マガジン

  • Keio Camp Store

    慶應義塾大学・広告学研究会OBが綴る、海の家の物語

最近の記事

第4話

5月に入ると、大学の勝手が少しずつ分かってくる。この授業には出なくても良い、ヒヨウラ(日吉の裏に広がる飲食街一帯を指す)に何があるか、食堂のたまり(各サークルが主にたまっている定位置)の配置などだ。 新入生がどこのサークルに入るかを決めた後に待ち受けるのが新歓合宿である。ここで更に親睦を深めようというわけだ。私は広研以外にもサークルに入っていたため、どこの新歓合宿に行くか非常に悩んでいた。そしてその結果、ダンスサークルとテニスサークルの新歓合宿へ行くことにした。 広研が選

    • 第3話

      先輩に先導され、サンタという雑居ビルにあるカラオケ店に連れて行かれ、まず目に飛び込んできたのはテーブルに並べられたお酒の数々だった。 ビールやカクテル系のものは一切なく、明らかにアルコール度数の強そうなお酒がキレイに並べられているのはある意味壮観だったことを今でも覚えている。 そして四隅には段ボールの空箱が置かれており、脱出を禁じるために部屋からはトイレに行く場合以外は一歩も出ては行けないというルールが通達された。トイレが詰まるのを避けようと、吐くのは四隅の段ボールへとの

      • 第2話

        ※これから記載する内容は実話を元にしたフィクションです。 早速その週に新歓があるというので、そこに行ってみることにした。 花見という名の、ブルーシートを広げ、ただお酒を飲みゲームをしているだけのその空間に、「リア充」を感じた。 この一週間でテニスサークルなどの新歓にも顔を出していたが、広研の新歓にくる新入生は一段と派手な髪色やピアスを開けたメンバーが多かった。 おそらく高校時代から、その学年で目立つ存在だったのだろう。 女の子の中には、失礼だがキャバ嬢にしか見えないような子

        • 第1話 邂逅

          ※これから記載する内容は実話を元にしたフィクションです。 10年以上の時を遡り、記憶を呼び起こしながら回想しようと思う。 新しい季節の到来を教えてくれるのは四季折々特有の香りだ。 新たな門出を祝うかのように、その日は雲ひとつなく、桜が満開だった。 一浪を経て第一志望である慶應義塾大学に合格し、私はこの春から晴れて大学生になる。 まだ見ぬキャンパスライフに胸を踊らせながら、日吉駅を右に出て坂を登り、高校の友人と入学式に臨んだ。 その坂を登っている時、合格した時以上に、慶應

        マガジン

        • Keio Camp Store
          5本

        記事

          第0話 冒頭

          ※これから記載する内容は実話を元にしたフィクションです。 〜〜〜〜〜〜 あの夏を私は今でも思い出すことが良くある。 日本中、いや世界中を探してもあの夏、私たちより楽しんだ人間はいないのではないかと本気で思っている。 あれより楽しい夏は生涯で2度と来ないことが分かり切っているが故に、膨大な月日が流れ社会に羽ばたいた今もなお回想してしまうのだろう。 〜〜〜〜〜〜 今からおよそ3年半前、2016年9月。 にわかには信じ難いニュースが飛び込んできた。 その見出しにはこうあった。

          第0話 冒頭