漢詩「去る者は日に以て疎し」/翻案「死んだあなたを忘れる」

漢詩の勉強です

去る者は日に以て疎し 無名氏

去る者は日に以て疎く
来る者は日に以て親しむ
郭門を出でて直ぐ視れば
但だ丘と墳とを見るばかり
古墓は犁(す)かれて田と為り
松柏は摧(くだ)かれて薪と 為る
白楊(はくよう) に悲風(ひふう)多からん
蕭蕭(しょうしょう)として人を愁殺(しゅうさつ)す
故の里閭(りりょ)に還らんと思い
帰らんと欲するも 道 因る無し

【語句解説】

疎し…薄らぐこと。死んだ者に思いを寄せる事は日に日に薄らぐ。

親しむ…親交の厚いこと。生きている者との時は重なり、親しさを増す。

郭門…城下を囲う門。城郭の外は田園が広がる。
丘と墳…小高く盛り上げた墓。墳丘墓。

松柏…墓の周りに植えた松や檜。

白楊…はこやなぎ。和名は「やまならし」。山鳴らしの名前は微風でも葉擦れの音がよく聞こえることから。微風ではさらさら。強風ではザワザワと葉擦れが鳴る。西洋種の別名はポプラ。

悲風…秋風。秋には悲しい風が吹き、人心を物狂わす。

蕭蕭…パラパラ、サラサラの漢語的オノマトペ。

秋殺…秋の風に吹かれて無性に憂いが生じること。

故の里閭…閭は門のこと。里閭で村里の意味。故の訓読みは「ふるい」。故には「死んで亡くなった」の意味もある。故の里閭で「古き村里」の意。
これを故里の閭と読み下す方もいる。第三句の郭門に対を為すために閭を門の意味で取り扱うべきだろうか。

因る無し…頼るべきものが無いこと。ここでは帰る方法が見当つかないこと。

【大意】
死んだ者は忘れ去られて、かつての親交は生きている者に取って代わる。古人の墓も今や鋤かれて田畑になった。ただ忘れ去られるだけ。なんと切ない話だろう。もう嫌だ。田舎に帰りたい。でも帰り方分からない。

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以下は蛇足です。
漢詩を感覚的に訳す試みですが
独善が強過ぎて大概、失敗しております。
ご不快な方はブラウザバックでお戻り下さい。
雑文を失礼します。

詩人訳「死んだあなたを忘れる」
(無名氏「去る者は日に以て疎し」翻案)


死んだあなたを忘れてしまうことを
お許し下さい
生きている私の体に
新たな日々が重なることを
お許しください

窓から外を眺めましたら
あの交差点では
交通事故
あの街角では
通り魔殺人
このビルでも
飛び降り自殺

死体だらけの街です

死体だらけの街を
清掃業者が
丁寧なブラッシングで
綺麗にします

街は蕭蕭と平穏です

蝿取り器のように
入ったら出られぬ街です
蝿の骸が また ひとつ

街路樹に秋風が吹きました

しょうしょうと
しょうしょうと

故郷に帰る道も閉じ
死ぬることもできず
今日も明日も
この窓から

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#インプットの時期