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眠れぬ夜の奇妙なコメント師「フォビア」NEMURENU43th

眠れぬ夜の奇妙なコメント師

NEMURENU43集【フォビア】には、多くの方にご参加頂きましてありがとうございました。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーがまとまると、何処からともなく「ヤツラ」がやってくる!

今回も、【フォビア】にコメント師様がやってきましたよ!

それでは早速コメント師様たちからお話を頂戴致しましょう!

NEMURENUバーマゼンタ


おねえさまへ・・・様

image - りりかるすぴりっと

コメント師プロフィール
LoveでPeaceな水瓶座的博愛主義者のくせに好き嫌いが激しい。やっぱり百合も経験したい。その場合はドSでタチかも。可愛い女性を縛って弄びたい。朝美絢さんみたいな方ならお姉様😻ってなっちゃうかも。でも百合は処女なの💖

コメント師様に質問
「最近のお気に入りは何ですか?」
Night Blooming Lilyという香水の甘ったるい香り
「宝くじに当たったら?」
マンション購入。あとはスリランカのアーユルヴェーダの施設で数ヶ月過ごしたり、世界中、旅したい。
「好きな動物はなんですか?」
猫。だって可愛いんだもの。

おねえさまへ・・・が「愛とヒューマニズム」ジャンルで選ぶNEMURENU三題
・03小説「船舶コードSOE000」くにん,
・06コラム「きっとひろく使えて面白い、きっちり哲学心理学を応用していて明瞭な、不登校のおはなし(導入部分)」虎馬鹿子
・08小説「膜」海亀湾館長

ああ、何と云うこと。ちょっとぉ、ムラサキさん。コメント師参加のハードルがまた上がっちゃったじゃないですか。ジャンルを選ぶ?似顔絵アイコンも?遊び心満載ですけど……。

む・ず・か・し・い!

悩みました。あと、ちょっと心配です。コメント師の参加、減っちゃいませんかねぇ。

……でも私やってみますよ!
我らがムラサキさんが考えてくれたのですもの。だから選ぼうと思っていた作品とは少し内容が変わってしまったよ。ごめんね、その人たち。

選んだジャンルは愛だのヒューマニズムだの。

03小説「船舶コードSOE000」くにん氏


くにん氏と云えばハートウォーミング。彼の作品を読むと忘れちゃいけない人間の心……普段忘れている……を思い出す様な温かさに包まれる。

>>「孤独が好きだから」とこの仕事を選ぶ奴は、大抵の場合人恋しさに苦しむことになる。宇宙という広大な海の中にぽつんと自分一人放り出されるということは、実は大変に苦しいことなのだ。

私は孤独が好きだけれど、絶対に人恋しくなってしまうだろう。
孤独を愛する対人恐怖症の主人公が乗っているのは、地球生まれの最後の船。人々の郷愁と云う荷物を乗せて宇宙空間を漂う幽霊船。それは愛が燃料なのではないか。

この作品はSFでファンタジーだけれど読者にとって、愛を感じずにはいられない物語。
宇宙と云う美しくも恐ろしい広大な海。
くにん氏の描いたその世界。
子供の頃から「早く宇宙の還りたい」と思っていた私はとても癒された。そして地球を去ったら「地球が恋しい」と思うのだろうか、とあっという間に過ぎてゆくであろう人生を思った。

06コラム「きっとひろく使えて面白い、きっちり哲学心理学を応用していて明瞭な、不登校のおはなし(導入部分)」虎馬鹿子氏


これは虎馬鹿子氏の愛が書かせたものであると私は感じているし、哲学・心理学はヒューマニズムの一端を担っていると思うので、選ばせていただいた。
なんだかとっても難しい様でいてけれど心に響いてくるおはなしである。
私は不登校ではないが、自分の魂を殺さないために自主早退を習慣としおうちで読書に勤しむ文学少女……と自分では思っていた訳であるが、「あいつとんでもねぇヤンキーだよ。不良!不良少女!」って云われてたそうで吃驚したことを思い出した。
今の子供たち、これからの子供たちには選択権があるといいな、と思う。でも、ホームスクーリングも大変そうだなとか、お母さんの負担が増えるのかな?とかも思うけれども。


