臭覚と愛情
「お前さ、お風呂入ってないのに何でこんな良い匂いするの?」
夜通し遊んで帰る朝方、後ろから抱き締めてきた男がそう言った。
その異性を好ましく思うから良い匂いと感じるのか、良い匂いの異性だから好ましく感じるのか?
彼は今も側には居るけれど、あの時のように私の体臭を芳しいと感じてくれたりはしないだろう。
臭覚は気持ちに引っ張られるし、気持ちは臭覚に引っ張られる。
何人もの男の人に代わる代わる抱かれるプレイは、代わる代わる体臭も変わる。これは好き、これはあんまり好きじゃない。
みんなきちんとシャワーを浴びているし、なんなら同じボディソープを使っているけれど、同じようなお風呂上がりの匂いの奥から、その人だけの匂いを嗅ぎ分ける。
お気に入りの匂いが、お気に入りであり続ける間が賞味期限。
今度は二人きりでしてくれる?
彼にだけ聞こえるように、耳元で告白する。
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