見出し画像

【初コラボ】ベーシストのビトクさんとメタルアルバム談義!

今回の記事はなんと、Sailing Before The Windのベーシスト、ビトクさんとのコラボ記事です!

ビトクさんはSBTWのみならずAlphoenixNevrnessでも活動されており、さらにCrystal Lakeなどでのサポート業、Ibanez公式エンドーサー、そしてnoteでの執筆など、多角的な活動でご活躍されていて、特にビトクさんのnoteは個人的に2022年から拝読させていただいています。

バンド活動歴の長いビトクさんならではの視点や、バンド運営に関するtipsの数々はいつも参考にさせていただいているのですが、今回このようにnoteでコラボすることができて大変光栄です!

今回のコラボの内容としましては、私がCDを持っているメタルコア/デスコアバンドのアルバム10枚と、ビトクさんが持っているメロデス/デスメタルバンドのアルバム10枚について紹介するというもの。

メロデスバンドAlphoenixでもご活躍されているものの、ビトクさんがメロデスやデスメタルについて語ることはあまり無いかと思うので、そういう意味でも貴重な記事となっています!

そして私も、普段メタルコアやデスコアについて語ることはあまりありませんが、ヘヴィメタルやデスメタル程ではないもののある程度聴いたりCDを買ったりしているので、今回こちらの方面への造詣がとても深いビトクさんととても楽しくやり取りさせていただきました。

さて、前置きはこのくらいにして、早速本題の対談に入りたいと思います。

それではどうぞ!



As I Lay Dying - Shadows Are Security

筆者のCDコレクション。後ろにあるのは筆者のメタルCD棚です(1500枚以上あります)。

村上(以下、):今回はコラボいただきありがとうございます!早速ですが、私から始めていきたいと思います。
まずはメタルコアの大御所As I Lay Dyingですが、このアルバムについてはかなり思い入れ深いです。というのも、個人的にメタルコアへの入口となったアルバムだったからで、買ったのは高3の時でした。当時既にメタルを聴き始めて3,4年経っていましたが、メロデスの延長線上として聴いたメタルコアの世界はかなり新鮮でしたね。
ビトクさんのメタルコアの入口はどのバンド/アルバムでしたか?

ビトク(以下、):自分もメタルコアの入口として、AILDに出会いました。本作収録の「The Darkest Nights」をYouTubeで聴いたのが、初アズアイだったと思う。「メロデスリフ+清涼感のあるクリーンVo」を求めていた身に、ドストライクで刺さった。AILDの興味深いところは、意外とブレイクダウンが少ないこと。あっても、”リフ”ブレイクダウンに着地するパターンが多い。August Burns Redみたいな、開放弦連射タイプとは違う。あくまでも徹頭徹尾リフ土台で進む感じが、メロデスから入った身にとっては馴染みやすかったのかなと。SBTW初期(2012年)に出した「Break the Silence」は、リフミュージックとしてのAILDからの影響が、如実に出ています。

村:私も「The Darkest Nights」や「Through Struggle」でハマりました。ブレイクダウンが”必要最小限”だからこそ、落としパートが映えるのでしょうか。有名なバンドはブレイクダウンの導入が自然というか、ここぞというところで入れてくる印象です。自分もこのバンドが入口だったので、Tim Lambesisの起こした前代未聞の事件を経て、メンバーが再集結して出た『Shaped By Fire』には冗談抜きで感動したのですが、結局Timの人間性に問題があったのか、Phil以外抜けていったのは残念でしたね。
AILDがSBTWに与えた影響について聞けて嬉しいです!リフミュージックであると同時にメロディを大事にするのがSBTWかと思いますが、やはりその土台となったバンドの1つなんですね。

筆者のAILDコレクション。1stが抜けています。

All That Remains - The Fall Of Ideals

村:次はこれまたメタルコアのクラシックと言えるアルバムですが、このアルバムもメタルコアを聴き始めた時にかなりハマりました。
AILDと違ってグロウルもクリーンもボーカル1人で(高水準で)こなすのがATRの特徴だと思っていて、同様のバンドにはKillswitch Engage等がいますが、当時KsEの『The End Of Heartache』よりもATRのこのアルバムの方が気に入っていたのを覚えています。
ビトクさん的にATRのこのアルバムはどういう評価でしょうか?