08小説「膜」海亀湾館長


エレガントな変態は存在するのか?答えは彼の幾つかの作品が教えてくれる。きっと最近の海亀湾館長氏は悪戯っ子の様にわたしたちを吃驚させることに嵌っているに違いない(ねえ、そうなんでしょう、海亀さん?)。

読み始めは虎馬氏のおはなしに出てくる学校恐怖症的なもの?もしくは対人恐怖症?と思っていた。だから「膜」とはきっと暗喩的なものだろうと。
しかし物語が進むにつれて見られる方も自分が見る方も辛そうだと、段々わかってくる。

そして突如セックス!笑
ああ。わかる。少女の頃私もそう思っていた。あの懐かしい感覚が蘇った。でもわからないな。きっと彼女の「膜」と少女だった私の透明の「膜」は別物の様である。その膜に包まれて裸で外に出ようなんて思ったこともなかった。

海亀湾館長氏の更なるブッ飛んだ作品が待ち遠しい。


NEMURENUバーG


夏目坂出水 様

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コメント師プロフィール
つくるひとをみるのがすきなひと

コメント師様に質問
最近のお気に入りを教えて下さい
「最近のお気入りは鶏むね肉です。」

夏目坂出水が「ファッション」ジャンルで選ぶNEMURENU三題
・08小説「膜」海亀湾館長,
・09小説「Black Bird Cry」りりかる
・12小説「眼丩蝶」ムラサキ

08小説「膜」海亀湾館長さん
自作の詩を掌編に改める、という試みのこの作品。詩と本作を読み比べてみると、「私」の服装のついて「オフホワイトのパーカーと洗い過ぎて色が落ちたデニムのスカート」という描写が加えられていることに気づきます。この服装や「学校」という場所からも、10代の女性が想起でき、その時期特有の性や他への嫌悪や拒絶が色濃く感じられ、それがぴたりと「膜」と結びついている作品だと思いました。(でも、主人公をいろいろと想像できる詩の方も良いと思いました。)

09小説「Black Bird Cry」りりかるさん
「黒ずくめの服。腰まである黒髪。サングラス。」「スウェエドの黒のポンチョ」とにかく全部が黒い「私」。洋裁をしている方に「黒」はとてもむずかしい色だ、と聞いたことがあります。生地の良し悪し、質感がはっきりとわかるからだと聞いたような。鴉もそうですが、黒は美しい色です。「私」が黒をまとっていたのは、勇気であり、感性を守る最大の手段であったのかもしれません。静かな語り口の中、胸を突くような強さを感じる詩でした。タイトルも素敵です。

12小説「眼丩蝶」ムラサキさん
見てはいけないものをみてしまったような、怪しくうつくしいムラサキさんの小説。まず、最初に「蝶」と「眼」が関連をもって描かれるのが斑鳩嬢の蝶の耳飾りです。ゆらゆらと揺れること、裏と表がふとした瞬間に入れ替わること、ひとの顔(目)に一番近い装飾具、それらを含めて、指輪や首飾りではなく絶対に「耳飾り」でなくてはならないのです!とても印象的で、これからはじまる「なにか」を予感を感じさせるのにこれ以上はないアイテムでした。興奮しました!

