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愛すべき説教を垂れる年寄り

『モダンエルダー』という本を読んでる。

「40代以上が『職場の賢者』を目指すこれからの働き方」
というサブタイトルで、
人生100年時代に、どうやって「老害」ではなく「尊敬される新しい年長者=モダンエルダー」として働けるか、について書いてある(ありそう)。

なるほど〜と思ったのは、ここ。

年長者がまずやらなくちゃならないことは、純粋な興味を持って若い人たちの話に耳を傾けることだと私は思う。

「私」著者のチップ・コンリーは20代でホテルを起業し、
ずっとCEOを勤めて世界第2位のホテルチェーンに育てた。
そして52歳のときにAirbnb(エアビー)に誘われて、
エアビーを本格的なグローバルカンパニーに成長させた。
このときの20歳も年が離れた経営者たちとの協働からこの本を書いた。

「進化し、学び、協力し、助言する」
ということが著者のエアビーで得た教訓で、
「これまでの年長者像ーー高い壇上から重々しくそれらしい説教を垂れる年寄りーーを踏襲していると、たいした成長は望めない」
と。

昨日、田原総一朗さんの88歳の誕生会を開いた(田原祭り)。
大隈塾で学んだ卒業生たち、それこそ20代から50代までが集まって、
田原さんの米寿を祝った。

運営メンバーで、「田原さんへの最高のプレゼントは何か?」
という問いを立てた。

答えは、「しゃべらせること」だ。
モノを差し上げるではなく、食べ物を用意するでもなく、
(ちなみに、飲食なしの誕生会だった)
気持ちよくご講話いただく。

いや〜、予想通りよくお話してくださった。
まさに、「高い壇上から重々しくそれらしい説教を垂れる」88歳だった。

だけど、60分と30分のセッションをなんなくテンション高くしゃべり倒す体力と、
過去の分厚い取材によるネタと、いまの情勢分析を組み合わせての話の構成力は
「これまでの年長者像」をはるかに超えている。

大事なのは、純粋な好奇心と敬意とをもってこの特異な年長者の話に耳を傾けることだとわたしは思った。


『モダンエルダー』 チップ・コンリー著 大熊希美、関美和訳、外村仁解説 日経BP 2022年