「専業主婦明け一発目」の働き口、大学の研究室で良かった件

大学の研究室に秘書として働き出して4年が経った。

子どもが小学生に上がったら働きに出ようと思っていた。在宅でできる仕事はしていたのだけど、いつも仕事があるとは限らないし、実力もないから身入りが少なかった(この話はまた今度)。
アルバイトをしたこともあったが、二人目の子どもができたり、夫が転勤になったりで数ヶ月で辞めざるを得なかった。

だから定期的にお給料がもらえる仕事に、とにかく就きたかった。

ちょうど10年間の転勤生活が終わったタイミングで下の子が小学校入学。職探しを始めた。

とはいっても、以前から大学の秘書に興味があったので、その求人からあたってみたのだけれど。

大学の研究室秘書を知ったきっかけ

「大学の研究室秘書」という仕事があることは夫から聞いていた。夫の勤め先に秘書さんがいて、とても生き生きと働いてておられた方がいたのだ。
その人はご結婚後長らく主婦をされていたが、お子さんが中学校に上がったタイミングで働きたいと思い、秘書の仕事を始めたそうだ。お子さんの年齢がうちより少し上だったから、子育てや教育の相談もしていたみたいで、夫はとても信頼していた。

その人の話を聞いて、子どもが中学生になるまで仕事をしていなかった人でも働けるなら、私でも行けるんじゃないかと思ったのだ。

しかし心配ではあった。まともに外に働きに出るのは7年ぶりくらいだった。結婚前に3年事務職をしただけで何ら輝かしい職歴もない。果たしてこんな自分でも雇ってもらえるのか、働いていけるのかと不安はあった。

しかし、面接はスルスルと通り、いざ働きだしてみると研究室はとても居心地がよく、「専業主婦明け一発目」の働き口としてはいい選択だった。

大学研究室秘書の仕事とは

大学の研究室には主に「教授・准教授・助教・ポスドク・研究生その他学生」が所属しているが、秘書はその人達の研究や教育活動のサポートをする。仕事の範囲は、その教授の忙しさや秘書に求める役割にもよるが、物品の購入や出張の手配、財源の管理などがメインの仕事で、その他は良く言えば庶務、要するに研究室周りの雑用。

加えて私の研究室では、留学生や海外から招聘する先生との連絡も必要だったため、英文メールの読み書きや、ときどき(校正前の)論文の英語チェックなどもあった。学会の運営やホームページの更新なども任される秘書もいる、らしい。

勤務時間は、これまた研究室によりけりだが1日6時間前後・週3〜4日程度が多い。

私の場合は国公立大学の、理系の研究秘書のケースだが、私立大学でも、国立の何らかの研究所のたぐいの秘書でも似たような働き方が多いように思う。
メリットを挙げてみる。

融通がきく

久しぶりに仕事に行きたいと思う人の多くが、まだ小さい子どもを持つ人だと思う。幼稚園とか、小学校低学年とか。

そういう人にとって、時間の融通がきく仕事は本当にありがたい。

これは経験上だが、仕事内容が魅力的だが勤務時間の条件が合わない求人でも、面接で要望をしっかりと伝えると通る場合が結構あると思った。もちろん場合によるが、秘書に頼む仕事は曜日・時間固定というものは少ない。「月水金」に来てもらおうが「月火木」に来てもらおうが、「火木金」に来てもらおうが、9:00-14:00だろうが10:30-15:30だろうが教授にとっては大した違いがないのだ。

子どもの熱での急なお休みも、かなりの割合で優しく休ませてくれる先生が多い。特に准教授クラスの先生だと、世代的にご自分も子育て真っ盛りだったりするので、状況を理解してくれて本当に助かる。

ただ、休みをとった分当然先生に迷惑が行くし、しわ寄せが自分に帰ってくるので、突発的な休みに備えて仕事は常に前倒しで進めていたほうが良い。これはどんな職種でも一緒だろうが。

久しぶりに働くという人だと、いきなりフルタイムで毎日仕事をする自信が持てなかったりするが、最初はゆるい研究室で慣れてから、もっと忙しい研究室に鞍替えするのも一手だろう。(研究室秘書以外の大学の仕事に行くのも良い)

