険が、ロマンスが待っています。

ときにはなんの役にも立たないものを
買ってみるのもいいもんだよ

と、冒頭の言葉から。役に立たないものの、良さ。ありますね、しみじみと。
寺山修司が、青い小瓶を持っていて、それは海外の骨董店で買ったもの。古物商商人によれば、その小瓶はペルシアの女奴隷が、夜になって人目を憚って涙する。その泪を溜めた小瓶なのだそうです。
「まがって」います。この本物の確証なきいかがわしさ。
ペルシアの女奴隷の泪壺が偽物であったとしても、そこにはもっと奇なる真実が秘められているかもしれません。
まがいもの犇めく骨董店に足を踏み入れると、もう皆様も旅人です。

今回のアンソロジーはまがいもの、偽物、贋作、虚偽。いかがわしさの世界旅行。
今月もよろしくお願い致します!


02 コラム「エバーテイル広告まとめ~嘘から出た偽物の傑作ストーリーを解説する」広告を見るやきそば

スキの数が800を超える人気記事です。
皆さんは「エバーテイル」というゲームを知っていますか?
2021年春頃に公開されたゲームで、当時は「スマホの無料アプリを使っていると強制的に表示される胡散臭い広告」枠によく出没したので、知っている方は多いと思います。
一見してポケモンみたいなんですけれどね、広告を見る限り、画面中にとにかく死体と血痕が多い。そして、何故か死体や血痕にゲームキャラクターが言及しない。「モンスターと一緒に冒険しようぜ」とか言ってる。死体がそこに転がってるんだけど!?と「このサイコパスでトラウマティック」なゲームはなんなんだ!?と思っておりましたが。

なんと?
この広告は「エバーテイル」というゲームとは全く関係ない「偽物」なのだそうです???
どうゆうこと????
広告の偽物?

巷では広告詐欺と罵られていたそうですが(そりゃそうでしょうとも)
侮れないのはこの偽物広告のクオリティ。
ポケモン的なモンスターに惨殺される。或いは惨殺する。
生肉に解体される。
自プレイヤーの正体は・・・悪魔?
と、心を抉るエッセンスが満載で、子供には見せられない。

とこの奇抜な偽物広告を本気で考察したのがこの記事。広告を知っている方は勿論、知らない方でも楽しめる記事になっています。

焼きそばさんの解説を読んでいたら、凄く面白そうでプレイしたくなるんですが、このゲーム実在しないんだよなあ・・・。
本記事はそのような極上の「まがいもの」の一品となっております。



03 小説「勘違いの仕組み」常世田美穂

人間の感情は神経物質の伝達で作られる誤解作用だ、と脳科学者が言います。そのような話、面白いですよね。
鉛筆を横にして口に咥えて作業をすると、作業効率が__%上がるそうですよ。
鉛筆を咥えた口の形が笑っている形になるので、脳が「意欲溢れる状態」と勘違いして作業効率を上げる脳内物質を分泌してくれるそうです。
そうなのかーーーー。
大脳様がそのような事をして頂けるのなら、この空腹を止めて頂けないものでしょうか。飢えております、食欲的な意味合いで。恐ろしくて体重計に乗れません。
食べたつもりで、寝たつもり。休んだつもりになることができれば24時間働けるのに。
常世田さんの作品は、脳誤解の産物、恋慕状態を題材にしております。
これは恋ではない。
これは愛ではない。
ひとえに大脳様の働きによるものだ、まがいものだ、という内容ですが、狂おしいですね。思慕というものは。純粋無垢な性愛の衝動が胸を打つお話でした。



04 小説「脳響」ムラサキ

私。
というフィクションが、「紛った」ノンフィクションをフィクションするという話。取り扱いにご注意下さい。皆さんから頂いたコメントにお返事できてなくてすみません・・・。今日が何曜日か分からない程、忙しいんです。昨日のご飯が思い出せません!え?老化?そうかあ。

で、本小説には私の本拠地たる新宿歌舞伎町の「ムラサキ事務所」が登場するのですが、そこに集まるムラサキたちのイラストをo-uinさんが描いてくれました。


そうそう!こんな感じ。
皆さんも秘密結社「MMR」でムラサキになりませんか?