ビ:問答無用の名盤です。単純に聴いた回数でいうなら、クラシックメタルコアの中で、一番聴いたアルバム。とにかく中二病心のくすぐり具合が絶妙で、キッズとしてこれ聴いたらハマり不可避。実際ハマっちゃいました。「This Calling」のバスドラ連打と絶叫、世のキッズの「俺は他の連中とは違うイケてる音楽を聴いてるんだ」的需要を完璧に満たしたのではと。ギターソロも恐ろしく完成度が高い。曲の中に曲がある様相で、ソロだけ切り取っても1つの作品として成立している。

村:「This Calling」のサビの歌メロとかカッコ良すぎて本当に痺れますよね!他にもブレイクダウン前の三拍子のメロデスパートも素晴らしいですし、故Oli Herbertのギターソロも非常にメロディアスで最高です。実はこの曲のギターを練習したことがありますが、メタルコアで頻出のドロップチュー二ングでなく1音下げだったのは意外でした。

ビ:そうそう、CやBまで落としていないのも、クリーンVoパートの圧倒的高揚感につながっている気がします。

All Shall Perish - The Price Of Existence

村:今度は打って変わってデスコアです。
個人的にデスコアはメタルコアを聴き始めてすぐに触れたジャンルだったのですが、最初に買ったバンドはやはりSuicide Silenceでした。今回Suicide Silenceは選出していませんが、ブルデスとはまた違うブルータリティに当時圧倒されたのを覚えています。
All Shall Perishといえば、Vo.のEddie Hermidaが現Suicide SilenceのVo.で、私が聴き始めた頃には既に加入していましたが、ASPを聴いた時にそこは然程意識していなかった気がします。
それよりも、Suicide Silenceのようなデスコアとは違い、ASPにはThe Black Dahlia Murderのようなメロディアスさがあり(TBDMはメタルコア/デスコアではありませんが)、特に名曲「The Day Of Justice」にはかなり痺れましたね。デスコアを聴き始めて比較的すぐにこのバンドに触れたことで、自分の中の裾野が広がった気がします。

ビ: 学生時代に聴いていた時はよく分かってなかったけど、いま聴くと明らかに「デスメタル+ハードコア」で最高だね。デスコアをやろうとしてデスコアになってない、というのかな。フレージングが、デスコアから影響を受けたものではなくて、スウェディッシュデスメタルの影響下としてプレイされている。ブラックやテクデスといった、周辺ジャンルの要素も感じる。たしかに比較的メロディアスだし、デスメタル方面からデスコアへの入口としては、楽しみやすい作品。

村:彼らはやはりデスコアでも先行者のバンドの1つなので、当初のデスコアの「デスメタル+ハードコア」を体現しているのかなと。2003年作1stを聴くと、それが如実に分かります。ブレイクダウンパートはそれこそDespised Iconを彷彿とさせるような極悪ハードコアです。それ以降も、仰る通りジャンルとして確立した「デスコア」の影響は感じないですよね。
あと特筆すべきはギタープレイでしょうか。特に3rd収録の「Black Gold Reign」で聴けるChris Storeyのシュレッドは必聴だと思います。
上述の通りボーカルのEddieがSuicide Silenceに加入したために活動が停止してしまっているのが惜しまれます…。

All Shall Perishの3rd『Awaken The Dreamers』

As Blood Runs Black - Instinct

村:All Shall Perishの次は似た系統のデスコアバンドであるAs Blood Runs Blackです。
ABRBと言えば1st収録の「In Dying Days」がアイコニックかと思いますが、アルバムとしては2ndの方が個人的に完成度が高いと思っています。

そうは言っても好きな1st

ビ:1stリリース時は、当時YouTubeで流行っていた「ブレイクダウンまとめ動画」に、先のASPと並んで、ほぼ必ず入っていた印象。それくらい一世風靡していたバンド。正直2ndは聴きこんでいないんだけど、何か聴きどころというか、ポイントみたいなのがあれば知りたい!

村:1stは若さに任せた勢いで突っ走ってるようなアルバムで、そこが魅力ではあるのですが、2ndはテクニック的に向上して全体的にカッチリしているのがポイントですね。ブレイクダウンも含めて1stよりも練られており、個人的にアルバムとしては2ndの方に軍配が上がります。
所謂「単音リフ」が好きな人は「In Honor」を再生し始めた瞬間にノックアウトされると思います!

ビ:たしかにザ・メロディックデスコアなリフ!リフで突き進む感じは、Desolate Sphereと相通じるものも感じます。

村:デスコアではないものの、TBDM的方法論は共通しているので、無意識に影響を受けているかもしれません笑。

Born Of Osiris - The Discovery

村:次はDjent系です。意外かもしれませんが(?)、Born Of Osirisのこのアルバムはかなり聴いた1枚です。メタルコアやデスコアとほぼ同時期に初めて聴きましたが、どちらかというと当時並行して漁っていたMeshuggahフォロワー的な立ち位置で知りました。
Djentとか抜きに、このアルバムで展開されている世界観には初めて聴いた時圧倒されまして、当初Jason Richardsonというギタリストについては特に意識していなかったのですが、彼の超絶テクニックがシーンに与えた衝撃は大きかっただろうなと容易に想像できます。
BoOやVeil Of Mayaのおかげで、The FacelessAfter The BurialのようなSumerian Records系のバンドへの道筋が開かれました(特にThe Facelessについてはめちゃくちゃ好きなバンドですが、自分の中ではテクデスの括りなので今回選出しませんでした)。
SBTWではメタルコア/デスコア系のみならずDjent方面からの影響もあると思いますが、Born Of Osirisからの影響はありますでしょうか?

