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私花集「月【runa】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー201811」

noteユーザー様の新旧の秀逸な作品を一つのテーマで綴るアンソロジー「眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー」。2018年11月号は「月」がテーマでした。

自信を持ってオススメする珠玉の作品集。
是非眠れぬ夜のお供にどうぞ。

目次
01 photo「pm8:00」Azul+haloさん
02 music「星間飛行」わたむしさん
03 詩「ラップランドの詩」fuyuno coatさん
04 小説 「月、闇、ふたつ」クマキヒロシさん
05 exhibition「blue blue blue」kafkanakoさん
06 短編小説「どうして忘れていたんだろう」くにんさん
07 photo 「立待月」村山嘉昭さん
08 現代短歌「ワタシタチ休日は何時モシャボン玉 何ガオワッテモ始マッテモ」wakimizuさん
09 小説 「見たのだそれを。」ウネリテンパさん
10 版画「満ち欠け」45blue_さん
11 漫画「スクエアマン」電気こうたろうさん
12 ラノベ「月蝕温泉、沼正三」拙
13 music「かくれんぼ」歌唱かねきょさん、音楽ma-kunさん、歌詞ならざきむつろさん
14 漫画「アブダクション」てらだこうじさん
15 小説「冬の夜、月に罰せられる」民話ブログさん
16 Illust「遠吠え」monoさん
17 photo「つきにむらくも」牡鹿戸さん
18 music video「奥西菓折 かっこ付けても笑えない」tetsuさん

■アンソロジーはこちらです。
月【runa】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー201811|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/m/mcf5b6dd8df56

■解説
01 photo「pm8:00」Azul+haloさん
札幌で見る月。夜の8時。これから何かが起こる、そんな期待に胸が膨らみます。8時は夜の始まりの時間。
札幌のテレビ塔と月の対比がとても綺麗です。きっと楽しい事が待ち受けているに違いありません。


02 music「星間飛行」わたむしさん
星間飛行と聴くと私はサン=テグジュペリを思い出します。当時の飛行機は不安定で燃料も少なく航空は命がけだったそうです。
星間飛行。星の瞬きを見ながら、夜を飛びます。
一緒に同乗する君は、星の見せる幻でしょうか。
僕たちを月が見守っています。

わたむしさんは謙遜しておられますが、わたむしさんの作品はどれも圧倒的なクオリティです。(私のようなゴミムシは足元にも及びません。)
癒やされつつも心がざわめきます。


03 詩「ラップランドの詩」fuyuno coatさん
わたむしさんの美しい音楽の余韻も覚めやらず、舞台は北欧に飛びます。北限の氷の世界。真っ白な色彩に閉ざされて、しかし其処には温かに暮らす人々がいます。fuyunoさんがそんな風景を優しく詩に詠います。
シリウス、ダイアモンドダスト、雪のきらめき。ウォッカ、オーロラ、ぎんのフォーク。すべてが光っています。ただひたすらに美しい世界です。


04 小説 「月、闇、ふたつ」クマキヒロシさん
月光が明るい程、その裏側に影ができます。クマキさんの小説はその月に照らされた影です。私達は日頃人前で明るく振る舞って暮らしていますが、本当にその明るさに虚飾はないのでしょうか。
私たち自身が孕む狂気に気付かされます。
誰もが狂う。これは一つの真理でもあります。
とても恐ろしい話でした。


05 exhibition「blue blue blue」kafkanakoさん
可符香菜子さん。アートの方のようですがnoteの記事は殆どありません。本作品は個展の作品をまとめたもののようです。ホームページがあったようですが、現在は404です。
ただ公開された作品は非常に目を引きます。危うい潔癖です。青という色は生物が生きている限り表現できない色です。表現するものはスタイリッシュな死、と言った所でしょうか。(素人考えでスミマセン)

06 短編小説「どうして忘れていたんだろう」くにんさん
ユーラシア大陸の内陸を舞台にしたくにんさんの小説。月氏という世界史上、謎の多き民族がモデルになっています。月に纏わる独自の宗教観を持っていたという月氏。まさに現代に残された歴史ロマンです。中央アジアの悠久の歴史。現代は遥けき過去と遙けき未来を繋ぐ一地点でしかありません。そんな壮大な時間が偲ばれます。