ムラサキ1号でした。
ouinさんありがとうございます。



05 漫画「贋作」トザキ

トザキさんの漫画。
自分の絵が描けなくなって贋作を描き続ける根暗少年と、その才能を利用して金儲けを企むペテン師の話。

彼が描く作品は贋作であるけれど、
その才能は本物かもしれない。

未だ隠されている画才を見抜くことができるのはこのペテン師氏だけなんですね。現在六話まで公開されておりますが、面白いですよ。
トザキさんの作品の登場はアンソロジー「甘味」の時にドーナツの1P漫画をお借りして以来、二度目になります。
絵が凄く上手で、キャラクターがいきいきしております。



06 小説「ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった」くにん

ナンバーワンじゃなくてもオンリーワン。という国際的に有名な「其れ」は世事に疎い私でも流石に知っております。
ナンバーワンでなくとも、君はそのままで唯一無二の存在なのだ、と歌詞は唄う訳ですが、それを確かめるためには、「本当に唯一無二か図るためのスケール」が必要です。シンデレラのガラスの靴のようなもので、誰が試しても履けない靴があって、自分だけがそれを履ける。その時に、「オンリーワン」であることが実証されて、その価値が見いだされるもののように思われます。その自分にしか当て嵌らない身の置き所なくして「オンリーワン」は成り立たず、いや成り立つのですが、なんというか有難みが薄いというか・・・。河原で石ころを拾おうとして、素敵な石を今日は見つけようと思う人が、だってその辺に落ちている有り体の石を拾って「これで良いか」とならないですもの。路傍の石はそりゃ須らくオンリーワンです。構成物質も形も違う。でも「石拾い」は其処に価値を見出せない。もっと独特な極めて特殊の、初めてみるような素敵な石を探している訳で、何ら変哲もない石を拾わない。オンリーワンで良いんだよ、というのは既に選民が適った人間の言い分であって、同じ遺伝子が二つとないだけではオンリーワンと言わないし、それで私に友達が出来るものでは無い。断じて無い。私に友達は出来ない。と、いう話。いや、ちょっと、かなり違うかもしれませんが。とにかく主訴の詳細はくにんさんの小説にて。



07 漫画「どれが本物?」仲本直輝 しあわせジョン日記


仲本さんの漫画です。世の中の理不尽、不条理を分かりやすい漫画で描かれています。「ジョンがいっぱい」
人間は一人では人間にならない。自分を映す鏡があって、初めて外形が特定されるというか比較の中で人間になります。性格類型で「優しい」とか「短気だ」というのは人と比べて、強いて言うなら。ということであって、比べるものが無ければ「熱いのか」のか「冷たいのか」も分からない。
他者は自分を映す鏡であって、鏡に映る自分は鏡によります。関わる人間ごとに私という存在も少しずつ異なる。では、どれが本物で、偽物なのか、と考えるのがこの漫画。面白い発想です。

この度のテーマは「まがいもの」と、つまりは偽物、贋作がテーマですが、「本物ではない」ことが偽物であることの条件であって、それでは「本物」とは何か、と問うのがこの度のアンソロジーであったように思います。そうすると本物なるものが中々見つからない世の中でございましてね。
本物の無い時代には、偽物もない。マガルことも難しい世の中です。


08 小説「如月、おばさん」武川蔓緒

今回、初参加の武川さん。ご参加ありがとうございます。かつてのアンソロジー制作は参加作品が集まらなかったので、作品集めが主な作業でしたが、最近はこのように自然と人が集まって頂けて、大変ありがたいことです。本企画をご紹介下さる皆様のおかげです。
本アンソロジーは企画が二段階で構成されていて、アンソロジー完成後はコメント師という後夜祭がありますので、是非そちらにもご参加下さい。こちらは匿名での参加ができるようになっておりますので、お好みの仮面を付けて舞踏会までいらして下さい。

