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二頭の豚の会話による陰鬱な寓話

 エレバン放送第37日本支局より、ラジオドラマ「二頭の豚の会話による陰鬱な寓話」をお送りします。

 いつとも知れない時代のどことも知れない国でのこと。豚たちの間で何十回目かの選挙が行われ、いつものように肉屋の党が「肉屋を支持する豚」たちからの圧倒的な支持を集めて勝利を収めた。
 それからしばらくして「肉屋を支持した豚」が、傍らにいた「肉屋を支持しなかった豚」に話しかけた。「今度の選挙で肉屋の党が勝ったから、けーざいせーさくでしょとくがばいぞーして、今までよりずっとおいしい餌がたくさんもらえるようになるんだって。総理大臣が言ってた。」
 「肉屋を支持しなかった豚」は悲しそうに答えた。「全部嘘だよ。」
 「肉屋を支持した豚」はなおも言った。「きんきゅーじたいせんげんで思い切った対策がとれるようになるから、病気も災害も心配せずに長生きができるようになるんだって。マスコミが口をそろえて言ってた。」
 「肉屋を支持しなかった豚」は暗い表情で言った。「そんなことは絶対にないよ。」
 「肉屋を支持した豚」はそれでも続けた。「こくぼーにも力を入れられるようになるから、これからはオオカミに脅されたりせずに安全に暮らせるんだって。ネットのみんなが言ってた。」
 「肉屋を支持しなかった豚」はいよいよ陰鬱な口調になって言った。「そんな話を信じちゃだめだよ。」
 「肉屋を支持した豚」は馬鹿にしたように笑った。「分かった。君はオオカミの手先の『ぱよく』で『ばいこく』の豚なんだね。だからそうやって負けて悔しがってるんだ。」
 「肉屋を支持しなかった豚」は言った。「じゃあ訊くけど、今僕たちが乗っている『食肉工場行き』と書かれたこの貨車が着いた先で、いったい何が起こると思ってるんだい?」

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