気持ちいい人と一緒に仕事ができる

大学の研究室で働きだしてから感じの悪い人と仕事をした記憶が、ほぼない。

隣の研究室の秘書さんも、そのまた隣の研究室の秘書さんも、だいたい子持ちの主婦なので話が合うし、みんな、とても感じのいい人だ。私のようにガチャガチャとうるさい秘書は余りおらず、みんな落ち着いて穏やか(うるさい秘書を雇ってしまった私の教授は気の毒だ)。

教授やその他の教員とは馬が合うのが一番。
ネットでもリアルでも、「大学のセンセイは社会のことを知らない、浮世離れした人が多いからとっつきにくい、世間知らずでわがまま」という人が多いが、そうかなあ。自分のところ以外でもいろんな先生と話をしたが、そこまでヤバい人にはあったことがない。

企業で働いてきた人が大学に戻ってくるケースも多々あるし、特に秘書を雇うような先生は研究でも教育でも忙しい人が多いのだが、話のわかる人が多いと思う。共同研究する企業だって、いっくら優秀でも話が通じない人とは一緒にやりたくないだろうし。

女性の先生もいて、趣味のこと、子育てのこと世間話もするが、お互い踏み込みすぎない距離感を保てていい。

学生も面白い。年々自分と学生の年齢差が開き、世代間格差を感じることもあるけれど、20代前半のフレッシュな若者の会話に聞き耳を立てているだけでも楽しいのだ。

強いて言うなら、研究室にはペーパーワークが苦手なオタクっぽい人が多いかな。それをアシストしつつ、面白がる人なら秘書としてやっていけると思う。

補償が手厚い

これはコロナご時世でひしひしと感じたことだ。

研究室秘書は非正規職員ではあるが、国公立大学であれば、立場上公務員に近い。そのため、今回のコロナの状況下であっても、在宅勤務も可能で、子どもや親の看護、介護の休暇の制度も整っている。

緊急事態宣言が出されてから体制が整うのが早く、子どもの休校にあっても、在宅勤務や看護休暇で休業補償された。これが一般の企業だと随分とシビアな状況だったと思う。本当にありがたかった。

研究室秘書のデメリット

そんなわけで、大学の研究室秘書はとても働きやすいのだが、デメリットもある。いざ働きだしてこんなはずではなかったと思わないように挙げておく。

期間限定

ほとんどの研究室秘書は期限付きの非正規職員。契約は1年更新で、通算3年〜5年働いたらそれ以上は働けない。これが一番痛いところだと思う。

大学によってはある期間を空ければまた戻ってこられるというルールがあるため、その期間は無職でいるなり、短期バイトをするなり、別の大学で働くなりする人も(結構な数)いるが、やっと仕事がわかった頃に辞め時が来るのが非常にもったいない話だ。これは秘書が集まると頻繁に話題に登ることでもある。

飽きる

仕事は面白いし、役に立っているという実感もある。だけど、やっぱり飽きてくる。ルーティーンワークも多いので、どんなにゆるいシフトで働いていても、さすがに2年もやると業務の全体像が見えてくる。

特に「待ち」の姿勢でいると本当に何もしないで終わるときもある。出勤して、メールボックスを見て、20分で業務終了ということがあって、「うわーどうしよう、暇すぎる!!」と焦ったことがあった。

そういうときは、過去のデータを整理したり、エクセルの機能を勉強したり、教授がここまででいいよ、と言っていた仕事に踏み込んでみたり、引き継ぎのマニュアルを作ったり、あと掃除をしてみると、以外にやることが出てくるものだ。

ゆるやかに働き出したいと思う人は研究室秘書、ご検討を

そんなわけで、デメリットもあれど、長らく主婦をやっていた人が久しぶりに働く先として、大学の研究室はおすすめだ。久々の職場で、ストレスで胃がキリキリするようなことはあまりないと思う。

私も研究室秘書業をあと1年というところまで来てしまった。次はどうしようと考える日々が続くが、コロナにあってもお給料をくれる今の状況に感謝しつつ、やれることをやろう。

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