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のだまりなはキャラクターを三次元に連れてきてくれる、魅力に溢れた役者だ。

のだまりなの愛は、次元を超越する。

 のだまりな。のんちゃん。アクタボンの癒し系。天然ヘッポコお姉さん。

 のんちゃんは、アクタボンのお姉さんだ。メンバーに癒しと安心を与えてくれる。いつも周りを見ていて、気も遣えるし、稽古や公演のたびに、僕らみんなをサポートしてくれる。

 それに人の気持ちを、痛みとか悲しみとかを、汲み取ることができる。優しい心の持ち主だ。

 人の心がわかる役者は強い。

 のだまりなを初めて「すごい」と思ったのは、実はアクタボンとして劇を作っていくよりも前のことだ。

 出会ったのは、いまから約2年ほど前。

 劇団の稽古で『喜怒哀楽ゲーム』(「喜」、「怒」、「哀」、「楽」いずれかの指定された感情を表現する演技レッスンのひとつ)をやったときのこと。

 みんなが壁を叩いたり、怒号をあげたりして「怒」を表現するなか、

 のだまりなはただ静かに

「……ほんとムカつく」

 と吐き捨てて、僕の横を通り過ぎた。

 それが、めっちゃこわかった。うん、超ひびった。

 そのとき僕は「あぁ、この人はたぶん内面に隠された感情を表現するのが上手い役者なんだ、うなぁ」と感じたのだ。

 そしてその直感は、舞台を通して彼女の演技を観ていくうちに、確信に変わっていった。

 第二回本公演『七つの退屈』調和に囚われた学級委員・安楽詩衣(あんらくしころも)。

 キャラクターピックアップ公演『未知標奇跡 編』本音を隠す幼馴染み・穴生革命音詠詞(あのでもねえっと)。

 のだまりなが演じてきた役。その共通点。

 この2人のキャラクターが胸の奥に押し込めた"感情"は、のんちゃんが演じることによってたしかな形として強く現実世界に現れた。

 深い愛や優しさが物語世界(二次元)のキャラクターにまで作用するところも、のんちゃんの強みだ。

 舞台上でキャラクターの心と、気持ちとシンクロする。作り物じゃない本気の感情の発露。

 のだまりなの表現には、役の感情が憑依する。

 物語世界のキャラクターを連れてきてくれるのんちゃんの芝居は、演技は、表現は。脚本家として、演出家として、とても楽しく、面白い。

第三回本公演『三者六様の虚偽』
野田間 里奈(のだま りな)役

 「わたしはアクタボンもアクタボンワールドも大好きだから」

 アクタボンプロジェクトの構想当初、なにが面白いか、なにをしていいのかわからないまま考えすぎて長ったらしい僕の話を、のんちゃんはずっと聞いてくれた。そうしてキャラクターや物語に対して、深い愛を注いでくれた。

 僕はそれがたまらなく嬉しかった。だからここまでがんばれた。これからもがんばろうと思える。

 創作が楽しいと、初めて心の底から思えた。

 作家は孤独だ。自分の作り出そうとする世界と、1人で向き合わなければいけないから──僕はそう思っていた。

 のんちゃんと、アクタボンのみんなと出会うまでは。

 いまはもう、1人じゃない。一緒に物語を作ってくれる仲間がいる。それを教えてくれたのんちゃんには感謝してもしきれない。

 『三者六様の虚偽』は一年間、一緒に戦ってきた座組みで演るために創った物語だ。

 のだまりなは今回、これまで与えてきた"静"のキャラクターを脱ぎ捨て、舞台上で楽しく動き回る保険医・野田間里奈を演じる。

 楽しそうに立ち回るのんちゃんの演技に、内に秘めた情動だけが彼女の持ち味ではなかったことを思い知った。

 のだまりなが里奈先生とシンクロするその瞬間を、劇場というリアルで見て欲しい。そして、楽しみにしていてほしい。

 のんちゃんはまだまだこれから、色んな可能性を魅せてくれる役者だ。

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