07 photo 「立待月」村山嘉昭さん
神戸の月です。
まだ街の灯が明るく灯ります。沢山の人々が此処に暮らしています。この灯のもとに一体どれだけのドラマがあるのでしょうか。
それらの人々が不図、頭上に輝く月を見ます。

08 現代短歌「ワタシタチ休日は何時モシャボン玉 何ガオワッテモ始マッテモ」wakimizuさん
コメント欄に書いた事ですが、wakumizuさんの作品には殺気があります。その殺気の前に私は平静でいられません。これこそが文学を体験するということなのではないでしょうか。
この作品は自由律俳句、自由詩、或いは現代短歌です。575の調子でそっと嘯いてみて下さい。
これら連詩の奥行きが広がります。
そして添えられた最後の一言。
すべての隆起する感情がこれまでの人生の仮の結末であるように、この最後の一言こそが、この作品の全て、と私は感じます。


09 小説 「見たのだそれを。」ウネリテンパさん
ユーモアたっぷりの軽妙な口調でインテリジェンスを交えながら語られる小説です。
今回の登場人物はなんと鉤括弧(カギカッコ)です。我々が日頃扱う鉤括弧。「はじめに言葉ありき」の「」です。擬人化されてみれば確かにこれ程偉大な物はありません。図らずも鉤括弧と暮らすことになった「僕」。
文学を愛する、言葉を愛するウネリさんの浪漫が炸裂しています。


10 版画「満ち欠け」45blue_さん
版画です。版画とイラストを組み合わせただけで、それらの持つ意味は全く変わります。
同じ月を見た人がある者は喜びに打ち震え、ある者は嘆き悲しむのです。
人々のドラマツルギーは同じ定規で測った時に初めて浮き彫りになるものなのかもしれません。
とても素敵な作品だと思います。

11 漫画「スクエアマン」電気こうたろうさん
電気こうたろうさんの作品はジャンルで云えばシュールなギャグ漫画なのだと思います。
しかし、この作品を見たときに私は静かに感動しました。ナンセンスなギャグであることは分かっています。しかし、その構築された世界観があまりに美しかった。感動するばかりで全く笑うことはなかった。しかし、この笑いなき笑い、この挑戦はアリです。笑う以上に私は笑えた気がします。素晴らしい作品です。
との私の感受性にやや不安を感じておりました(物凄く疲れてる?)が、これを読んだクマキさんも感動した、と言っておられたので私も自らの感受性に自信が持てました。

12 ラノベ「月蝕温泉、沼正三」拙
私の作品です。このような破廉恥な作品を初っ端に公開したため、ネムキ一派が揃って変態文学に傾倒する、というシュールな事態を引き起こしました。というわけで、今回のアンソロジーはやや、破廉恥な作品が多く集まっているのです。

13 music「かくれんぼ」歌唱かねきょさん、音楽ma-kunさん、歌詞ならざきむつろさん
これは全く私のエゴなのですが、色んな経緯でこの曲を初めて聴いた時に私の下らぬ雑文(前掲の小説)のエンディングテーマにしたい!と強く思いまして、かねきょさんに掲載をお願いした次第なのです。
(何と申しましょうか、皆様のご参加下さるアンソロジーを私物化したようで申し訳ございません。謝ります。ごめんなさい。)
沢山のコメントが寄せられている作品で、既に指摘されておりますがこの曲の持つ「エンディング感」は非常に強い魅力です。魔力です。この曲を掛ければすべてエンディングに到達するという魔力を持っています。かねきょさんの歌声がまた素晴らしいですね。大変、力を持った作品です。


14 漫画「アブダクション」てらだこうじさん
てらださんの描く漫画はどれも視点がシュールでユニークです。そしててらださんの戦う姿勢はとても励まされます。(てらださんの某作品で、某社のキャラクターの二次創作があるのですが、それがまた何事かに挑んだ挑戦的な作品なのです。)

このアンソロジー「月」には「ネムキ派(最近命名された)」と呼ばれるメンバーが一般人に紛れて参加しておりますが、「ネムキ派」の特徴として極端に「打たれ弱い」ことが最近の分析で明らかになりました。
てらださんの「神経の頑健さ」を見習いたいものです。