武川さんの小説は心あたたまる不思議なお話。奇特な性格のモデルS君が雑誌の企画で「恩師」を連れてくる事になりました。彼が連れてきたのは、昔お世話になったというおばさん。ハートウォームなお話ですね、と読み進めると予想だにしない奇想天外のお話が待ち受けております。

ちょっとこのような話になるとは思わなかった。でも、良い話です。ユーモラスでカルティックな奇才の登場です。



09 小説「二の坂」海亀湾館長

本アンソロジーの主役の一人でもある海亀湾さんの小説。以前の小説で「五重塔」が登場するものがありましたが、舞台は羽黒山だったんですね。今回は羽黒山の全景が描かれます。土地を題材にした紀行の小説は読んでいて楽しいですね。行きたくなります。この度も羽黒山の魅力が多く紹介されるのも小説の魅力の一つとなっております。それにしても「羽黒山」の名前は聞いたことがありましたが、このようなパワースポットとは存じませんでした。パワースポットというよりも異界ですね・・・。調べれば調べるほど怖いんですけれど此処・・・。そのうち海亀湾さんが小説でお書きになると思うので細かくは触れませんが行ってみたいですねえ、異界。ワクワクしますねえ、心霊スポット。

海亀湾さんは写真を撮る方ですが、昨日、新たな写真が追加されました。石段に三十三個の絵が隠れていて全部見つけると願い事が適う。なるほど、願いを叶える天狗的なものが現れるんですね、きっと。死者が蘇ったりしそうですね。

ところで、この小説を読んだ多くの方が最後の展開に「幻想の霧に包まれたような読後感」に陥ると思うのですが、コメント欄のやり取りで謎が解けます。読まれる際には是非、コメント欄もご覧下さい。
海亀湾様、私の俗話に、いつも丁寧にお返事下さってありがとうございます。




10 コラム「まちがいさがしの力「吉良式発想法&視点」」吉良俊彦

吉良さんのコラム。
「まちがいさがし」の手法を取ることでテーマを深く見つめなおすことができる。という記事。仰る通り、タメになります。全体を眺めて細部を深く注視し・・・、「間違いさがし」に取り組もうとするときに、人間はあらゆる角度から観察をします。そこにテーマを散りばめれば、その方の心裡に深くテーマが刻まれることでしょう。ゲーム要素を取り入れる、面白いですね。

間違い探しといえば・・・

私が愛読する「超常現象の謎解き(本城達也)」の中で面白い動画が紹介されております。

手品の動画なんですけれどね、衝撃度が高いです、いや本当に。
この動画を紹介している「謎解きドットコム」はこちら。

このサイトを読めばあらゆる「一般常識」に通じることができる神様のようなサイトです。


11 小説「夜、祈る」闇夜のカラス

物語の展開を深堀りする事の巧みさで人気を集めている闇夜のカラスさん。話の作り込みが濃厚です。
今月の闇夜のカラスさんの作品は、青春の一ページを切り取ったドラマ。人生には大人でもない、子供でもない、過渡期と呼ばれる時代があって、押し寄せる波濤に不安と衝動でやり過ごすしかない。青春の時期に経験する多くは幻であって、両の手から零れ落ちる砂のよう。淡く果敢なく消える季節です。
そのような果敢ない青春を描いているのですが、なんというか痛々しい。恐ろしい。ジャンコクトーが「恐るべき子供たち」を描き、ジョルジュバタイユが「眼球譚」を描いたように青春とは恐ろしいものです。
子供たちは何度も破滅しながら大人になっていく。世間の「おっさんず」もかつては破滅する子供であって。破滅を尽くしておっさんずに加盟して、今は何んとなしに破滅から縁遠くなって健やかに加齢して緩慢と人生を持ち崩しているわけです。既に人生が下り坂で緩やかに破滅する私と異なり、青春の破滅は勢いが違いますね。破滅に元気があります。
彼らの愛が本物であったのか、まがいものであったのか。それは本小説を読む読者に委ねられる所です。皆さんはどう思われますか?



