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【殺人事件】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第28集 解題

(本記事は校正前です。失礼があったらすみません。)
皆様、こんばんは。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第28集のテーマは「殺人事件」で御座います。

死は誰にも平等に訪れるものなれど、命の糸を断つは罪業。殺し殺され殺して殺し。人の世に先史より繰り返される罪なりき。耳を澄ませば誰か在る。背後に潜む殺人鬼。いやよく見れば其れは影。自らの影。自らの影が手に持つものは狂気と凶器。

眠れぬ夜はあなたと共に。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーは古今東西オールジャンルでnote記事をつなぎます。

目次

00 小説「塩大福爆弾殺人事件」民話ブログ

01 読書感想文 モキュメンタリー小説版! 英国本格ミステリ『メインテーマは殺人』三池
02 コラム シリアルキラー展Ⅱ -魔の美術館- 泥水
03 マンガ #002 「暗闇から」 ゆるい美術師@漫画とイラスト
04 小説 幸福過剰摂取 あべ
05 小説 プールに沈む 千本松由季 Official Blog
06 小説 お店屋さんごっこ殺人事件 ひろし
07 コラム 諸星大二郎作品から影響を受けた楽曲(情報募集) miyassa
08 エッセイ 私の推理小説遍歴 海亀湾館長
09 コラム 殺人者の彫像 麻草郁
10 エッセイ 刺す 虎馬鹿子
11 小説 脳内殺人~生きながらにして~ 平沢たゆ
12 マンガ 金魚 ぴのこ堂
13 コラム マーダーミステリー、まじで面白いからやろう うさぎさん@エンタメ企業企画マン
14 小説 夏の日 くにん
15 小説 殺人事件の三日後に アセアンそよ風 (文筆家、旅と東南アジア小説)
16 小説 首無館を探せ ムラサキ
17 音楽 シカバネーゼという曲~屍になる日もある~本日19時 ボカロP jon-YAKITORY
18 小説 箱 磯貝剛

アンソロジーはこちらから。

解題

01 読書感想文 モキュメンタリー小説版! 英国本格ミステリ『メインテーマは殺人』三池

今月も始まりました眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー。この度もテーマに因んだ様々な記事が集まってございます。第一番は三池さんの読書感想文。
「メインテーマは殺人」というモキュメンタリーミステリ小説の感想を書かれています。
この感想文の構造が奇妙に面白かったです。
「メインテーマは殺人」は作者であるアンソニー・ホロヴィッツがエッセイ的な語り口調で物語を展開させます。事実のフリをした虚構です。其れを読書感想文という現実が取り扱う。
つまりフィクションをノンフィクションとして語る作品をノンフィクションとして再構築する事は作品の有する偽ノンフィクションを破綻させる行為であり、その余波として真にノンフィクションである作品の実在性までが疑わしくなるという錯覚に陥ります。
私の説明が致命的に分かりにくいですね!百聞は一見にしかず。是非読んでみて下さい!
ハクション!おや誰かに噂されてるのかな?

ちなみに途中に紹介される「モキュメンタリー」の名手、白石晃士監督は私が敬愛して止まない映画監督です。

モキュメンタリーについてはこちらの記事でも少し触れています。「白石晃士が好きだ!」という割に5段階評価で1が付いてます(笑)だって怖いんだもの!殺人鬼に拷問を受ける話です。


02 コラム シリアルキラー展Ⅱ -魔の美術館- 泥水

泥水さんの展示会レビュー。企画名は「シリアルキラー展」です。大人気の企画のようですね。
歴代のシリアルキラーたちは何故人気が出るんでしょう?皆さん殺したい訳でも殺されたい訳でもないでしょうに。お化け屋敷と同じで怖いものみたさ、なんでしょうね。
例えば現代の殺人鬼が同じ地平に立てるのかと云えば、遺族感情もありますし、弾劾の意識もありますから展覧会にはなりにくい。
これらのシリアルキラーたちは事件自体が風化してリアリティが失われてしまった。つまりノンフィクションでありながら、フィクション化している。先程とは逆ですね。
ここにもまたフィクションとノンフィクション、現実と虚構を巡る問題があります。


