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【フォビア恐怖症】解題NEMURENU43th

眠れぬ夜の奇妙なアンソロジー第43集のテーマは「フォビア」恐怖症でした。我々は何らかのフォビア(恐怖症)とフィリア(嗜好症)を抱えております。愛と恐怖は紙一重。皆様のフォビアは何ですか?

NOTEの新旧作品を集めたフォビア13編が集まりました。特異の恐怖譚をお楽しみください。
眠れぬ夜の奇妙なアンソロジーNEMURENU 43th今月も始まりますよ!


目次

01イラスト「P H O B I A」ぬりくぶー
02コラム「フラクタル次元を考える」ツイート宇宙の星屑板
03小説「船舶コードSOE000」くにん
04コラム「オディロン・ルドンとは」ジュウ・ショ
05小説と朗読・三味線「盃」武川蔓緒
06コラム「きっとひろく使えて面白い、きっちり哲学心理学を応用していて明瞭な、不登校のおはなし(導入部分)」虎馬鹿子
07漫画「イボイボの世界 第1話『よろしくイボイボ』」コココミはすまる
08小説「膜」海亀湾館長
09小説「Black Bird Cry」りりかる
10朗読「捨てられた市松人形(人形恐怖劇場 第3話)」大大阪人形
11小説「盲腸線より南へ」朝見水葉
12小説「眼丩蝶」ムラサキ
13詩「アリバイフォビア」千葉貴史

NEMURENU43th「フォビア」マガジンはこちらから


解題

01イラスト「P H O B I A」ぬりくぶー

愛の形が様々であるように、恐怖の形も様々です。
世の中にはこんなに沢山の恐怖に満ちている。
愛を、言葉に出来ないように恐怖もまた其れを説明する事はできません。

世にある恐怖をAからZまで並べたぬくりぶーさんの絵本の紹介です。
この不穏感、エドワード・ゴーリーの絵本のようです。

私は観覧車に乗ると身がすくんで一歩も動けなくなり、頂上に達する頃には目を開ける事も出来なくなる類の高所恐怖症ですが、O型人種の家人たちには其れが理解出来ないらしく嘲笑されます。
何故、理解出来ないのか人間性の粗雑なO型人種たちめ、と思いますが恐怖症は共感し合えない。
恐怖は極めて個人的事情の産物で、恐怖症は孤独と共にあります。同じく愛もね。

例えばぬくりぶーさんの恐怖症辞典には「日本人恐怖症」なるものが掲載されておりますが、どのような経緯でそんな恐怖症に取り憑かれたものか。
饅頭怖い、と落語のように他人の恐怖は時に笑いを誘いますが、これ、当人にとっては死活の問題です。
観覧車とかロープウェーとか、リフトとか。一大事ですからね。笑っちゃ不可ない。

そんなぬくりぶーさんの収集した恐怖辞典。実に読み応えがあります。



02コラム「フラクタル次元を考える」ツイート宇宙の星屑板

そもそも、この言葉にならない恐怖とは人間心理のいづこから来歴したものか。と、恐怖の根源について説明を試みたのが、「ツイート宇宙の星屑版」さん。
認識の礎となる定点がに混乱が生じる事で生理的嫌悪感に繋がる。
認識の混乱が恐怖となる事については思い当たる節があります。
例えば私はジャノメチョウの眼状紋がちょっとヤバい。もし悪戯にアレを近付けて私を怖がらせて楽しもうとする輩がいたら、私は刺殺する自信があります。本気です。

私の中の認識は、アレは眼球です。翅の眼で私を見据えている。としか思えない。
しかし、それは誤認であって実は、アレは目ではない。私を見据えていない。ここに認識の混乱が起こります。
そう、アレは目ではないから、怖がる必要は、ない。無いんですよ、そこの私。
目であるなら、顔であるべきで、しかし、その顔が無い。羽に顔のある生き物など見たことない。異形のクリーチャー。このような認識の誤認が短絡すると、ヤツを見ただけで身がすくんで動けなくなる、という身体反応が完成します。
もう本当に勘弁して。

あ、この記事には集合体恐怖症の画像が掲載されてるので閲覧する時は気をつけてね!