12 小説「男の美尻」千本松由季



男の美尻かあ・・・。
千本松さんの小説です。最近youtuberになった千本松さん。破滅派、youtubeと多才に活動されております。私は男ですので、男の尻がなんたるかは知らない。浴場に行けばいつでも男尻天国ですが、近眼なので銭湯行くと何も見えないし、別にまじまじと男尻など見ない。夢見が悪くなりそうなので。
きっと男尻には私の知らない魅力があるんでしょうなあ。個人的にゲイ二人がゲイビデオを見ながら感想を言い合うところが良いです。同性愛ってそのような点が完成しておりますね。異性愛は例えばポルノビデオを一緒に見たとしても嫉妬が│過《よ》ぎるといいますか、鑑賞に無用の気遣いが必要のように思います。女優様に見惚れて仕舞うと気不味くなりそうですし。その点、同性愛は男同士で男尻映像を見るわけですから遠慮がない。お互いに男尻が好きなんだから。雑念が無いですよね。いや、そうでもないのかな。迂闊に男尻を褒めるとパートナーの男から嫉妬されるんでしょうか。どうなんでしょう。


13 詩「ミルフィーユ」千葉貴史

千葉さんの詩です。身を切るような悲痛が漂っておりますね。ミルフィーユはパイ生地とクリームを複層したケーキです。人生は慶事と困苦が折り重なることが表現されている、と思われます。

ミルフィーユの語源は「千枚の葉」を意味しているそうで、日本語にすると「千葉」。千葉には千葉ミルフィーユというお菓子がありますが(謹製オランダ屋)、これはイチゴ入りホワイトチョコをパイ生地で挟んだもの。複層はしておりません。正式名称はミルフィーユサンド。


正統ミルフィーユってパイ生地なんですね。私がよく食べていたものはファミリーレストランスイーツで、薄いクレープ生地とクリームを幾層にも重ねたものだったような。すっかりアレが一般的なミルフィーユだと思っていましたが。ミルフィーユにも正流と亜流があるんですね。

(MMRの調査によって、クレープ生地を重ねたものはミルクレープであることが判明しました。ミルフィーユじゃなかった!)

(ここまで話をしていて、ミルフィーユ=千葉さん、であることに今!気が付きました!すっかり千葉県の事で頭が占められておりまして…。天然か!)


14 学術文献「地球革命の予備知識レプティリアン/ドラコニアン/人間創造主:アナンヌキ~」⛩巫Note:5次元量子世界(RV/GCR/GESARA/QFS)⛩

今回、冒頭でご紹介した「広告をみるやきそば」さんの「エバーテイル広告検証」も大層な人気記事でしたが、この⛩巫Noteさんの記事もスキ数が1500を超えている。零細作家の私から見ると月にも届くかに思える天文学的数字です。世の中が求めているんでしょうか・・・真実を。求めているんでしょうなあ、真理を。
詳細、膨大な知識量がこれは凄い、と思って本アンソロジーに加えてしまいましたが、実はまだ読めておりません。これはアレです。積読という奴です。手元にあると安心する。読むと消費してしまうので(?)読まずにいていつでも新鮮。読まない事の愛読。好きなものは残すタイプ。
この感覚をなんと呼ぶのか分かりませんが、お気に入りの記事です。私の子供の頃はアメリカのテレビドラマ「V」が流行りまして、レプティリアンって馴染み深いんですよね。
聖書の中で悪魔の姿は蛇、爬虫類の姿で描かれるので神様の対概念として爬虫類人間が成立している。悪魔を科学的に解釈しようとすると、爬虫類人間になるんですかね。何を以って科学と呼ぶのか分かりませんが、「まがって」おります。しかし、しかしですよ、これをマガっていると感じるのは我々が別の神話を真実と信じているからで、もしかしたら我々が本物と仰ぐ神話が「真実」のまがいものかもしれない。
爬虫類人類が正統の人類であって、我々はまがいものの猿人間かもしれませんよ。