ビ:ぶっちゃけこれ系では、一番影響を受けた作品です。この作品が出た2011年が、SBTW結成年だったこともあり、めっちゃ聴きました。僕らが翌2012年にリリースした「Futurist」には、その影響がかなり色濃く出ていると思います。

村上君の言う通り、Djentとか抜きに、世界観がスゴすぎました。リアルタイムで聴いた当時の記憶ですが、シーンの言葉(ジャンル名)が追いついてなかった。なんなら今も追いついてない。それまでのデスコアとは違ったし、かといってメタルコアでもなく、Djentでもない。全てが複雑に絡み合っている。ただ、圧倒的芸術作品なのは疑いようがない。ちなみに俺も、この作品が出た当時は、Jasonの存在は特段意識してなかったな。プレイヤー云々より、まず作品の世界観が全ての上に君臨している感じがして、それに痺れました。

村:やはり影響を受けていますよね。「Futurist」から感じられる近未来的メロディや"数学的"刻みは、まさにSBTW流にBoOを解釈したものなのかなと。このアルバムは仰る通りもはやDjentだとかコアだとかでは括れない世界観が展開されていて、アルバムジャケット通りのSF的世界観がここまでの圧倒的完成度で表現されているアルバムって本当に無いと思います。
基本的な方向性自体は『The New Reign』『A Higher Place』の頃から確立されていると思いますが、このアルバムにおけるJason Richardsonの貢献度って絶大だなというのが彼の存在を意識し始めて分かりました。
「Follow The Signs」の最後の有名なギターソロから始まり、「Recreate」の冒頭のアームを用いたリードプレイ、「XIV」におけるシュレッド等、とにかく天才過ぎて凄い以外の語彙を失ってしまいます。
Jasonはこのアルバムのみでバンドを去ってしまい(しかも関係悪化した状態で)、その後のアルバムも良いと思いますが、このアルバムが凄まじいがために、もし彼が今でも在籍していたらどうなっていたんだろうみたいに個人的に考えてしまいます。

ビ:たしかに、もう1枚この編成で作っていたら、どうなっていたかは聴いてみたいね。ちなみに、Ronnie(ボーカル)とJoe(キーボード)のボーカルコンビネーションも大好きなポイントです。色んな声色が聴こえると耳が飽きにくくなるので、密かに貢献具合が大きいと思います。

Veil Of Maya - [Id]

村:BoOに続いてVeil Of Mayaです。このバンドについても一時期かなりハマりまして、トータルタイムが30分とヘビーローテーションしやすい長さなのもあって、特にこのアルバムは相当に聴いていました。
リズム的にもかなり作り込まれたリフが次々と繰り出されるこのアルバムは、今聴いてもやはり痺れますね。Djent的テクニックと、デスコア由来のブルータリティが両立されているこのアルバムは前作と同様、リリースされた当時かなり新鮮だったのではないかと思います。

ビ:やー、勝手ながら、この作品は村上君が好きそうだと予想してました笑。VOMはギターが1人だから、それが作品の音楽性に大きく影響してるのかなと。他の同系統のバンドと比べて、リフのハモりやリードが明らかに少ない。ライブでの再現性を考慮してか、ミニマリズム的発想なのかは分からないけど…。結果として、(1本でも聴き応えを出せるよう)リフの完成度が上がり、まさに”次々と繰り出される”方法論に着地したのでは。

村:このアルバムが好きなのを見抜かれていてびっくりしました笑。前作も好きですが、テクデス的な色合いの強まったこちらの方が好みですね(とはいえ「It’s Not Safe To Swim Today」はめちゃくちゃ好きです)。
たしかにライブの再現性が考慮されているのかもしれないですね。特にギターソロが排されている点についてはそこが大きいんだろうなと思います。私のバンドは現状ギターが自分だけなので、参考になる要素はありそうですが、リードギターを減らすことは無いと思います笑。

ちなみにスリーブ取るとこんな感じです。

Undying - The Whispered Lies Of Angels

村:再度メタルコアに戻り今度はUndyingです。とはいえ、メタルコアといってもかなり古い部類で、このアルバムが出た2000年当時はまだKsEやAILDといった現在の大御所バンドも結成したばかりです。シーン的な解釈でいうと、ニュースクール・ハードコア/エッジ・メタルのバンドが盛んに活動していた時期で、Undyingはかなりメロデス寄りだと思います。
ビトクさんがサポートされていたCrystal Lakeも初期はニュースクールの枠組みだったかと思いますが、この辺りのバンドについてはいかがでしょうか?