03小説「船舶コードSOE000」くにん

くにんさんの小説。
主人公は対人恐怖症の宇宙船乗りで、相棒はai。
もの哀しい、うら寂しいお話でした。
ここに登場するのは直方体を組み合わせたような宇宙船ですが、直方体というものは無機的、反生物的といいますか、日本の墓石が四角く整っていった事に得心を得ると言いますか、モノリスは人智を超えるとか。畏敬を感じさせる造形です。しかし、あまり深く考えると今度は直方体恐怖症など奇病に罹ってしまいそうなので、とりあえず、こんなところで。

04コラム「オディロン・ルドンとは」ジュウ・ショ

19世紀末に生まれた退廃芸術を世紀末芸術と括る事があります。ムンク、クリムト、ロートレック、文学ではオスカー・ワイルド、ユイスマンス、建築ではガウディ。
その世紀末芸術を代表する画家にルドンがいます。
ルドンの石版画集には悪夢的な作品が続々と並んでおります。巨大な眼球気球、人面花、人面蜘蛛。大変気持ちが悪い。しかし、その気味の悪さに心惹かれます。怖いもの見たさ。という言葉がありますが、怖いものに何故か私たちは心惹かれるのも事実です。
恐らくルドンの石版画は自身の恐怖を描いたもの。自らを囚え、魅了する恐怖との戯れであったのでは、と私は思います。
ジュウショさんの記事はルドンとその周辺の知識が厚みを持って解説されます。大変勉強になります。


05小説と朗読・三味線「盃」武川蔓緒

武川蔓緒さんの小説。
ヤモリによく似た男が女に連れられて向かった先は。
本小説は最後に武川さんの朗読と三味線奏者の伊吹清寿さんの演奏が公開されております。
武川さんの朗読に三味線の音色が実に良く合います。音というものは不思議ですねえ。余韻が消えても、いつまでも音が残ります。目に見えない、音に聞こえないけれど確かにそこにあるもの。幽霊のようですね。
この朗読三味線ユニットには「るりんかるりん」という名前に決定とのこと。



06コラム「きっとひろく使えて面白い、きっちり哲学心理学を応用していて明瞭な、不登校のおはなし(導入部分)」虎馬鹿子

センセーショナルにしてセンシティブな不登校のお話です。
この話題は意見が別れて過熱しやすいので、公やけのメディアで語るのは少し恐ろしいですね。電波恐怖症の原因になりかねない。その未踏の原野を進軍するのが、虎馬さんです。オディロンルドンが悪夢の世界を踏破しようと試みる事に似ているのかもしれません。
社会に出てみると学校という場所は随分おかしな場所ですね。
子供たちを集団に集めて捕らえて小部屋の中で強制的に集団生活をさせて、国家の教育プログラムで洗脳していく。そのプログラムから外れるものを落伍と呼んで、教師と呼ばれる大人が彼等に鞭打つ。ええ、なにこれ、こわい。現代人にとってはすっかり当たり前になった学校制度ですが、制度が始まったのはたかだか150年前という真新しさ。それが、宇宙開闢以来の普遍の真理の如き顔で君臨している。
自然状態にあっては、農耕と狩猟と開拓によって暮らしていた人類がこのような所謂、社会を形成する事は邪悪な宇宙電波に毒された陰謀論を感じます。
なんか、人類って虫みたいですね。蟻とか蜂とか社会性の。
と、ついつい思索が泥濘に堕ちる不登校の話題でした。



07漫画「イボイボの世界 第1話『よろしくイボイボ』」コココミはすまる



昔、NOTEには電子出版会社の作る公式マガジンが幾つもあって本記事のコココミさんもそのひとつ。独自路線の漫画が多く面白かったです。更新は絶えておりますが、既出の作品は残っておりますので覗いてみて下さい。はすまるさんの漫画もコココミでは人気作品であったような気がします。フォビアとフィリアは紙一重である、と冒頭述べましたが、フォビアの大脳攻撃に対する防衛機制が過度になると恐怖が逆転して愛に代わる類のアレが発生したものに思えます。精神の蹂躙を垣間見るようで奇特の嗜癖を見るのは恐ろしい事です。
そうして大脳の誤作動から集合体恐怖症を克服し集合体嗜好症となったはすまるさんが、集合体への愛を語る連載作品。これを読み終えたとき、きっと皆様にも新たな愛が萌芽する事でしょう。