15 小説「真珠/黒玉」虎馬鹿子

虎馬さんの小説です。
宝石は不思議な力を秘めておりますが、お高いものですからうっかり落とすと大変です。
と、そんな事情から模造宝石が一定の需要を得ていると思うのですが、今回note内で検索しても模造宝石関連の記事ってそんなに多くなかったですね。うーん・・・模造宝石は一般的に流通しているので取り立てて記事にならない、ということでしょうか。

で、なんとなく探してみた模造宝石専門店のホームページ。

模造と分かっていても綺麗なものです。
別に本物の必要は無いんじゃ・・・などと言葉を重ねると多方面からのお叱りを受けそうなので慎みます。

虎馬さんの小説は真珠と黒玉の思い出を小説にしたもの。生活感があって人生の一幕を切り取っている。ここにもリアルがあります。

話が大きく逸れますが、私は太宰治の一燈という小説が好きです。3000文字程度の短い小説です。太宰自身が主人公になっている。舞台となるのは昭和8年12月23日の東京。厳粛な兄と東京で会った太宰は叱咤を受けて気落ちしながら、兄の後をついて歩きます。この情けなさが、或る一瞬後に劇的に変化する。この日、昭和8年の12月、国内は皇太子殿下の誕生をいまかいまかと待っている。それが、生まれた。その知らせがあった瞬間を小説にしている。
当時の国民感情が、人々の暮らしがリアルに描かれます。

我々、猿人間が常態的にマスクを着用するようになって久しく経ちますが、未だ我々の書く小説作品にマスクは馴染まないし、マスク着用を普遍の常識とすることに抵抗を感じます。いまマスク着用の小説を書いて、後にマスク着用が解除され、未来に於いてマスクの記憶が風化した時に、何故登場人物が全員マスクを着けているのか理解しえない描写になってしまいますからね。小説を書く人間はどうにも普遍の事柄しか書きたくない。
しかし、今しか書けないもの、自分のリアルを記すことは未来に於いて当世の世相を読み解く資料ともなる。世相の記述もまた小説の務めでもあります。

真珠はイミテーションですが、虎馬さんの感受性は本物。この小説のように真実を描くことも小説の仕事と思います。




16 小説「透明の穢れ」りりかる

りりかるさんの小説です。
幾人かの登場人物の主観で構成される本物語は、それぞれの登場人物が一人の魔性の人物を中心に連関して、複雑怪奇に絡まるミステリーを展開しています。話の行く末が分からず大変楽しく拝読しました。私は物語を伏線を張りながら複雑に絡めて紡ぐということが苦手で、このように緻密な物語が作れるのは羨ましいです。
文学史上の「非人間」といえば太宰治の人間失格ですが、人間失格は主人公である大庭葉蔵の自称であって、果たして当人が人間に非ざる欠格品であったかどうかは実は分からない。分からないというのは人間の真価というものは自己評価だけで成立しないからであって、他者からの鑑識も、当人の真価を決定するためには必要だからです。その点、人間失格と自称する大庭葉蔵の周囲からの評価は決して悪くない。
時折話題に出す話を再た繰り返すのは恐縮ですが、「ジョハリの窓」という概念がありまして、人間は
1、自分にしか見えない私のすがた
2、他人にも自分にも見えている私のすがた
3、自分には見えていないけれど他人からは見えている私のすがた
4、自分にも他人にも見えていない私のすがた
の四側面から成っている。
人間失格の主人公、大庭葉蔵は少なくとも他者から「失格」の烙印を押されてはいないので、上記2番、3番的には失格ではない。4番の「自分」は誰からも見えない本性のようなものですが、これは誰にも見えない。しかしあくまでも見えないのは現時点の話であって、経年して情報が蓄積されれば見えるものもあるでしょうから、大庭葉蔵の残した後世への影響で適否が判断される。と考えると、どうやら是れも決して悪くない。そうすると大庭葉蔵氏の人間失格の程度は四半分、四分の一に留まる。残りの四分の三は失格ではないので大庭葉蔵はおよそ人間失格では無い、というのが作者が主人公に下した裁定なのだと思うのだけれど。
突然、何の理屈を捏ねだしたのかというと、りりかるさんの今回の小説の主人公もまた魔性である、穢れていると言われている。しかし魔性であることは描写された一側面であって、それは四半分。描写されない所に当人の真価が隠れていて、それを読み解こうとすることが、本作品の楽しみになっております。