ビ:もちろんそれなりに聴いてはきましたが、好みというより教養としてチェックしていた感じですね。同レーベルGood Lifeのリリースでいうと、As We Fightの1stやCongressの『Resurrection』はCDを持っていて、好きです。本作に対する村上君のレビューとしては、どんな感じだろう?

村:私も教養として昔この辺のバンドを漁っっていた中で知ったバンドでしたが、ジャンルとして確立された後のメタルコアよりもスウェディッシュ・メロデスの影響を直で受けていてかなり好きでした。最後にMy Dying Brideの名曲をカバーしているのも良いですね。メロデスのみならずゴシックメタルからの影響もあるというのが興味深いです。

EPですがこちらもオススメです

Darkest Hour - Deliver Us

村:続いてはちょっと前の来日でも話題になっていたDarkest Hourです。
その時残念ながら観に行けなかったのもあって、当初は他のバンドにしようかと思っていたんですが、最近出ていた新曲がかつてを彷彿とさせるものだったので、なんやかんやかなり聴いたこのアルバムを選びました。一時期かなりハマってアルバムもほとんど集めたバンドだったりします。

筆者のDarkest Hourコレクション

前出のUndyingと同じくハードコア畑出身のバンドですが、徐々にメロデスに接近し、ブレイクダウンも無いので基本的にはメロデスといっても差し支えないようなサウンドだと思います。とはいえ、曲作りやリフの構築的なところではやはりメタルコアだと感じます。
ビトクさんはこのアルバムについてはいかがでしょう?

ビ:そうそう、Darkest Hourはブレイクダウンがないから、個人的にはメタルコアとしては認識していません。>曲作りやリフの構築的なところではやはりメタルコア、ここの判断理由を、具体的に聞いてみたいです! 

村:チューニングで採用しているのがドロップチューニングだからか、リフ作りの面でメタルコア出身の人がやっている音楽だなと思いますね(ドロップチューニングを採用しているメロデスバンドもいますが)。
単音リフとか、そういうリフはメロデスでも使われる手法ではありますが、メロディの感じも含めてメタルコア的だなと。あとプロダクションや雰囲気も出自はやはりそちら方面だなと感じます。
たしかにブレイクダウンは無いですが、メロデスというにはメタルコアの雰囲気が強いというのがこのバンドの音楽性に対する個人的な解釈ですね。あくまで私の感覚ですが笑。
ただそういうの抜きにめちゃくちゃカッコいいバンドですし、新譜も楽しみにしています。

Thy Art Is Murder - Hate

村:そろそろ私の選出も終盤に差し掛かっていますが、『Hate』はデスコアの名盤として名高いオーストラリアのThy Art Is Murderが2012年に出した2ndアルバムです。
個人的に純粋なデスコアといえばこのアルバムが一番好きですし、現在のデスコアってかなりこのバンドの影響が強いのではと思っています。ボーカル、リフ、ブレイクダウン、ブラストビート、ギターソロ、どこを取っても隙が無いバンドだと思います。

ビ:このアルバムは凄まじいね。本当に隙が無い。ボーカルラインのリズムも洗練されていて、あらゆるパートに聴き応えがある。個人的には、初期ボーカル(Whore to a Chainsaw期)の印象が強かったから、まさか今みたいなスターダム的立ち位置になるとは、なんだか驚きではあります。

村:自分がこのバンドに触れた時点で既にかなりビッグなバンドでしたが、最初のEPの時と比べると一流バンドのオーラが凄いですよね。彼らをそこまで押し上げた功労者と言えそうなCJ McMahonが問題を起こして(再度)脱退したのは衝撃でしたが、後任はAversions Crownの人なので安心しました。個人的にAversions Crownも結構好きなバンドですが、やはりThy Art Is Murderだったり初期Whitechapelみたいな系統のデスコアが自分の好みなのかなと思います。

Trivium - Ascendancy

村:最後はTriviumです。
このバンドは結構音楽性が変遷していますが、個人的にはこの頃が一番好きです。BFMVの1stや2ndとかも好きですが、なんというかこの時代のメタルの空気感が詰まっていて最高ですよね。新しい世代のメタルだという気概が感じられるというか。

ビ:まさにあの頃の「新世代メタル」感、すごく分かります。Triviumは便宜上メタルコアと形容されがちなバンドだけど、俺は、正統派メタル/スラッシュメタルの進化系だと解釈しています。

村:90年代の「メタル氷河期」や、サブジャンルの細分化を経て、新世紀に興った「メタル復権」の潮流の中で、次の世代を背負うという覚悟と、ヘヴィメタルのマインドを心に宿したバンドだなと思います。時代の流れでメタルコアを選択したんでしょうし、その影響は大いに感じますが、私もそういう解釈です。



ここまでは筆者のメタルコア/デスコア系セレクションでしたが、ここからはお待ちかね、ビトクさんの選んだメロデス/デスメタル系のアルバム紹介です!

