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天動説はロジカルなのか。というお話

天動説には美しさがないという切り口の漫画「チ。」面白いですよね。
今回は天動説をネタに、「ロジカル」とは何か?について触れたいと思います。

一時期ほど、ロジカルXXみたいな話を聞かなくなりましたが、
今もビジネスマンの基礎スキルとして必要とされるロジカルさ。

ではロジカルって何なのでしょう?

結論からいくと、ロジカルとは下記3点を満たす状態だと考えています。

(a) 主張/結論とその理由が、構造的な矛盾なくMECEに整理され、
(b) その理由が、ロジックを確認する人が信じる因果関係で説明され、
(c) その人が疑わないであろうところまで深掘れていること

巷で聞く話はほとんど(a)の話ですが、
ロジカルさには"判定者"がおり、(b)(c)も重要だよ。というお話です。


以下、補足します。

理由をどこまで深掘るか?

さて、下記の文面はロジカルでしょうか?
・太陽は地球を中心にまわっている
  (なぜなら)
  - 全ての星は地球を中心にまわっている
  - 太陽は星である

【ロジカルかどうかの判定要素】
一般に何かを指してロジカルか問うときには、
下記2つの要素を考える必要があります。
 (A) 構造的な矛盾、欠陥がないか
 (B) どこまでの範囲を対象とするか

(A) 構造的な矛盾、欠陥がないか
 ・よく本に書いてある「A=B。B=C。よってA=C」といった論理が崩れていないか?MECEになっているか?ということです。
 ・上記の例の場合は、3文だけを対象とする限り、構造的な矛盾、欠陥はありません。

(B) どこまでの範囲を対象とするか
 ・主張や結論を、どこまで理由付けるか、掘り下げるかということです。
 ・この例の場合は、3つの文の構造だけを対象範囲とするのか、
  理由となっている「全ての星は地球を中心にまわっている」「太陽は星である」を支える理由も対象とするのか、ということです。

・太陽は地球を中心にまわっている
  - 全ての星は地球を中心にまわっている
  - 太陽は星である
こちらの文に関しては、3文のみを対象とする場合”ロジカル”であり、
3文を支える理由も対象とする場合、「全ての星は地球を中心に回っている」が説明できないため、"ロジカルでない"ということになります。

ビジネスにおいてロジカルであるべきなのは
相手を説得したり、将来を予測したり、事象の要因を正しく捉えるためであり、
3文だけを対象としたロジカルさには意味がありません。
つまり我々は、相手が求めるところまで理由を掘り下げるべきであり、この例の場合は”ロジカルでない”ということになります。

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理由の"根っこ"はどこか?

では、主張/結論の理由をどんどん深掘っていく(ロジックツリーを下に下にいく)と、主張/結論を支える"根っこ"は何になるのでしょうか。

あなたは、「地球が太陽を中心にまわっている(地動説)」理由を、どこまで深掘って説明できますか?

1つ2つ理由は言えても、それ以上深掘った理由を説明できる方はほとんどいないのではないでしょうか。
にも関わらず、「太陽が地球を中心にまわっている(天動説)」を根拠とする主張はロジカルでないと感じると思います。

それはロジックの"根っこ"が、「その人が、これ以上疑おうと思わないこと、(意識的、無意識的に)信じていること」であり、
我々は義務教育の中で地動説を当たり前のものとして認識しているからです。

ニュートン以外の人にとって、リンゴが地面に落ちる理由は「これ以上疑おうと思わないこと」であったところ、
ニュートンはそこに疑問を抱き、「モノは落ちるもの」という根っこの下に、新たに「万有引力」という根っこを見出しました。

ここでお伝えしたいのは、「ロジックを支える"根っこ"は、変動し得る/個人によって異なる」ということです。

ロジカルの"判定者"は誰か?

さて、視点を変えてみましょう。
ガリレオが異端審問を受けていた時代にタイムスリップします。

・太陽は地球を中心にまわっている
  - 全ての星は地球を中心にまわっている
  - 太陽は星である

改めて、この文はロジカルでしょうか?
その答えは、誰がロジカルさの"判定者"か?により2つに分かれます。

[①科学の場合]
時間や人によらない再現性を持たせるべく、
"万人を対象に"、事象を矛盾なく説明するロジックが必要
 ・この場合、タイムスリップしようがしまいが、現状明らかになっている科学的な因果関係から、「太陽は地球を中心にまわっている」はロジカルではありません。

[②コミュニケーションの場合]
ビジネスシーンなどで相手に動いてもらうべく
"特定の人を対象に"、理解/納得してもらうロジックが必要
 ・この場合、対象となる人が信じている"根っこ"や因果関係によってロジカルかどうかが変動します。

ほとんどの方は科学者ではないので、[②コミュニケーション]に絞って言えば、

・天動説は、現代においてロジカルではないが、
・ガリレオが生きた時代において、ほとんどの人にとってロジカルである

ということになります。

結局のところ、、、

散らかってきたので改めて整理すると、
科学者でもない限り、ビジネスシーンにおいては

・ロジカルさは相手となる人によって変わるものであり、
・相手が何を大切にし、信じているのか?を想像し、
・その人が疑わないであろうところまで深掘ること

という、一見するとロジカルとは真逆のようなポイントがが大切というお話でした!!


(余談) 因果の網とロジックツリー

いきなりですが、あなたはなぜ今の会社で働いているのでしょうか?

ビジョンやキャリア、条件面の理由を説明する人もいれば、
時系列的にきっかけや原体験から説明する人、もしかしたら運命論から説明する人もいるかもしれません。
つまり、因果は様々な側面/角度から説明できるということです。

さらに、もし両親が出会っていなければ、あの受験を受かっていれば、、等
バタフライエフェクトよろしく、何が”因”で、何が”果”かには濃淡があり、0-1の関係ではありません。

一つの無限に拡がる”網”を想像してください。
世界は網であり、それぞれの節点(事象)が、太かったり細かったりする糸(因果関係)で複雑につながっています。

さらに面倒なことに、客観的な網は存在せず、
バイアスを通して、各人が別々の網を認識しているため、"誰の網か"で話が変わってきます。
そんな複雑な因果関係を、シンプルにロジックツリーで表現することなんて、本当はできないのです。

なんだよ、じゃあどうすりゃいいのよ。ということですが、
目的から、"誰の網か"を明確化し、必要な"根っこ"(対象範囲)を決めて、”網を切り取ること”が重要です。

 ・床に置かれた網の節点を一つ選び、つまみ上げることを想像してください。それを横から眺めたものがロジックツリーです。
 ・つまんでいる節点(ロジックツリーの頂点)は、相手に伝えたいメッセージや結論であり、それを引っ張り上げたときについてくる、隣接した節点が理由となり、引っ張り上げたときに床に接している節点が最終的な根拠(ロジックツリーの根っこ)となります。
 ・目的に応じて、引っ張り上げる節点と、どこまで引っ張り上げるかを決めることが重要です。

抽象度の高いお話なので参考まで。


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