03 マンガ #002 「暗闇から」 ゆるい美術師@漫画とイラスト

前述のシリアルキラー展のポスターもピエロです。殺人ピエロのジョン・ウェイン・ゲイシー。ピエロ恐怖症っていうフォビアがあるんですよね。割と子供には。

このマンガのピエロは映画「IT」のペニーワイズですが、ピエロと云えば映画「joker」が流行してましたね。映画は未視聴ですが「joker」の評価をめぐる様々な論説は面白かったです。情状酌量の余地はあろうとも犯罪は犯罪。迂闊な擁護はネットリンチの対象になります。当時、note内で囂々のバッシングを浴びている記事を読みましてね、賛否両論の炎上するくらいの言説を持たねばプロにはなれないな、と思った次第です。炎上しないという事は無難、という事です。誰もが語れる言説という事です。逸脱も超克も無ければ果たして価値なんて!
シリアルキラーの魅力って、そんな所にもありますね。人間社会からの完全な逸脱。

え?私ですか?
私はすっかりSNSに飼い慣らされた犬畜生でございますので炎上はなるべくご勘弁願いたいです。


04 小説 幸福過剰摂取 あべ

幸福過ぎると死んでしまう世界。結婚披露宴の最中に死んだ花嫁。これは祝福過多による殺人事件だ!
魅力的な設定です。あべさんは設定からして巧い。惹かれます。こんな設定を組まれたらそれだけで負けます。
誰からも祝福された花嫁かと思いきや、少しずつ明かされる事実に事件は意外な方向に向かいます。どうして花嫁は死んだのか考えると共に幸福感とは一体なんなのか考えさせられますよ。


05 小説 プールに沈む 千本松由季 Official Blog

千本松さんの小説。千本松さんと云えば、プロ作家の川光俊哉さんから頂いた講評シリーズが密かに人気となっております。川光先生の忌憚ないご意見が殺人級に辛口で、読んでいてハラハラ致します。ホラーですね、或る意味。
川光先生はやはりプロです。言説に死ぬか殺すかという覚悟があります。
さて。
この度の千本松さんの作品は高校生カメラマンのBL官能小説ですが、テーマを意識して書かれただけにいつになくバイオレンスな内容となっております。
人間は呪縛に縛られて生きております。不自由から逃れられません。
ポストモダニズムの時代に芹沢俊介の極端に偏った評論を読んでいて、「人間は不自由を持って生まれる」という話がありました、たしか。子どもが生まれる時に自ら選べないもの。ひとつは生命そのもの、もうひとつは親。すなわち血縁。そして身体と性別。この不自由を受容する事が大人になる事だ、と。
性癖もこの不自由の中にありますね。
性癖が命ずるままにしか、人間は人を愛せません。悲しいですね。


06 小説 お店屋さんごっこ殺人事件 ひろし

ひろしさんの小説です。
ひろしさんも逸脱をしてしまった人です。
コメント欄でも指摘した事ですが、この小説は謎の視点から書かれています。本アンソロジーにとってはお馴染みの二人です。世界はこの二人で完結している。今までは彼女の視点で小説は書かれておりましたが、この度は「彼女とあの人」と、二人を遠巻きに観察する、しかし極々近しい間柄の視点で書かれています。
本来、小説を書く時の全方位的な視点は神の視点と呼ばれて、「神崎は」とか「男は」とか登場人物に対する感情はありません。ところが今回の小説は神の視点でありながら、登場人物に対する偏執的な執着を感じる。これは神ではない。人間でもない。神でも人間でもないなら、これは何だ。神が殺されて何者かに代わられたかのような不穏と逸脱があります。


07 コラム 諸星大二郎作品から影響を受けた楽曲(情報募集) miyassa

今回の音楽記事はmiyassaさんの「諸星大二郎音楽」です。殺人といえば諸星大二郎ですね。そこを端折って殺人といえば大槻ケンヂと言い換える事ができるかも知れません。


08 エッセイ 私の推理小説遍歴 海亀湾館長

殺人事件がテーマということで本アンソロジーはシリアルキラーなどノンフィクションとしての殺人もご紹介しておりますが、殺人事件と言ったら矢張り花形はミステリ小説ですね。企画のツボを突いて海亀湾さんがご自身のミステリ小説遍歴を書いたミステリ小説入門記事を書いてくれました。
私はミステリ小説が苦手で殆ど読んでおりませんので、是非参考にしたい所です。ありがとうございます。


09 コラム 殺人者の彫像 麻草郁

シリアルキラー系記事の第二弾です。プロ作家にして造形美術家の麻草さんのシリアルキラー像です。素晴らしい出来栄えです。今にも殺っちゃいそうです!