Abuse - Like A Virgin

筆者注: ビトクさんのCDコレクション。以下、この背景の写真はビトクさんのものです。

ビ:カナダのAbuseが2011年にリリースした1stフル。ジャンルとしてはブルデス/グラインドかなと。当時とにかくリフの耳コピができなすぎて、ぶち上がった1枚。何を弾いているかは分かるけど、どうやって弾いてるかが分からなかった。今も分かりません。チューニングすら謎です。ハイハットの裏打ちのビートが登場したり、リフに整合性があったり、(この表現が適切かは不明ですが)音楽として楽しめた1枚。

村:このアルバムは聴いたことありませんでしたが、たしかに強烈なブルデスですね。「耳コピ不可能」系の激烈パートはパワーコードを単音を高速で動かしたりトレモロリフを入れたりしてるのは分かるんですが音使いがクロマチック過ぎるのと音が悪いのとで、耳コピは困難を極めますよね笑。

ビ:今作がどうかはさておき、「何を弾いているか分からない」のを狙ってやっているパターンもあるので、そういう意味ではハッとさせられるジャンルではあります。スライドのニュアンスとか、無理に「XXフレットから始める」とか決めない方が表現として適切に機能したりするし。

村:たしかに、特定のフレットを押さえずにノイジーさを出すというのも手法の1つですよね。

Avulsed - Gorespattered Suicide

ビ:スペインのゴアデスメタルバンドが2005年にリリースしたアルバム。ちなみにジャケが過激すぎて、Spotifyだと伏せ仕様になっているレベルです。一応ここでも裏ジャケにしておきました。もともと僕の中では、こうしたゴアやポルノグラインド系はどう聴いていいかよく分からなかったのですが、本作収録の「Divine Wine」を聴いて、「なんかメロデスリフみたいだぞ」ってところから徐々に馴染んでいきました。なんやかんや当時は多少手を出してみたジャンルです。とてもベタですけど、Waco Jesusとかも買ったりしましたし。

筆者注: 上でビトクさんも書いてある通り、ジャケは自主規制です笑。気になる方は自己責任でお願いします(エログロ系ですがそこまで凄惨なものではないです)。

村:一時期スラミング系ブルデスにハマっていたのもあってグロジャケ耐性はありますが、このアルバムのジャケットは何故か実写だし状況もカオスでちょっと面白い域に入ってますね笑。
Avulsedってジャケットやボーカルスタイルに反してやってることは結構オールドスクール・デスメタルなイメージがあったのですが、今回改めて聴き返すとCannibal Corpseを始めたとしたアメリカ勢と、スウェーデン勢のようなヨーロピアンデスメタルの両方の影響を受けてるんだろうなと思いました。「Divine Wine」のメロディアスな部分はまさに後者の面かなと。
ゴアメタルというとExhumedImpaledのようなCarcass影響下のバンドが思い浮かびますが、そちらも意外とメロディアスだったりします。

ビ:ビジュアル要素のエンターテイメント感も、このジャンルの魅力だよね。Avulsedには今作で出会ったわけですが、良い意味で予想を裏切られました。(見た目から)勝手にハードルを下げていた分、評価につながった作品です。

村:音楽性にはあまり関係無いところですが、AvulsedのボーカルDave Rottenが運営しているXtreem Musicにはオールドスクール・デスメタルの再発盤で個人的にもお世話になっています。Dave自身かなりのマニアで、上のアー写でFunebreのシャツ着ているのが最高です。

Callenish Circle - My Passion // Your Pain

ビ:オランダのメロデス、2003年リリースの4th。終始爆走系かと思いきや、「My Passion」みたいなメランコリックなふり幅もあり、侮れない作品です。ただ、今あらためて聴いて気づいたのですが、基本的にリフの3度ハモりがない? ような。あえてハモらなかったのか、なんなのか、不思議です。

村:このアルバムは自分も持っています!メロディックなデスラッシュが好きな人にとっては堪らない作品ですよね。たしかにリフはハモっていませんが、例えばEbony Tearsの名曲「Harvester Of Pain」のメインリフもハモりが無いので、個人的にはそれほど違和感はありません。

ビ:メロデスにのめり込んだ学生時代の自分は「3度ハモりは正義」的なバイアスがかかりすぎていて、幻聴でハモりが聴こえていたのかも笑。ちなみに同郷のDetonationも渋くて良いですね、『Emission Phase』のCDが、実家のどこかに眠ってます。

村:Detonationは聴いたことが無かったのでチェックしてみましたがカッコいいですね!オランダってオールドスクール・デスメタルと女性Voゴシックメタルのイメージが強い国でしたが、流石ヨーロッパ、層が厚いですね。

