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就職する前に高めておきたい行動能力

はじめに

 私は、リハ専門職で構成する部門のマネジャーを務めています。私の業務には、臨床実習がはじまった学生のオリエンテーションや、春からの就職先を探している学生に対する施設紹介に加え、採用試験の面接官などの役割もあり、リハ専門職を目指す学生と接する機会がたくさんあります。
 そこで、学生から受ける質問で最近特に多いなと感じる質問は、「就職するまでにどんなことを勉強しておけばいいですか?」という質問です。専門的知識で言えば、少なくとも国家試験には余裕を持って合格して欲しいですし、それ以外の知識や技術は入職後の職場教育の中で勉強してもらう予定なのでその場では限定できません。しかし、強いて言えば、入職後の教育や研修で身につけられる「後天的」な技術的能力ではなく、日常的に培う努力が必要となる「先天的」な行動能力を高める努力をたくさんしておいて欲しいと考えています。この、高めるべき行動能力とは、具体的にどのような能力でしょうか。

工業化社会から知識社会へ

 20世紀は工業化社会、21世紀は知識社会と言われています。知識社会とは、知識が動かす社会という意味であり、知識を担い、イノベーションを進め、グローバル化・ICT化に対応できる人材が求められる社会です。
 知識社会が注目されたのは、ケルン憲章とこれを踏まえたG8教育大臣会合での議長サマリーです。
 ケルン憲章とは、1999(平成11)年にドイツのケルンで開催された主要国首脳会議のことで、その際の主要テーマは「教育」でした。ケルン憲章は、21世紀を柔軟性(flexibility)と変化(change)の世紀と定義し、流動性(mobility)への要請がかつてなく高まるとしています。そこで求められるのが知識社会への変容です。
 G8教育大臣会合での議長サマリーでは、この知識社会は重要な機会を提供すると同時に、現実的な危機をもたらすと明記されています。つまり、労働市場が求める高いレベルを身につけられるかどうかで、知識社会で生き残れるかどうかが決まるということです。

社会人基礎力

 知識社会が求める人材の具体例として、また、冒頭で申し上げた日常的に培う努力が必要となる先天的な行動能力として、「社会人基礎力」(経済産業省)が参考になります。社会人基礎力とは、「職場や地域社会の中で、多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」と定義されており(社会人基礎力に関する研究会)、3つの主要能力と12の能力要素で構成されています。

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 個人的には、リハ専門職を採用する場合は「前に踏み出す力」と「チームワーク」を重視しています。「考え抜く力」は不要ではありませんが、リハ専門職を目指す学生の場合は、必ずこれを臨床実習等で既に培う努力をしているためです。
 特に、① 主体性、② 働きかけ力、③ 発信力、④ 柔軟性、⑤ ストレスコントロール力は重要です。これらが十分でない場合、職場でトラブルを起こしたり、就業を持続できなくなったりするケースが多いように感じるためです。

まとめ

 就職する前に高めておきたい能力として、知識社会を生き抜くための社会人基礎力を紹介しました。
 特に、医療現場で求められる職員として永続的に勤めるには、主体性、働きかけ力、発信力、柔軟性、ストレスコントロール力のどれか1つでも欠けると難しくなる印象があります。
 上記の発信が、リハ専門職を目指す学生の「自分磨き」のお役に立てたら幸いです。

参考文献

「よくわかる現代経営」編集委員会『よくわかる現代経営 [第5版] 』(2017)ミネルヴァ書房

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