NEMURENUバー青

ゴテンマリシティさん

300300glass - 海亀湾館長

コメント師プロフィール
ゴテンマリシティの中の人に近付くようにアイコンを作りましたが、実物より何倍も小綺麗な仕上がりになり、焦っています。
・白髪は小学生の頃から
・頬にあるのは色素班
・シワのアイテムをほうれい線ではなく目尻につけたところに自我意識がでてしまった
・眼鏡は運転のときだけ

コメント師様に質問
最近のお気に入りはなんですか?
「ありあけ横濱ハーバー」

ゴテンマリシティさんが「文学・哲学」ジャンルで選ぶNEMURENU三題
・03小説「船舶コードSOE000」くにん
・ 11小説「盲腸線より南へ」朝見水葉
・12小説「眼丩蝶」ムラサキ

03小説「船舶コードSOE000」くにんさん

 SF映画は人気があるのに、SF小説はそれほど多く読まれていない、とはよく言われていることですが、言い換えれば、人は見たことがないものを一から想像するのが億劫だから、ということなのではないでしょうか。ハードSFや宇宙SFが私をSFの読書に引き込んだ入り口だったので、くにんさんのこの作品は郷愁を感じるとともに、強烈に引き込まれました。SFは、作品の舞台設定を小説の中に書き込んで読者に知らせる必要があるのですが、この作品は実にスマートにクリアしていると感じます。宇宙空間に実際に身を置いた経験がなくとも、この小説を読んでいる間、私は宇宙港の管制室から、入出港する宇宙船を見物している気分になりました。想像するのがまったく億劫に感じませんでした。緑色のレーザーと青色のレーザーに水先案内されて着岸するなどというイメージに、実際私は痺れまくっていたのです。さらに、宇宙空間における絶対的な孤独を、「対人恐怖症」という“ガジェット”を利用して、ある種、哲学的な深淵へと主人公を曳航する手腕にも唸りました。私自身、SF作品を書いたときに思ったことがあって、それは、作品の閉じ方に工夫がないと終わらせることができない、ということでした。SF短編の決着は、結構難しいと思っていたのですが、くにんさんは「郷愁」とそのあとに出てくるもうひとつのワードで気持ちよく決着させていて、ああ、これでこの作品を自分は忘れることができなくなったと思いました。

11小説「盲腸線より南へ」朝見水葉さん

 袖を引く、という言葉には、文字通り、相手の袖を引っ張って誘導するという意味もあれば、注意を引く、という意味でも使われます。この作品の中で主人公たちは、幾度となく袖を引かれますが、それはものを言わぬ存在が意志を示していることの暗示にもなっています。ひとつの言葉に多重の意味を積載して駆動するこの分厚い仕様こそが、朝見文学の魅力と言えるものです。

 2LDKの住まいに夫婦が暮らしていますが、そこには得体の知れない誰かの気配があります。その「気配」を、作者は直接書くことはせず、出来事や夫婦の会話から幽かに窺い知れるように言葉を配置しています。つまり「気配」を表現するために、「気配」そのものを文章の背後に隠して伝える方法で書かれているのです。この作品の一章を読んだとき、私ははっきりと明示されてはいないけれども、何かがここでは起きているのだと思ってゾッとしました。怖くて底知れない不気味さが、文章の裏側に張り付いているのを感じたのです。
 これは、小説の世界を広げていく書き方だと思いました。限定した事柄を最初の方でたくさん提示すると、話がわかりやすくなる分、小説の世界は狭く小さくなります。しかし、この作品は、盲腸線を使い、バスを使い、吊り橋を使い……と、どんどん隘路のように狭まっていく地域へ主人公たちは向かいますが、小説の世界そのものは逆にどんどんと広がっています。カラスに鼠をあげる老女、膨れた腹をして橋の渡り方を警告するバスの運転手、吊り橋で腰に抱きつく見えない女の子の気配、兎の尻尾を付けたペンションの職員、血を溜めたようなワイン風呂など、次々と怪しい人物が登場したり不気味な出来事が関連なく起きたりする展開に、私は予測のつかない小説の面白さを体験すると同時に、小説特有の広がりを感じました。後半の鍾乳洞のシーンではそれがピークに達したように思います。