ビ:「ハモらない」という選択肢もふくめて、SBTWにおけるリフの作り込み方は、やはりヨーロッパ産メロデスから多大な影響を受けた気がします。

Godgory - Shadow's Dance

ビ:スウェーデン産メロデスバンドが199年にリリースした2ndアルバム。これを中古で発掘した頃は、Invasion Recordsのロゴがあればレーベル買いしてました。たしかその流れで買ったはず。アルバム自体が名盤かと言われると疑問符ですが、とにかく1曲目の「Abandon」。桁違いにハイクオリティな名曲で、自分的にはこの1曲=このアルバム。

村:Godgoryは渋いですね。この時代のスウェディッシュ・メロデスってあまりキーボードがいないんですが、このバンドは登場回数は多くないにせよ効果的に導入されているのが素晴らしいと思います。
スウェディッシュ・メロデス周りの「レーベル買い」といえば、No Fashion RecordsやWrong Again Records、Black Sun Recordsが著名ですが、Invasion Recordsも外せないですよね。それこそGates Of Ishtarや、The EverdawnSkymningEmbracingDefleshedも同レーベルからリリースしています(カナダですしメロデスではないですが私が先日サポートしたCryptopsyの1stもオリジナル盤はInvasion Recordsリリースです)。

ビ:ちなみにメンバーの内3人は、プログレメタルバンドWorld of Silenceにも在籍していて、同じ年に1stアルバムを出してます(良盤)。本人達はどうすみ分けていたか分からないですが、このアルバムもプログレ作品として解釈した方が良いかもしれない。7~8分尺の曲が多いし、クリーンの歌もあるので。方法論的にはDan Swanö (Edge of Sanity) に近いセンスを感じて、それが自分にグッと刺さった理由ですね。

村:たしかにクリーン・ボーカルが出てくるのも特徴ですよね。1996年リリースなので、メロデスとしてはかなり早い段階の導入だと思います。Dan Swanöからの影響はありそうですね。
World Of Silenceは聴いたことなかったのですが、リフの感じに一部似たものを感じるので(ミドルテンポだったりパワーコードの刻みだったり)、デスメタルとプログレメタルとで棲み分けをしていたものの、同じ時期に曲を作っていてGodgory側にもその影響が出たのかもしれないです。

Hate - Cain's Way

ビ:ポーランドのデスメタルバンドが2002年にリリースした3rdアルバム。学生時代に、同郷のDevilynYatteringと並んで、なぜかチェックしてました。今思えば、デスメタルを探索することで、より正確に自分の音楽観を成形していたのかなと。例えば「あぁ自分がメロデスで魅力を感じていたパートは、デスメタル由来のこういう要素なんだ!」とか。逆もしかりで、「自分的にピンと来ないのは、こういうフレージングだな」とか。こうしたデスメタルの音源が、自分の音楽観の輪郭形成に寄与したのは間違いないです。

村:ポーランド産デスメタルといえば聴くのは専らVaderDecapitatedばかりだったのですが、改めてHateを聴いてみるとやはりハイレベルですね。
一口にデスメタルと言っても多様な流派があって、「サブジャンルの中にもサブジャンルがある」というのがメタルの魅力の1つだと思うんですが、メロデスはその中でもリフや曲作りの設計思想がヘヴィメタル寄りなこともあって他のデスメタルと異なる点が多いので、聴き比べることで得られる発見は多いですよね。

ビ:その視点は面白いね。デスメタルやブラックメタルの中には、ハードコア/パンクの流れを多分に汲み取ったものもあるし、設計思想に着目して聴いてみると、また違った聴こえ方に出会えそう。

村:メタルって色んなジャンルを受け入れられるジャンルなので、そこも魅力の1つですよね。ポストブラックとか、よく思い付いたなと思います。

Morta Skuld - Surface

ビ:アメリカのデスメタルバンドによる、1997年の4thアルバム。ミドルテンポでズルズル引きずるグルーヴが特徴的な1枚です。特別名盤かと言われたら答えに困りますが、(メロデス上がりの)自分の辞書にはないフレーズやアレンジがたくさん出てくるので、興味深く聴ける作品です。デスメタルだと、それこそ村上君が影響を受けているであろうDeathの『Symbolic』とかも好きでしたけど、盤を持ってなくて。なぜかというと、学生の頃、地元の図書館に置いてあったので。有名どころのCDは置いてある率が高かったため、逆に自分では所持していない結果になってます。

村:Morta Skuldというと初期のアルバムが挙がる印象なので、このアルバムについては未聴でした。これを機に聴いてみましたが、まさしくアメリカ産デスメタルのサウンドではありつつも、初期とは異なるグルーヴ感を感じます。
私の場合、頑なにCDを買い集め続けてきているため、好きなバンドの盤はかなり揃える傾向がありますが(それこそDeathは全部揃えてます)、あまり話題に上がらないアルバムは持っていなかったりします。自分で調べて得た見識を基にCDを買うので「ジャケ買い」もしたことが無いです。

