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【図説】著作権法は何のためにあるの?保護対象は?

これから何回かに分けて知財法の無料教材をYouTubeに投稿していく予定です。国家資格の知財管理技能検定を受検しようと考えている方、実務現場で「これってどう考えたら良いの?」と悩んでいる方、学校で知財の授業があるから勉強しないといけない方、何より、知的財産を楽しく勉強したい方向けに発信して行きたいと思います。

知的財産法の体系

最近「知的財産法」という言葉をよく聞くと思いますが、実は「知的財産法」という名前の法律は我が国にはないのです。発明を保護する特許法、ロゴマークなどを保護する商標法、絵や音楽などの著作物を保護する著作権法、こういった保護する対象別に法律があって、全体をひっくるめて「知的財産法」と呼んでいます。

ネットを利用する皆さんにとって身近な法律は著作権法だと思うので、著作権法から解説をして行きますね。

著作権法のポイント

著作権法の重要ポイントをまとめました。

法目的  = 文化の発展に寄与すること
保護対象 = 著作物など
権利発生 = 著作物の完成時(無方式主義)
権利   = 著作者の権利、隣接する権利、出版権
所管官庁 = 文化庁
保護期間 = 原則:著作者の死後70年
救済措置 = 差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、
       名誉回復などの措置請求

特に、産業財産権四法と大きく異なる点は、自らが創作したものの保護を受けるために出願する必要がなく、著作物の完成と同時に創作者に著作権が発生します。これを無方式主義と呼びます。権利を取るためにいかなる方式も必要としないのです。

さらに、保護期間も産業財産権などに比べて非常に長いです。原則として、著作物の完成時から著作権が発生し、著作者が生きている間ずっと保護が続きます。著作者が亡くなった翌年1月1日からようやくカウントが始まって、70年後の12月31日に保護期間が終了します。

著作権法って何のためにあるの?

著作権法の所管官庁は文化庁です。特許法などの産業財産権法の目的が「産業の発達」に寄与することであるのに対し、著作権法は「文化の発展」に寄与することとなっています。ただし、近年の情報化の進展により、著作権法と産業の関りが密接になってきているため、産業法的側面が強くなってきています。

では、実際にはどのようにして文化の発展に寄与させようとしているのか、簡単に説明します。

我が国の著作権法で規定された権利は、大きく分けて著作物を創作する著作者の権利と、これに隣接する権利に分かれます。著作者とは著作物を創作するものです。隣接する権利とは、実演家、レコード製作者、放送・有線放送事業者などに与えられる権利です。

著作権者等の権利保護を図るのが第一前提となります。著作者等の経済的あるいは人格的利益を保護し、著作者等の労苦に報いるためです。その結果、より優れた著作物が産まれ、文化の発展につながっていくと考えられています。ただし、著作物を利用するものが文化の享受者であり、公共の福祉にも配慮した利用が求められています。私的使用などの場面では、著作権が制限されることもあります。

著作権法の保護対象って何?

ざっくり言うと、著作権法の保護対象は、著作物と著作物を伝達する行為に分かれます。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と著作権法上に規定されています。長いので、語呂合わせで覚えたら良いと思います。

著作物とは思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著2条1項1号)
おすすめの語呂合わせ「シソカン・ソウサク・ヒョウ・ブンカ」

「思想又は感情」とは?

人間の思い又は感情をいいます。鳥の鳴き声が美しく聞こえても、チンパンジーが見事な写真を撮ったとしても、人間の思い又は感情が表れていないので著作物になりません。最近でいうと人工知能の生成物が著作物かどうか議論されつつありますが、この記事を執筆している時点(2019年8月8日)における我が国の著作権法では、著作物に該当しないと解するのが通説です。

また、「東京タワーの高さは333mである」などの単なる事実も、人間の思い又は感情に当たらないので著作物に該当しません。

「創作的」とは?

創作的とは自分の個性が表れていることを指します。個性が表れていればレベルの高さは関係ありません。幼稚園児が描いた絵も著作物になり得ます。

一方、パスポート写真などの正確に写すことが目的なものや、顧客リストなどのデータそのものも創作性がありません。完成させるのにどれほど手間がかかったかということと創作性は別問題なのです。

「表現」とは?

著作権法では、何らかの形に表現されたものを保護します。特許法のようにアイディア段階でも保護が受けられるのとは異なります。例えば、新しいゲームのルールを考えたとしましょう。ゲームのルールそのものは何らかの「形」になっていないので保護されません。一方、ゲームのルールをルールブックなどにまとめた場合、ルールブック自体は著作物になりえます。

あと、著作権法は文化の発展に寄与することを究極の目的としているので、保護対象は文化(文芸、学術、美術又は音楽)の範囲に属するものとされています。

著作物以外の保護対象

著作者の創作活動によって生まれたのが著作物です。一方で、著作物を伝達することによって国民は文化を享受することができるため、伝達するものにも保護が与えられます。

実演家とは、楽曲の演奏など、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしているものです。演奏の仕方(実演家の創作的活動)によって、楽曲の雰囲気が異なることもありますよね?したがって、著作物の創作活動に準じるある種の創作活動にも、保護が与えられているのです。同様に、レコード製作者や放送・有線放送事業者にも隣接する権利が与えられます。

まとめ

今回は著作権法の目的と保護対象について簡単にお話ししました。著作権法の理解をするベースになる重要なところです。知財管理技能検定やビジネス著作権検定などで出題されやすいです。時間のある方はYouTubeチャンネルの動画もご視聴いただくと理解が深まると思います。

・著作権法の目的は文化の発展に寄与すること
・著作権法の保護対象は著作物と著作物を伝達する行為
・著作物の定義は「シソカン・ソウサク・ヒョウ・ブンカ」

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