08小説「膜」海亀湾館長

海亀湾さんの小説。以前作られた詩を小説に変えたもの、とご本人の説明にありました。
社会、とは汚穢と聖餐。太ったローマ人たちの驕奢。全くもって理知外の世界です。そのような気狂いの世界に対して感じる被膜。これは自らの防護膜であると同時に自らの秘部を隠すヒジャブでもあります。被膜の外側世界の破廉恥さ、を凌駕する圧倒的な破廉恥が被膜の内側に生み出されるラストは衝撃的です。変態の世界を打倒するにはもっと大なる変態の手による。と、黙示録的な高揚があります。飛躍して解釈するに男ならパンツ一丁で街に出たまえという事に思います。パンツは三島由紀夫も愛したブリーフです。グンゼです。



09小説「Black Bird Cry」りりかる

光の三原色はRGB。レッド、グリーン、ブルー。色の三原色はCMY。シアン、マゼンタ、イエローです。
黒、という色を作るにはCMYの顔料を全て混ぜる事によって作られます。つまり、黒は全ての色を内含していると言えます。光を使って黒を作るにはどうしたら良いでしょう?正解はあらゆる光を充てないこと。暗闇が黒になります。
人間の眼球が色を捕らえる、という事は物質に彩色された色を見ているのではなく、その物質が反射する光をみております。空に虹が浮かぶように光は様々な色の光の集合体。光が物質に当たった時に、物質の性質によって吸収する光と反射する光が別れます。青い光を反射する物質は青く見え、赤い光を反射する光は赤く見える。このようにして人間の目は反射された光を捉えて色と認識しております。

改めて黒、という色を考えてみると黒く見える物質は全ての光を吸収する。光を反射しないため黒に見える。
光の反射のない其所に闇が生まれている訳です。りりかるさんの本作は視線恐怖症を題材に扱っておりますが視線恐怖症の人が黒を着る、という事は合理的なんですね。視線を光とすると、視線への反射を無くす事ができるのが黒という色です。

この主人公は視線恐怖症を克服した際に「虹を身に付けるよう」魔法使いから言われます。
虹、というのは光のスペクトルですから、光の全色をさす言葉なんですね。全ての光を反射すると、その物質は白色となります。
視線恐怖症の克服により黒から白への転換が起こります。

これはきっと自己主張したい時には白いものを身に付けると良い、という事にも繋がると思います。白。グンゼですね。なるほど。私は黒いパンツしか履きませんが、白いパンツ(GUNZE)を履かないと不可ない、という事ですね。



10朗読「捨てられた市松人形(人形恐怖劇場 第3話)」大大阪人形

様々な恐怖症を持つ私ですが、「日本人形」も駄目です。目を合わせる事ができません。目を合わせると夜にやって来て噛み付くんですよ、あれ。
日本人形はかつて、女子に買い与えられた可愛い玩具の扱いであったと思いますが、今も主の用途はそれで合っているんでしょうか?本当に?だって夜になると噛みつきますよ?



11小説「盲腸線より南へ」朝見水葉

朝見さんの作品の密度の濃さはパないですね。大変パないです。

文章には質量があります。
「今日の朝食はパンとコーヒーです」
「今日の朝食はペルー式のパンとコーヒーです」
「今日の朝食はパン・コン・チチャロンとカフェ・ウチュニャリです」
「今日の朝食はチチャロンのサンドイッチとハナグマの糞珈琲です」

四つの文章は似通っていて質量が異なります。
今日の朝食がパンとコーヒーである事に我々は大した情報量を感得しません。つまりこの文章は空疎です。

二つ目の「ペルー式のパンとコーヒー」は何がしかの抒情を想起させます。ここには詩があります。

三つ目の「パン・コン・チチャロンとカフェ・ウチュニャリ」は情報量過多で百科事典を読むレベル。パン・コン・チチャロンとカフェ・ウチュニャリを調べてみた際の情報量が文章には上乗せされておりますので、本文は大変に質量が重い。しかし、小拙のような不精の人間は結局パン・コン・チチャロンもカフェ・ウチュニャリの事も調べないので、意味も分からず情緒も感得しない無為の言葉となる危険もあります。