ビ:自分は中古市場を宝探し的に掘っていく購買スタイルだったので、ジャケ買いレーベル買いプロデューサー買いを多用してました。そもそもマイナーすぎて調べても情報の無い作品が多く、むしろ買って情報を得るパターンが多かったですね。ブックレットのSpecial Thanks欄を見て、バンド間のつながりを知ったり。

村:サブスク全盛の時代ですが、CDからしか得られない情報って未だにありますよね。私は未だにCD派を続けている古風な人間ですが笑、やっぱりそういうところにも魅力を感じます。

Orphanage - Inside

筆者注: ビトクさんのOrphanageコレクション。今回紹介されているアルバム『Inside』は右上です。

ビ:オランダの男女Vo擁するデス/ゴシックメタルバンドが2000年にリリースした3rd。1stから順に後追いで聴いたんですが、突如グルーヴ路線に変貌を遂げていて、衝撃が走った作品。Meshuggahの影響だとは思いますが、にしても早い段階でDjent/ブレイクダウン的方法論に到達しており、今聴いてもその先見性には驚かされます。特に「Pain」や「Kick」で聴けるバウンシーなビートとゴシックパートの融合はかなり独特で、ゴシックジャンルの未開拓領域を大きく開拓したのではと。村上君はゴシック系は聴いたりするのかな?

村:ゴシックメタルは昔から時折聴くジャンルですが、このアルバムについては今回初めて知りました。
ゴシックメタルで好きなのは、鉄板ですがParadise LostMy Dying BrideAnathemaKatatoniaSentenced辺りですね。Orphanageのように女性ボーカル入りのゴシックメタルはあまり聴かないのですが、Theatre Of Tragedyとか好きです。
2000年というと、ゴシックメタルもかなり煮詰まっていた時代というか、ゴシックメタルって大抵音楽性が変わる印象ですが、このバンドもそういう流れだったんでしょうね。Meshuggahっぽい手法を導入しているゴシックメタルというと真っ先に思い浮かぶのがKatatoniaですが、2000年時点ではまだ導入していなかったので、ビトクさんの仰る通りかなり先駆けだと思います。

ビ:昔ライブでParadise LostのTシャツ着ていた時期があるけど、コア系のシーンではほぼ誰からも突っ込まれず、悲しかった。笑。いま名前を挙げてくれたようなバンドはどれも良いね。軒並みCDも持ってます。他に鉄板でいうと、The Gatheringとかかな。少し知名度は劣りますが、ノルウェーのTrail of Tearsも好きでよく聴いてました。

村:たしか着ていたの『Draconian Times』のTシャツですよね?ビトクさんはIn FlamesWingerSavatageなど、メタルコア以外のルーツが分かるTシャツを持っているイメージがあります。私はバンTばかり持っていていつも色々着ていますが、誰かに指摘されると嬉しいですし、されないとやっぱり寂しいので気持ち分かります笑。

The Eternal - Sombre Light Of Isolation

ビ:オーストラリアのゴシックメタルが2004年にリリースした1st。Cryptal Darknessのメンバーが結成したバンドです(それも所持してます)。こういうアルバムを、部屋で1人こもって通して聴くと、とてつもないカタルシスが訪れるんですよね。長尺の音楽的描写に浸る結果、自然と現実世界から離れて、別世界に没頭できる。TikTok的スピード感に慣れてしまうと最初はキツいかもですが、「流れで聴いたときだけ訪れるカタルシス」は、長尺がデフォルトのこのジャンルならではの魅力。2曲目「A Cruel Misfortune」はキャッチーなので、初見でも馴染みやすいはず!

村:このバンドについては初めて知りました。初めの雰囲気的に陰鬱なボーカルなのかなと思いきや、憂いは帯びつつも聴きやすいボーカルだったので、たしかにこのジャンルに馴染みの無い方でも取っつきやすそうだなと感じました。
オーストラリアってフューネラルドゥームのMournful Congregationがいるくらいで、あまりゴシック系のバンドがいる印象が無かったため(やはりこれ系はヨーロッパが強い)、今回知ることができて良かったです!