 タイトルにある「盲腸線」。実は初めて聞いた言葉でした。また、この作品の最終章には、「クルドサック」というこれまた無知な私には耳慣れない言葉が出てきます。ダムに沈んだ町の住人に与えられた居住区に点在しているそれが、車が方向転換できる袋小路のことだとわかったとき、盲腸線と同じような意味で響き合うこの言葉を用いたのは、ただの偶然ではないと私は思いました。暗示と暗喩、飛躍のある会話、そして言葉の射程が長いことも、私が朝見作品に引き寄せられる理由になっています。

12小説「眼丩蝶」ムラサキさん

 最初に投稿されたとき、タイトルの「丩」が読めなくて、おお、何だろう、面白そう、と思ったのを覚えています。今し方、「糾」を調べたら、「撚り合わせる」や「もつれる」という意味もあるとわかり、読んだストーリーを思い返し、皮膚に浮き出た無数の眼球のもつれ合いや、夥しい眼球模様の乱舞を想像して鳥肌を立てています。たしか、怪奇漫画家の古賀新一氏や、現役の純文学作家吉村萬壱氏は、怖い作品や気持ち悪い作品を書いていながら、自身は恐がりだと話していたのを読んだ記憶があるのですが、ムラサキさんも目玉模様が苦手なようなのに、やはりその怖いものを作品にしてしまうところは、創作者の性分というものを感じさせます。終盤のシーンではそれが見事なほど結実していて、ビジュアル的にも凄まじい仕上がりに思いました。
 私が注目したのは、主人公が会話を始めると、独特の空気感が生まれるところです。編集デスク、支配人、斑鳩、ビジネスホテルのボーイなど、主人公が彼らと対話するシーンには何かしらコントめいたような面白みを感じます。会話文と地の文の出し引きで、間とリズムを醸成させているようで、こういう形で主人公の性格が照射されて浮かび上がるような書き方に、私は憧れます。グロテスクなのに、陰々滅々たる話なのに、この作品には深刻さを吹き飛ばす妙な明るさがあり、怪奇とユーモアを撚り合わせて作られたような、ムラサキ文学の魅力の一端をちらりと覗かせてもらった心地です。

NEMURENUバーB

そんなひろしに騙されないぞ♡劇場 様

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コメント師プロフィール
夢の話です。
光栄にも民話ブログさんを取材させていただく機会に恵まれnoteに記事をアップいたしましたが、何かこの世(あの世?)のタブーに触れてしまったらしくペナルティとしてループに入って出られないと困ったところで目が覚めました。

コメント師様に質問
「最近のお気に入りはなんですか?」
なんだろ。
「宝くじに当たったらどうします?」
布団の全てを否定する「睡眠用うどん」https://www.wwdjapan.com/articles/962965
「好きな動物は何ですか?」
断然ヒト。面白いから。

そんなひろしに騙されないぞ♡劇場が「文学・哲学」ジャンルで選んだNEMURENU三題
・03小説「船舶コードSOE000」くにん
・07漫画「イボイボの世界 第1話『よろしくイボイボ』」コココミはすまる
・ 08小説「膜」海亀湾館長

小説「船舶コードSOE000」くにん様

宇宙空間に一人取り残された主人公が、狂いそうになるお話、『火の鳥』にありましたっけ?
なかったかもしれませんが、昔はそういうものだったはずと、記憶をたどります。
『ぼく地球』(『ぼくの地球を守って』)にもあったかと。竹宮恵子にもあったような、なかったような。
そんな旧来の孤独のイメージを、やさしくなでるように、さらりと塗り替えてしまわれ、すげー!と思いました。
正統派ネムキ紳士でいらっしゃるくにんさんのSF、堪能いたしました♡


小説「膜」海亀湾館長様

膜に覆われてしまったら、剥がすか安心するかあたりがふつーの発想と思われましたが、そうきたか。きちゃったか!いやん。なのにそんなに品がよろしくて、困ります。嘘です。たいへん喜んでおります。
も~海亀湾館長さんたら、変態紳士でいらっしゃるんだからっ♡