17 小説「ドロシー・イン・フラノ」朝見水葉

朝見さんの小説です。タイトルにあるドロシーは「オズの魔法使い」の主人公の女の子です。竜巻に巻き込まれて魔法の国に飛んできてしまった彼女は家に帰るために、弱気なライオンや、動き出したかかし、機械の体になってしまった木樵と一緒に大魔法使いの元を訪れます。その大魔法使いはドロシーたちに敵対勢力である西の魔女討伐を命じるのでした。と、解説を書くために改めてあらすじを確認すると、なんか児童文学にしては血生臭い話ですね。西の魔女から放たれた刺客たちを揃って惨殺しながら一行は西に向かいます。そんなに殺っちゃって良いんですか…?最近の児童文学は殺人することを忌避しますが、ドロシー一行の無法ぶりは容赦ないですね。とんだ殺人鬼ですよ。

朝見さんの小説の主人公の女の子「ミラ」は「フラノ」の祖父の元を訪れます。祖父は蝋人形制作者で、生きているかのような蝋人形が彼の手から生まれ、並ばれ、売られていきます。魔法、のようですね。子供の目に映る大人の姿は誰もが魔法使いなのかもしれません。

最後にミラを乗せた観光地の気球は空へと浮かび上がり、そして元の場所に降ります。
ドロシーのように魔法の靴で家に帰る訳でもなく、竜巻に乗って家ごと魔法の国に飛ぶわけでもない。ミラはフラノの空へ浮かんで、降りる、この「何も無さ」。ここに至るまでに語られたつぶさな描写が「何も無い」ことをドラマとして成立させている。
いつもの事ながら描き方が上手ですねえ。

18 小説「悪魔城ITABASHI」民話ブログ

今回のテーマである「まがいもの」という言葉から漂ういかがわしさ。それが最も似合っているのは本企画の読者様にはお馴染みのアングラB級の書き手、民話ブログさんかもしれません。
民話ブログさんのこの度の小説は「板橋駅が悪魔城になってしまった」という奇想天外のアクション活劇。何故、板橋駅が悪魔城になるのか。この設定からして胡乱です。

「……宣言通り、ゲンダ老人は人間をやめた様子だった。」

とは本小説の一節ですが、小説は虚構の世界を成型するもの。時に力強い断定が必要です。
「人間をやめた様子だった」と作者が言うなら読者は納得するしかありません。たとえそれが現実法則からマガっていようとも。このような断定的な強引手法もまた民話さんの魅力です。物語は我々の思惑から外れて紛がる、曲がる、禍がっていきます。本アンソロジーの最後を飾るにふさわしい娯楽大作でした。長い小説でしたが、あっという間に読み終えてしまいました。

---------

と。

私の解題はこれにて。本アンソロジーに含まれたいかがわしさ満載の十八編。いかがでしたか?
光のある所に影が生まれるように、本物のあるところには「まがいもの」が生まれます。

私の本物がいる裏側にはわたしの「まがいもの」もいるのです。
その「本物」が私自身かもしれませんし、もしかしたら「まがいもの」の方が私自身かもしれません。鏡面世界に於いてどちらが本物であるかの議論など。しかし、まあ、「まがいもの」であることも悪くない。
かつて私の作品を、敬愛する尊師が「パスティーシュ」的と形容したことがありました。
パスティーシュとは模様、剽窃、パロディ、オマージュと、まあそんな意味合いで、胡散臭さが漂う言葉ですが、文学においてはパスティーシュはひとつのジャンルでもあり表現手法にもなっている。パスティーシュであることの根底には諧謔の精神があって、「本物になってたまるか!」と、「まがいもの」を誇る謎の矜持があるわけです。大変ひねくれた話ですね。