ビ:このジャンルは「ダークロック」みたいな解釈で聴くと、入りやすいと思う。ダークロック~ゴシック~ドゥーム~フューネラルドゥーム~ストーナーと、ジャンル的に重なっている範囲を経由していくと、初見ジャンルでも耳を傾けやすいかなと。

Sentenced - The Funeral Album

ビ:フィンランドの帝王Sentencedが2005年に発表した、8thアルバムにして最終作。一般的には暗さや悲しみ要素を推されがちなバンドですが、僕は、このラストアルバムで時折り顔を出す、謎の前向きなエネルギーが好きです。もはや普通に(?)歌っているので、メロデスではないどころか”ロック”と表して差し支えないレベルですが、ほとばしる憂いは確実にメロデスやゴシック由来のもの。逆にロック方面からこっちへ向かうのは難しいため、Sentencedだけが登れた頂といっても過言ではないでしょう。

村:Sentencedは上でも挙げましたが、めちゃくちゃ好きなバンドで、初期から通して好きなバンドです。初期はまさにフィンデスといった空気が濃厚で、徐々にメロディアスになっていき、4th以降はボーカルが変わってメランコリックなサウンドへと変貌を遂げることになりますが、本作は意図的な最終作だったからか、前作などと比べると明るい雰囲気がありますよね。5曲目に関しては確信犯的に2nd『North From Here』を意識していると思います。

ビ:5曲目は「Sentencedの最終作」であることを考慮して入れた感じがするから、メタ的アプローチだなぁと。もちろんその趣旨も理解できるけど、最終作としてではなく「1枚のアルバム」としてこの作品を作っていたらどうなったのか、想いを馳せちゃいます(いずれにせよ大名盤になったとは思う)。

村:Sentencedは外れ無しのバンドだったので、自分もそう考えてしまいます…。

筆者注: ビトクさんのSentencedコレクション。
筆者のSentencedコレクション

Sins of Omission - The Creation

ビ:スウェーデン産メロデスの1st、1999年の作品です。特に1曲目、冒頭からクラシカル(クラシック音楽的)メロデスリフが炸裂しすぎていて、耳コピもしたくらいハマりました。最近はメロデストークも全然していないゆえ言及してもらえたことはほぼありませんが、「Rain or Shine」イントロのファストリフなどから、その影響を感じてもらえたら嬉しいです。

知的な作り込みと野性(非知性)的な叫びを、共存させられるのがメロデスの良いところであり、Sins of Omissionの魅力かなと。ちなみに今回のnoteコラボは、村上君がこの作品をレビューしていたのがきっかけで、思いつきました。あらためて好きな曲やポイントなどあればぜひ聞かせてください。

村:個人的には既にお伝えしましたが、私の記事をチェックいただきありがとうございました!(筆者注: 当該記事については下をご参照ください)

「Rain or Shine」のイントロのリフはまさしくメロデスからの影響を感じさせる必殺リフで最高です。
このアルバムはDark Tranquillityの『The Gallery』を彷彿とさせるほど凝っていると思いますし、実際に影響を受けたかどうかはともかく、時折The Black Dahlia Murderもこのバンドを聴いていたのかなと思わせられる場面もあります(Trevorは生粋のメタルマニアだったので聴いていた可能性は非常に高いです)。
秀曲揃いのアルバムですが、やはり私も1曲目がオススメですね。この曲にこのアルバムの良いところが詰まっていると言っても過言では無いです。

ビ:たしかにTrevorが聴いてそうな音像。なお今回枠としては紹介しびれたんですが、SoOと同じく緻密にハモり続けるスタイルとして、ドイツのFragments of Unbecomingが出した2nd『Skywards – A Sylphe's Ascension』の名前だけでも最後に出させてください。全曲コピーしました。知的メロデス万歳。

村:Fragments Of Unbecomingもカッコいいバンドですよね!メロデスも色々なスタイルがありますが、綿密な進行をするタイプのメロデスはやはり痺れます。
これで最後となりますが、今回はコラボいただきありがとうございました!



というわけで今回初めてビトクさんとコラボしたわけですが、いかがだったでしょうか?
これまで無かった形でビトクさんとディープなメタル・トークが出来たと思いますし、今回のコラボでビトクさんの新たな一面が垣間見えたのではないでしょうか!
メタルコアやDjent系のバンドがSailing Before The Windに与えた影響のみならず、メロデス方面からの影響も多く語っていただけて、非常に読み応えのある内容になったと思います。

さらに、メタルコア、デスコア、メロデス、デスメタルのみならず、ゴシックメタル方面にも話が広がるなど、かなり幅広い層に刺さるコラボになったのではないでしょうか?
メタル・ミュージシャン同士のこういう対談自体、なかなか見る機会が無いと思うので、そういう意味でも貴重な記事になったでしょう。

私自身、ビトクさんとメタル談義をしてみたかったので、都合上、各アルバムごとのトークは簡潔にはなりましたが、非常に楽しく対談ができました。
本当はもっとメタル談義したかったですが、それはまたの機会にお願いします!

最後に、再度ビトクさんのnoteのページと、筆者のバンドDesolate Sphereの最新EP収録曲のMVを掲載して、今回のコラボ記事を締めようと思います。

改めまして、お忙しい中コラボいただいたビトクさんには感謝の意を表したいです。
この度はありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?