15 小説「冬の夜、月に罰せられる」民話ブログさん
毎度、話が全く存じない方向に転がっていく民話ブログさんの小説です。脱線するためには脱線する才能が無ければ出来ません。脱線する為には本来の線路が見えていなければ脱線出来ません。民話ブログさんは人生の悲喜こもごもを経験された方なのでしょう。非常にうまい具合に道を外します。
皆様も、話の筋を追いつつ民話ブログさんの脳内構造に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
逸脱を楽しむ。
とても贅沢なことです。

16 Illust「遠吠え」monoさん
イラストレーターのmonoさんです。数々の素晴らしい作品をnoteで発表しておられます。
どなたが描かれたイラストも、沢山の音を紡ぎます。それは台詞であったり、生活音であったり、壮大な映画音楽であったりします。
monoさんのイラストから聴こえる音は「静謐」です。呼吸音すら憚られるような、静けさがしんしんと聞こえてきます。
街の絵から、人の絵から。そして、一連の狼の作品からも。遠吠えのこだまがいつまでも耳に残るような。不思議な体験です。

17 photo「つきにむらくも」牡鹿戸さん
牡鹿戸さんは、「花火」のアンソロジーで作品をお借りしました。この度はお写真を拝借しました。
花火の作品は花火の音を「ドンム」と表現されていて、その独特の音の捉え方が大変面白かった。
独特の世界を持っておられます。
その方の撮った写真。
夜更けの在来線です。
人もまばら。今日一日の終わりです。
このようなドラマ性を持った写真が私は好きです。

この度、沢山の月のお写真を拝借しました。
どれもドラマに溢れた写真です。
昔、土田世紀画伯が「同じ月を見ている」という漫画を描きました。映画化もされた作品ですが、私はそのタイトルになった一行詩(と呼ぶに相応しい)がとても好きです。

私達は数々のドラマを胸中に秘めて、有史以来、幾度も同じ月を見ています。


18 music video「奥西菓折 かっこ付けても笑えない」tetsuさん
このアンソロジーの最後です。
tetsuさんは映像制作者です。
そのtetsuさんが公開しておられるのは「奥西菓折」さんというシンガーソングライターのミュージックビデオです。
このアンソロジーはプロの作品を扱うことは控えておりますが、もう全く奥西さんの歌が頭から離れなくなってしまったので、アンソロジーの最後を飾る曲としてお借りしました。

タイトルの「かっこ付けても笑えない」は(笑)の事です。時代とともに言葉が崩れていくことを嘆きながらも真情は喪なわず、の精神を歌います。硬派な女性です。私からすれば、男であることが情けなくなるような、常に叱咤されているかのような歌です。
しかし、言葉を扱う「自ら」について突き詰めると、自ずと歌詞はこのような強さを帯びるものに思えます。叱咤されつつも、その強さに励まされるのです。
奥西菓折さんは現在もライブを多数こなしているようです。
tetsuさんの作った新作MVを観てみたいと思います。

月は月であって月でなく千変万化に姿を変える誠に不思議なものです。
アンソロジーに収めました作品は月を直接詠ったものもあれば、月の出ない物もありますが、総じてどの作品も月の異相であるかに思われます。
またここに収録した以外にも沢山の良作がありましたが、全体のバランス等考え、掲載する事ができなかった事が悔やまれます。いずれ、また月の企画で掲載のお願いをしたく思っております。

眠れぬ夜の18篇の月の物語。
どうかお楽しみ下さい。

月【runa】眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー201811|murasaki_kairo|note(ノート)https://note.mu/murasaki_kairo/m/mcf5b6dd8df56

■ハッシュタグ

#アンソロジー #私花集 #眠れぬ夜の奇妙な話 #ネムキリスペクト #小説

■皆様にご相談
さて。
皆様のご協力によって、
当月も素晴らしいアンソロジーを編纂することができました。大変満足のいく仕上がりになりました。(私の解説力が至らないのはご勘弁下さい。)

来月の12月号のお題は如何致しましょう?
どなたかご興味ある題材あればコメント欄等でお気軽にご発案下さい。
先月の候補の「氷」、現在公募中の「メルヘン」、時事的に「クリスマス」、歳時記で云えば「紅葉」と私の思いつくものはこんな所でしょうか。
宜しくお願い致します。