漫画「イボイボの世界 第1話『よろしくイボイボ』」コココミはすまる様

ネムキ派の私はもちろんコワイもの好きですが、やはりゾクゾクしたいのねと、改めて気づいた次第でございます。
いわれてみれば、凸凸より、凹凹の方がゾクゾクします。
いわれてみれば、凸凸や凹凹を見るとき、見られています。
いやーーん♡♡(と、ふたたび喜ぶ)。

マガジン「イボイボの世界」の中で、角栓剥がしの快感についても触れられておいでです。私にその経験はありませんが、しかし。

さて。常識という当たり前は、魚にとっての水に例えられます。魚は水から出て初めて、水の存在に気づきます。

私は、常識を、人のかたちを作る一枚皮だと感じます。
躾(しつけ)という糸によって、私たちは、物心がつく以前より人として繕われています。
と、ほつれて初めて気づきました。そして、なんとも気持ちようございました。いやん。
後始末もたいへんなのに、つい、くせになります。

哲学とは「常識を疑うこと」といわれたりします。
自分の身の一部のごとく当たり前すぎるものは、疑おうにも対象として意識することがかないません。哲学するためには、まずは「常識」を自身から剥がさなくてはなりません。あとは自ずと疑わざるをえないとなります。
「目から鱗」もこの比喩と思われます。
今回、私から「当たり前」を剥がして下さった三作品について、コメントいたしました。きゃふん♡
気持ちよかったです。ありがとうございました。

NEMURENUバー

亡骸三太夫 様

image (3) - 村崎カイロ

コメント師プロフィール
漢中天坑群に月兎と一緒に暮らしている。主食は煎餅。好きな芸能人は羅生門綱五郎。
関節が弱い。最近血液が緑色になる。
好きな言葉は「鯨骨生物群集」

コメント師様に質問
「宝くじに当たったらどうしますか?」
宝くじに当たったら、地下室と貯蔵庫を作って誰にも会わない生活を送ります。

亡骸三太夫が「オカルト・不思議」ジャンルで選ぶNEMURENU三題
・01イラスト「P H O B I A」ぬりくぶー
・05小説と朗読・三味線「盃」武川蔓緒
・11小説「盲腸線より南へ」朝見水葉

海洋恐怖症である。
海が、怖い、と端的に云えば海洋民族である秋津洲の邑民は、寄せて返す小波の何が怖いかと怪訝に思うに違いない。
だが海洋恐怖は浜辺の瀬戸波が恐ろしいのではない。
諸兄らも想像してみ給え。浅瀬を進んで沖に出でて、陸地も見えなくなって、進路を無くした小型ボートは到頭未知の海域に着いたのだ。
凪いだ海は一見して何も無い。穏やかだ。日差しも暖かい。平和だ。だが。その海域の深層には太古の巨大亀がいる。島かと見まごう大きさで深層域を悠々と泳ぐ。他にもいる。首長竜、古代鰐、クラーケン、メガロドン、毛鯨と数多の怪物達が現れる。蛤が泡と蜃気楼を吐いている。海馬が波間に遊んでいる。触手貝、吸血魚、肉鰭類。海賊船を住処にする大蛸とサルガッソーの亡者たち。
ボートが転覆して黒い海中に沈んだ私が、海洋の秘密の怪物達に出逢って仕舞うことが、海洋の恐怖なのだ。この世は恐怖に満ちている。だが、その恐怖に冒険に魅了されて止まない。
この度は恐怖症、がテーマであった。恐怖症をテーマにして愛を描くことも自然礼賛を描くことも出来るのが、当企画の奥行の広さと言えるが、折角なので恐怖症の有り様に鳥肌立って震えた三題を選ぶ。