10 エッセイ 刺す 虎馬鹿子

虎馬さんの小説。小説?はい、ええ、小説です。殺意と距離の相関関係について。
距離は大事ですよねえ。人間関係の問題は適切に距離を確保すれば殆ど解決します。
日本の国土の狭さが起因する殺人事件は多いと思います。エビデンスはありませんが。
先程少し触れた芹沢俊介の評論では「生きている事そのものを受容出来ない時に人間は殺人か自殺に及ぶ」と言われていたような気がします(曖昧)。自分は生きている主体であるという事。他者もまた生きている主体であるという事。これを当たり前と思えるためには傷付きながらも乗り越えるべき幾つかの壁があるようです。

11 小説 脳内殺人~生きながらにして~ 平沢たゆ

たゆさんもまた殺意と距離感に纏わる話。
子供は殺意を抱きやすい。と指摘されます。その通り。私も子供の頃には抱いていましたとも、殺意を。子供にとっては殺意がフィクションであるから、殺意を抱く事ができるのでしょうね。大人になると殺意は実現可能なノンフィクションです。ハックション。
おやおやクシャミが出ますよ。God bless you。


12 マンガ 金魚 ぴのこ堂

ピノコ堂さんが「山谷シュウコ」名義で商業誌に書かれた作品です。コメント欄で教えて下さったのですが、近々短編集を発刊されるそうで本作品も収録されるとの事。発刊後は本記事は削除されるそうなので、実質本記事は期間限定公開になります。是非今のうちに読んでみて、気に入られた方は短編集もご購入下さい!宣伝です。
ピノコ堂さん、日頃はイラストをアップされております。イラストも綺麗で妖しくて素敵です。


13 コラム マーダーミステリー、まじで面白いからやろう うさぎさん@エンタメ企業企画マン

マーダーミステリってご存知ですか?私は昨日初めて知りました。noteで調べたら解説記事が多々ありました。さすがnote。現代のアカシックレコード。何でもありますね。中でもうさぎさんの書かれたこの記事はマーダーミステリの魅力について非常に分かりやすく書かれております。
なんて楽しそうなんでしょう!私もやりたい!でもコミュ障だから誰かとやるのは自信がない!一人でできるものは無いの?え?小説読んでろ?
ハックション、ハックション。


14 小説 夏の日 くにん

くにんさんはですねえ、テーブルトークRPGなるものに精通しておりまして、解説記事なども書かれております。TRPGなる言葉を私も聞いたことはありましたが、実像が全く想像がつかず、TRPGは解読不能の魔法言語となっていた訳ですが、くにんさんの解説は分かりやすかったですねえ。前述のマーダーミステリはTRPGの亜種ですね。
考えた人は凄いです。
くにんさんの小説に出てくる殺人は戦争。我々はノンフィクションという常識の中で生きております。しかしノンフィクションは必ずしも絶対では無い。ノンフィクションもフィクションも境界は曖昧に混濁します。
戦争は国家の持つノンフィクションが相互に摩擦を起こす事。どちらにも真実など無いんです、きっと。


15 小説 殺人事件の三日後に アセアンそよ風 (文筆家、旅と東南アジア小説)

アセアンさんの殺人事件は約二千年前の史実的な。
社会が抱く共同幻想は政治ばかりではありません。宗教もまたひとつの共同幻想です。つまり、ノンフィクション、或いはフィクション。宗教同士、摩擦を起こしますね。


