掌編小説:いい人仮面と腹ペコ星人~本当に飢えているのは?~
🔷掌編小説説明
とってもいい人で優しいけれど、すごく恥ずかしがりの「いい人仮面」は、いつも仮面をつけています。友だちの「腹ペコ星人」は、いつもお腹をすかせています。優しい「いい人仮面」は、「腹ペコ星人」にいろいろと食べ物を勧めるのですが……。寓話風掌編小説です。
「いい人仮面と腹ペコ星人~本当に飢えているのは?~」
吹き抜ける風が爽やかなある日、いい人仮面がお昼ごはんを食べていると、友だちの腹ペコ星人がやって来ました。
「いい人仮面、美味しそうなお昼ごはんだね。僕はお腹がペコペコなんだ。きみはいいね。いつも美味しそうなものが食べられて幸せだね」と腹ペコ星人が言いました。
「腹ペコ星人、僕が作ったスパゲッティは美味しいよ。食べていかないかい?」といい人仮面はスパゲッティを勧めました。
「いやいいよ。スパゲッティはカロリーが高いから僕は食べないんだ」と言って腹ペコ星人は帰って行きました。
数日後、いい人仮面がお昼ごはんを食べていると、また、腹ペコ星人がやって来ました。
「いい人仮面、美味しそうなお昼ごはんだね。僕はお腹がペコペコなんだ。きみはいいね。いつも美味しそうなものが食べられて幸せだね」と腹ペコ星人が同じことを言いました。
「腹ペコ星人、僕が買ってきたハンバーガーは美味しいよ。きみも食べないかい?」といい人仮面が勧めました。
「いやいいよ。僕は添加物が入っている市販のハンバーガーは食べないんだ」と言って腹ペコ星人は帰って行きました。
そのまた数日後も、そのまたまた数日後も、腹ペコ星人はやって来ました。
いい人仮面が、カレーを勧めると
「辛いからイヤ」
サンドイッチを勧めると
「パンは嫌い」
おにぎりを勧めると
「ご飯が嫌い」と言って何も食べませんでした。
でも必ず、「僕はお腹がペコペコなんだ」と言うのです。
そしてある日、お腹がペコペコになった腹ペコ星人は、怒った表情でいい人仮面に言いました。
「いい人仮面! 僕はお腹が空いてとてもつらいんだよ! きみはそれでも平気なんだね! 自分さえ満腹で幸せだったら良いんだね!」
いい人仮面は驚きましたが、腹ペコ星人にこう言いました。
「腹ペコ星人、きみは本当にお腹がペコペコなんだね。僕はきみのために料理を作ったり、食べ物を買って来てあげたりできるよ。でもね」
「食べるのはきみしかできないよ」
「いい人仮面! 僕が苦しんでいるのに、よくそんな酷いことが言えるね!」と腹ペコ星人はカンカンになって怒りました。
お腹がペコペコなのに、何もたべられない腹ペコ星人は、すっかりやせ細っていました。いい人仮面は、腹ペコ星人がかわいそうになって、優しく言ったのでした。
「腹ペコ星人、きみはお腹も空いているけれど、もっとペコペコに飢えているのは、きみの心じゃないかい? でも、きみの心に生きる糧を与えるのは、きみしかできないよ。僕はきみの心の飢えを満たすことはできないんだ」
といい人仮面は穏やかに言ったのでした。
<オシマイ>
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