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好きを仕事にするのではなく

革靴は黒と茶色のを持っている。
夏は淡い色のパンツを履くので、
靴は茶色が多くなる。

歩いていればつま先とか横っちょとかキズがつく。
百均で買ったクリームを塗ったけど、
あまり効果はなかった。

そこで靴屋にいって、どの色味のがいいか相談しながらクリームを買った。
お兄さんがいろいろ教えてくれた。

まず、茶色の靴はむずかしい、ということだ。
その靴にばっちり合う色のクリームがあるとは限らない。
できるだけ近い色のを選ぶことになるが、
元の色とは違う靴になる恐れもある。

クリームは指先にちょこっとだけとって、
うすーくうすーく伸ばしていく。
ごしごしこすらない。
薄く伸ばして、革に染み込んでいくのを待つ。
木綿の布か女性用のストッキングで、
軽く表面を磨いてあげて、
2度、3度とそれを繰り返す。

「時間があれば磨きますよ」
とそのお兄さんがいってくれたので、
磨いてもらうことにした。
わたしの靴の手入れをしながら、
そうしたことを教えてくれた。

靴が好きなんだそうだ。
この仕事をするようになって、靴が好きになったそうだ。

好きを仕事にするのではなく、
仕事が好きになったんだと。