16 小説 首無館を探せ ムラサキ

フィクションにはフィクションの外骨格がありますが、その形代を無くしてフィクションですら無いようなお話を書こうとしました。


17 音楽 シカバネーゼという曲~屍になる日もある~本日19時 ボカロP jon-YAKITORY

yakitoryさんの音楽。ボーカルにadoさん、かゆかさんのイラスト。類まれな才能が集合して作品が完成しております。
格好いいです。


18 小説 箱 磯貝剛

最後に・・・磯貝さんの「箱」。連載小説です。開始当初は平穏に時間が過ぎていますが、途中で突然世界が壊れます。読まれていた方はさぞやぎょっとしたでしょう。私もぎょっとした一人です。
小説はフィクション。しかし登場人物にとってみれば小説世界はノンフィクション。読者登場人物のノンフィクションに感情移入して物語を読み進めます。ところが「箱」の中のノンフィクションは読者の思うノンフィクション、すなわち常識や理から奇妙に外れていきます。読者としては違和感に戸惑うばかりです。未読の方はどうぞご覧ください。

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第28集のテーマは「殺人事件」。
本当は「未解決事件」などのハッシュタグで出てくる「怖い事件」なども登録しようかとも思っておりましたが、殺人事件がリアルでは少しロマンに欠けます。殺人事件は虚構だからこそ官能です。だって怖いし。
ただね、虚構も現実も本当は区別などないのですよ。
だから、娯楽としての殺人事件を楽しむあなたの背中にはいつのまにか本当の殺人事件が迫っているかもしれません。我々が何の気なしに歩いている理の道は本当はとても細いのです。簡単に足を踏み外してしまう。足を踏み外して陥るのは殺る方ですか、殺られる方ですか。

眠れぬ夜はあなたとともに。
どうか皆様、逸脱せぬようお気を付け下さい。



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磯貝さんまつり


磯貝さんが連載小説「箱」の全話に「ネムキリスペクト」のハッシュタグを付けました。というわけで全19話をアンソロジーに収録致します!ネムキリスペクト史上前代未聞の展開ですが、以下人気記事にあやかってPVを増やそうのコーナーです。(各話の雰囲気が伝わるように一行で内容を説明しています。)

「箱」第二話 児童施設という箱の中に暮らす私と小春に同じ中学の友達ができた。

「箱」第四話 児童施設という「箱」を卒業して一緒に暮らす二人。

「箱」第五話 小春に彼氏ができる。順調に男性恐怖症を克服しつつある。

「箱」第六話 小春は彼氏と会おうとする

「箱」第七話 咲の過去について

「箱」第八話 咲が同席してはじめて小春が彼氏と会う

「箱」第九話 小春が二人だけで男性と会えるようになる

「箱」第十話 睦夫が網タイツやパンプスフェチであることが発覚する

「箱」第十一話 四年が経過

「箱」第十二話 部屋という箱に閉じこもり潰れていく小春

「箱」第十三話 咲の母のエピソード 暗黒編その1

「箱」第十四話 咲の母のエピソード 暗黒編その2

「箱」第十五話 赤い箱、白い箱、黒い箱 咲が児童施設に入る前夜

「箱」第十六話 大暗黒 小春を救う話

「箱」第十七話 箱の中で作業を続ける咲

「箱」第十八話 小春と睦夫が一緒になる

「箱」第十九話 愛

ということで、磯貝さんの「箱」全話掲載です。
ネムキリスペクトのハッシュタグを人気順に検索すると磯貝さんの記事が上位に出てくるわけですが、これで上位20位くらいまで磯貝さんの独占状態になりましたね。ネムキリスペクトの歴史が変わった瞬間です。以上磯貝さん祭りの会場からお送りしました。

アンソロジーはこちらから

読者アンケート

恒例の読者アンケートです。下記フォームよりお気に入りの作品を三点お選びください。点数は集計されて本アンソロジーの優秀賞が決定します。
アンケートの回答締め切りは9月8日火曜日18時です。

次回テーマのアンケート

次回2020年10月号の「眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー」のテーマを決定致します。下記フォームよりご興味あるテーマに投票下さい。
一位同数の場合はムラサキの恣意で決定致します。こちらも締め切りは9月8日火曜日の18時です。

#小説 #眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー #ネムキリスペクト #殺人事件