四つ目の「チチャロンのサンドイッチとハナグマの糞珈琲」はそれとない意味を仄めかしながらも百科事典の情報量は残存しています。

情報量の順序を付ければ
「パンとコーヒー」
「ペルー式のパンとコーヒー」
「チチャロンのサンドイッチとハナグマの糞珈琲」
「パン・コン・チチャロンとカフェ・ウチュニャリ」

となり、何を良しとするのかは好みによるとも思いますが。

(ペルーの人は毎朝、チチャロンのサンドイッチとハナグマ糞珈琲を飲む訳ではありません)

言葉の持つ情報量によって文章の質量は変わる。文章の上手な方は質量が圧倒的に重い。

また同じハナグマ糞珈琲であったとしても、それを飲んだ登場人物が太郎なのか、ペドロなのかによっても質量は変化する。

朝見さんの文章には圧倒的な重量感がある。これはもう全く敵わない。朝見さんの文章の重厚に比べると私の文章などはGUNZEで外を歩くようなもの。私の後頭部にROM(8ビット)の挿入口があって、カセット式に知識を身に着ける事が出来たら良かったのに。



12小説「眼丩蝶」ムラサキ

眼丩蝶というタイトルで、「丩」の字は「糾きゅう」の異字体。漢字ですが、見ているうちにギリシャ文字、キリル文字のようにも見えてきます。変な字ですね。



13詩「アリバイフォビア」千葉貴史

千葉さんの詩。
コメント欄でやり取りしたところ、アリバイフォビアの謂れはアリバイという詩が無意識から湧き出て、フォビアの語を繋げた、無意識からの贈り物との事でした。現代詩を書く、という事は様々のスタイルがありますが千葉さんは無意識派なんですね。

私は官憲から職務質問をされる事が多いので、あの制服を見ると体が緊張を帯びます。いつ何時、嫌疑を掛けられても良いように自身のアリバイについては配慮しております。それでも現場不在証明出来ない事もあり、やはり官憲に対しては緊張します。
怖いものばかりです。
で、千葉さんにそんな話をしたところ、千葉さんは過去の出来事と、人生の塁歴によって悪い事が出来ない体質となってしまったので、官憲を前にしても恐怖は感じないとのこと。例えるなら論語にある「不踰矩」、そのような心境なんですね。

その他、私が怖いものを列記すると

昆虫、的な生物全般
海洋生物
目くじら
下り坂

高い天井
血液
刃物と先端
等など

何処で学習するものか怖いものばかりです。
外国には「13」恐怖症なんてものもあるそうで、文化によって恐怖も変わりますね。

ええ、今度は熱い茶が怖い。


と、noteから集まった数々の恐怖症。いかがでしたか?ご自身の心裡と向き合う事は出来


皆様にも素敵な恐怖と愛が訪れますように。
今月もありがとうございました。

新方式「眠れぬ夜の奇妙なコメント師」様、来たれ!

(定型文ですけれど、ちょっと方式は変更しています。)
アンソロジーがまとまると何処からともなく現れる「眠れぬ夜の奇妙なコメント師」。今宵も奇妙なコメントが集まります。

眠れぬ夜の奇妙なコメント師とは・・・

「偏れ!」
大衆に迎合して日和った意見になんの価値がございましょうか。そのような生温い意見に甘んじたいのならば無料SNSにでも行け・・・!(あっ!ココのことだ!)
結局大勢を相手に発信するSNSって受信する側に選択がないので、発信する側が気を遣って意見を中立に保たなくてはいけない。悪くはございませんが、そんな無思想の量産型意見など「あなた」が吐く価値がない。「あなた」しか言えない意見だからこそ価値ってあるんじゃないかしら。「あなた」しか言えない意見だからこそ真の共感が得られるんじゃないかしら。反論のない意見に真の賛成もない。
偏らなければ面白くない!
日和った意見を書き連ねるほど、文筆家は堕落して自分の価値を貶めるんだ。ネットで日和見小説を書くほど真の文筆の道からは遠ざかるんだぜ。

ということで、大いに偏って穿ったご意見を募集しております。
(批判はダメです。)

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