朝見水葉さん「盲腸線より南へ」
武川蔓緒さん「盃」
ぬりくぶーさん「FOBIA」

今回の朝見さんの作品は怪奇現象に彩られ異界との交流に満ちている。冒頭から心霊現象が止まず、死臭が漂う。心霊と奇怪の住人。戦慄っとする恐ろしさが描かれている。が、主人公にとっての恐怖は心霊でない。主人公の恐怖は高所恐怖症であって、一連の霊的現象は恐怖でない。恐怖は極めて個人的現象である、という事に起因する感覚相違。「怖いけれど怖くない」それが本作品の牧歌を醸して、心霊と木乃伊と廃墟を舞台にハートフルな童話世界を作っていた。小説、は旅行のようなものに思う。小説が呈する世界に読者もまた旅して、本編の余白でその世界を観光する。この村に赴き、この風景を見たい、と思う作品だった。

武川蔓緒さんの今作は異様の雰囲気で、世界観が怖い。舞台が昭和二十年代の想定、という事であるので初期昭和恐怖症のようなものがあるのかもしれない。近代は明治大正昭和とあって、戦後の歴史教育のお陰で、日本の近代史には陰がある。その近代が描かれる事に、見てはいけないものを見るような薄ら寒い恐怖を感じる。そこに三味線の音が神経を不安にさせ、悪夢幻想的な世界観を本作は描いていたように思う。

ぬりくぶーさん、という方を今回の企画で初めて知った。こんなに素晴らしい才能がnote公式の影に細々と活動されている。
最近、上司様と食事する機会があって、鮪のカマを食わせる食事処に行って、昼さ中の食堂で黙々、骨の隙間の身肉を箸でつついた。カマの醍醐味は思わぬ所に思わぬ身肉の塊が発掘される事にあるが、noteにもまた同様の愉しみがある。こんな所にこんな人が。
noteの表層はIT絡みの、どちらかと云えば商業主義とボタンの連打数を競う社交性によって成り立っているように思うが、公式の陽の光が届かぬ深層域に潜ると奇異なる作家が奇異なる活動をしていて、驚く。
こうした驚きは海洋恐怖にも似て、noteは沖合の凪いだ海表面ではなく、深海に向けて潜ったDEEPnoteの方が圧倒的に怖くて面白い。そのような方に畏れながらも接点を取らせて頂く事ができる本企画は大変面白い。
noteの深層域、DEEPnoteには我々が見た事もないような怪物が、悠々と海遊するのだ。


NEMURENUバー紫

コメント師の皆様、今月もありがとうございました!

次回、44thのテーマが決定しているよ!

速報でおしらせしましたが、次回NEMURENU44thのテーマは「透明」に決定!


次々回のテーマ募集中です

NEMURENUはもうすぐ四週年!

今月もよろしくお願い致します!

#ネムキリスペクト
#小説
#NEMURENU
#フォビア
#透明






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今回からコメント師様に自画像の作成を依頼しております。

突然のシステム変更に「一体、コメント師企画は何処に向かっているのか」と思った方もいることでしょう。

上記の記事はかつて「ファミコン」が全盛期だった頃に「ファミ通」という雑誌の人気企画「新作ソフトクロスレビュー」について解説されたもの。雑誌を代表する「クロスレビュアー」による忌憚ない意見が人気でございました。
(※「クロスレビュー」はファミ通による造語であって、当該システムも当雑誌が考案した画期のものであった、らしい。)
当たり前のことですが、レビュアーによって評価は全く異なる。評価とは斯くも朧げなるものです。そのような「相対」の中から自らにとっての「絶対」に近しいものを感得しようとする。で、あるからこそ評価の質が問われるのであって、そのためにも「どのような人間が評価するのか」、その評価者のひとなりを知ることは重要です。

SNSのアカウントにアイコンがあるように、コメント師様の視覚情報があることで、ひとなりが強調され、作者読者の理解につながるように思います。

いづれ当代きっての名物コメント師が生まれることを期待して、コメント師企画は今後も変化を続けていくと思います。

ご参加者、読者様、コメント師様、ROM様の皆様におかれましてはアンソロジー、コメント師含めて当企画の行く末をお宜しく見守り下さい。