七つの幸運ep.利手川来人「悪魔の利き腕」②
2.
「うーん。やっぱ、かわいいよなあ」
利手川来人。ききてがわらいと。『スカイレッド』副族長。悪魔の利き腕。
「……お前、いつまでそのバカ女の写真見てんだよ」
硝子張響。がらすばりひびき。『スカイレッド』族長。勇猛に破綻した喧嘩屋。
「だから、バカ女じゃなくて、未知標奇跡ちゃんだっての!」
「名前なんざなんだっていいよ。とにかく、きもちわりいからいますぐスマホの画面閉じるかそのにやけ面殴らせろ」
「いや、やだよ! なんで殴られなきゃなんねえんだよ」
夕刻の公園。スマホの画面を見ながら顔を綻ばせる学ランに赤ジャージ姿の青年と、そんな彼の表情に冷たい視線と野蛮な言動を向ける赤バンダナの男がふたり、ベンチに並んで座っている。両者とも、腕や脚の至る所に作られた傷が痛々しい。
「ったく、ただでさえお前のせいですでに満身創痍だってのに」
「だから命さえありゃどうとでもなるっつってんだろ。ぐちぐちうるせえな」
彼らはいましがた、大きめの喧嘩を終わらせてきたとこらだ。
喧嘩というか、事件。人質事件。
先刻、赤バンダナの男──カラーギャング『スカイレッド』族長にして域還市最強の喧嘩屋・硝子張響の姉が、チンピラに誘拐される事件が起きた。学ラン赤ジャージの相棒、利手川来人と公園で駄弁っていた響の携帯に突如姉から着信が入り、出てみれば知らない男の声が聞こえ、彼から呼び出しを受けたのだった。
「命さえありゃ、ねえ……てか、いやいや、本気で死にかけたんだけど!?」
「死にかけれるってことは、ちゃんと生きれてる証拠だ。よかったじゃねえか」
「あぁ、まあ、そう言われるとたしかに……ってよくねえよ!なんでも力尽くで
数の暴力、騙し討ち、人質。あらゆる卑怯と姑息の限りを尽くしたチンピラだったが、硝子張響勇猛の前ではどんな小細工も意味を為さなかった。盾にするため巻き込んだ相棒も姉もまとめて、すべてを傷つけ、壊されてしまう。
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