しかしながら、度数100%の純然たるアルコールが飲酒に適さないように、人生にも混合物は必要で、つまるところ余暇や余力が必要で、そのような余裕が無ければ、楽しむことも楽しませることもできません。

「まがいもの」にはそのような、楽しさが、ありますね。
本アンソロジー十八編の「まがいもの」賛歌。これを通読された読者様の中にはもしかしたら「本物になってたまるか!」と謎の価値観が生まれてしまった方もいるのかも。本企画によって新しい扉が開いてしまった方は大変お気の毒に。そしてようこそ地下世界へ。本アンソロジーは、地底世界の住人を歓迎しております。

最後に、読者様、そして作者様、あらゆるクリエイターの皆様に嘘偽りない愛と感謝を。

今月もありがとうございました。


眠れぬ夜の奇妙なコメント師様、来たれ!

(定型文です)
アンソロジーがまとまると何処からともなく現れる「眠れぬ夜の奇妙なコメント師」。今宵も奇妙なコメントが集まります。

眠れぬ夜の奇妙なコメント師とは・・・

「偏れ!」
大衆に迎合して日和った意見になんの価値がございましょうか。そのような生温い意見に甘んじたいのならば無料SNSにでも行け・・・!(あっ!ココのことだ!)
結局大勢を相手に発信するSNSって受信する側に選択がないので、発信する側が気を遣って意見を中立に保たなくてはいけない。悪くはございませんが、そんな無思想の量産型意見など「あなた」が吐く価値がない。「あなた」しか言えない意見だからこそ価値ってあるんじゃないかしら。「あなた」しか言えない意見だからこそ真の共感が得られるんじゃないかしら。反論のない意見に真の賛成もない。
偏らなければ面白くない!
日和った意見を書き連ねるほど、文筆家は堕落して自分の価値を貶めるんだ。ネットで日和見小説を書くほど真の文筆の道からは遠ざかるんだぜ。

ということで、大いに偏って穿ったご意見を募集しております。
(批判はダメです。)

投稿ルール
・投稿は本アンソロジーをご覧になった方ならどなたでもできます。
・掲載作品の中から最も面白いと思った三作を選んで、下記フォームからコメントをお願いします。
・特定の作品・ユーザーを揶揄・批判していると受け取られ、炎上のおそれがある記載は削除しますので、お気を付け下さい。
・コメントは別名義(コメントネーム)で投票できます。ユーザー名は公表されませんのでご安心ください。
・コメント文は総文字数300文字以上、上限はありません。形式もありません。自由な表現が可能です。
・回答は一人一回に限っています。回答内容は送信後も編集可能です。
・特に投票結果の修正は行いません。
・投票はお気軽にどうぞ。
・投票はお気軽にどうぞ。
・投票は


★フォームの下に長い空行がありますが、「次回テーマアンケート」「次次回テーマ候補」とまだ下にも記事が続きます。(投票締切は11/10  18時です。)


フォームが表示されない方はこちら
https://forms.gle/MN23VU1y8fUEQ7CA6


次回テーマのアンケート

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーは次回のテーマを公募で決めております。以下の投票フォームから好きなテーマを選んで下さい。(投票締切は11/10 18時です) 

今回は候補が多いので選択数を5つに増やしました。



フォームが表示されない方はこちら
https://forms.gle/KZSq2u3jRBKEAYVk8


次々回テーマ募集中。

次回テーマの投票の候補も公募にて募集しています。次次回(2021年12月号)のテーマの候補をご応募下さい。以前採用されたテーマでも応募可能です。お好きなテーマは何度でも。一度落ちても何度も応募すれば採用されるかも。


フォームが表示されない方はこちら
https://forms.gle/a2AbQ6n4Qtj9bhs67